ストーリーの底に、普遍的な恐怖が潜んでいる

2021年6月9日 平沢 薫 RUN/ラン ★★★★★ ★★★★★

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RUN/ラン

 これは怖い。「母の愛からは逃れられない」という宣伝コピーは深くて、本作がホラー映画のタッチで描く極端な話は、実は普遍的事態の暗喩。現実でも、母自身が正しいと信じ込んでいる愛が、子供の視点から見ると歪んでいるという状況はよくあることなのではないか。そして、子供はそこから逃れるために、母は逃がさないために、双方がそしらぬ顔をしながら水面下で知恵と力の限りを尽くし合うという事態もまたしかり。本作の母子も死闘を繰り広げて一つの決着を見るのだが、さらに、それでもなお、という逃れようのなさまでをも描くのが本作の恐ろしいところ。勝者も敗者もその真の状況を自覚していないかのように見えて、さらに怖い。

平沢 薫

平沢 薫

略歴:映画ライター。視覚に訴えかけるビジュアルの派手な映画がお気に入り。「SCREEN」「SCREEN ONLINE」「日経エンタテインメント!」「キネマ旬報」「SFマガジン」「映画.com」「Movie Walker」等で執筆。他に「キングスマン:ゴールデン・サークル」ノベライズ、「グレートウォール」ノベライズ、「X-ファイル 2016」ノベライズ、「フランケンウィーニー」ノベライズ、「「ターミネーター:新起動/ジェニシス ビジュアルガイド」翻訳など。ウェブで映画やTVドラマのニュースを追いかけ中

近況:ドラマ「ロキ」のクリエイター、マイケル・ウォルドロンが2019年から製作に参加したSFコメディ・アニメシリーズ「リック・アンド・モーティ」を再視聴。思えば、これも「ロキ」同様、最初から多元宇宙モノだった。1話22分程度の短さも気軽で、見始めるとついつい何話か見てしまう今日この頃。

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