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グリード ファストファッション帝国の真実 (2019):映画短評

グリード ファストファッション帝国の真実 (2019)

2021年6月18日公開 104分

グリード ファストファッション帝国の真実
(C) 2019 COLUMBIA PICTURES INDUSTRIES, INC. AND CHANNEL FOUR TELEVISION CORPORATION

ライター7人の平均評価: ★★★★★ ★★★★★ 3.4

轟 夕起夫

こういう人、日本にもいそうですよね?

轟 夕起夫 評価: ★★★★★ ★★★★★

グローバル資本主義流の“帝国”を築き上げた男の半生に迫る「戯画」である。学生時代から、いかさまトランプを得意とし、つまりその正体は巧妙な詐欺師。ギリ合法的だが限りなくアウトに近い。誕生パーティを彩るのは、特注のコロッセオ(古代ローマの円形競技場)なのだけれども、ベニヤか合板で安く作られているのがこの男らしい。

要はから騒ぎ、ひたすら空虚な宴で、そこに男の「現在までの足跡」が織り込まれ、“コロス”たる女性スタッフとお抱え伝記作家が交わす「私は奴隷よ」「でも奴隷は反抗できる」という会話が苦く舌先に残る。が、主演スティーヴ・クーガンとウィンターボトム監督のコンビ作としてはいささか“毒”が薄味か。

この短評にはネタバレを含んでいます
なかざわひでゆき

グローバル資本主義の実態を暴く痛烈な風刺コメディ

なかざわひでゆき 評価: ★★★★★ ★★★★★

 ギリシャのミコノス島に古代ローマの円形競技場を再現し、世界中から有名人を集めてド派手なパーティを企画する大富豪マクリディ卿。現代の暴君ネロとも呼ぶべき彼の愛憎と虚飾に満ちた家族ドラマを軸としつつ、ただでさえ安い移民や途上国の労働力をさらに安く買い叩き、姑息な資産収奪や脱税を繰り返すことで莫大な利益を独占してきたファストファッション帝国の内幕を暴く。いろいろ詰め込み過ぎて焦点がぼやけた感は否めないものの、ウィンターボトム監督のブラックな風刺精神は強烈。苦労人を自称して爵位を金で買った大富豪が、ハリボテの円形競技場で仮面家族と我が世の春を祝う。グローバル資本主義の実態を象徴するような光景だ。

この短評にはネタバレを含んでいます
森 直人

強欲と毒舌の果てへと猛進するブラックコメディ

森 直人 評価: ★★★★★ ★★★★★

SDGsやエシカル消費からのファストファッション風刺がメインになるかと思いきや、もっとフレームは大きかった。『グリード』といえばシュトロハイムを連想するが、基本的にはフェリーニ『甘い生活』の系譜。セレブカルチャーも含めた資本主義の退廃を描く。ウィンターボトムには西欧優位批判の目線がずっとあるから、これは納得&必然の内容だろう。

OPに流れるファットボーイスリム「PRAISE YOU」から、エーゲ海を臨むパーティーピープル模様に、30年に及ぶ成り上がり人生の回想がパワフルに絡んでいく。監督とは7度目のタッグとなる(そのうち3作は『グルメトリップ』シリーズ)スティーヴ・クーガンの芸も高速回転!

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山縣みどり

やはり「貪欲<グリード>は善」なのでしょうか?

山縣みどり 評価: ★★★★★ ★★★★★

トップショップの創設者をモデルに成金の実態と格差社会の不平等を暴き出すブラックコメディで、考えさせられる要素が詰まっている。底の浅いファッション王リチャードの言動が破天荒すぎて、怒りを忘れるほどで、S・クーガンのキャラ作り大成功! セレブの実名を出して観客の興味を引く一方で、富裕層による詐欺まがいの蓄財システムや発展途上国における労働搾取もきちんと暴いた社会派の側面は、さすがM・ウィンターボトム監督。資本主義の歪みを抑えつつも、王国の継承の皮肉なこと!? とはいえ、ゴードン・ゲッコーに倣って「貪欲は善」を実践する人が勝つこの世の中、どうにかならないのかしら?

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くれい響

ウィンターボトム監督が毒づきまくる

くれい響 評価: ★★★★★ ★★★★★

マイケル・ウィンターボトム監督×スティーヴ・クーガン主演コンビが、実在の人物の栄光と衰退を描くというだけに、まさに“ファッション業界版『24アワー・パーティ・ピープル』”。いかにアジアの女性労働者を搾取しているか、という事実を明らかにしたラストなど、軽妙な語り口はなかなかだが、ブラックコメディとして観るなら、存命しているモデルとなったフィリップ・グリーンについて、ある程度の予備知識を入れておいた方がいい。あえて、過去と現在が交錯する複雑な構成にしたことは疑問に感じるものの、『LORO 欲望のイタリア』にも似た贅を極めた狂乱の還暦パーティはカメオ出演もあってか、妙に高まる。

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平沢 薫

ウィンターボトム監督が社会問題をブラック・コメディに

平沢 薫 評価: ★★★★★ ★★★★★

 かつて『ウェルカム・トゥ・サラエボ』『イン・ディス・ワールド』など、現代社会が抱える問題をストレートな表現で描く映画を撮ったウィンターボトム監督が、社会問題をあえてノリの軽いブラック・コメディの形で描いたのが本作。ストーリーは、グリード=貪欲さによって突き進む主人公の立身出世伝にもなっていて、ピカレスク・ロマンの趣もあり。監督と『呼んでいる』シリーズでも組んでいるスティーヴ・クーガンは、同監督の『Mr.スキャンダル』同様、こういうイヤな奴の役がお似合い。専門のカメラマンではなく取材ライターが撮影しているという設定で、たまたま撮ったような短い場面で構成された映像が、テンポも触感もリアルだ。

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斉藤 博昭

華やかな世界の裏をリラックスして観てたら、猛毒が潜んでた?

斉藤 博昭 評価: ★★★★★ ★★★★★

「全裸監督」の村西とおるもダブるように、とにかく強引、ひらめきで周囲を困らせ、業界を革新する。そんな主人公のオレ様ぶりを一見、痛快に見せつつ、辛辣に、そして鮮やかに社会性を盛り込むのは、この監督ならでは。大いに楽しませ、最後に毒が効いてくる感覚、狙っても簡単に出せるものではない。達人芸の映画だ。
会話の妙やリゾートでの食事シーンの演出は、主演のクーガンと組み、イタリアやスペインのグルメ旅を描いた監督の人気シリーズと激似で、全体はリラックスムード。ここも観客を引き込む要因か。
ファッション界のディープネタ、豪華スターの特別出演、笑えるそっくりさん、ギリシャ神話引用など、細部までサービス精神旺盛。

この短評にはネタバレを含んでいます
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