映像表現の毛細血管が若く、物語の肺活量が多い

“タイム感”が正反対の男女ふたりを主人公にした、探し物ならぬ「失くし物」の映画。チェン・ユーシュン監督は『祝宴!シェフ』(13)で幼い時分から親しんできた習わし、都市化によって失われつつある辦桌(バンド)=「屋外での宴会スタイル」に愛惜の念を表明したが、ここでは消えた「1日」を探す旅を通して、ゲスい世の中がいつしか消し去ってしまったものを問いかけてくる。
いつもながら想像の斜め上……いや、“異次元の趣向”でもって突飛な奇想をヴィジュアル化。作為に満ち溢れているのに、ひとつひとつの映像表現の毛細血管が若く、しかも物語の肺活量が多い。細部まで手を尽くしたチェン・ユーシュンの「構築美」すら感じる。