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ももいろそらを (2012):映画短評

ももいろそらを (2012)

2013年1月12日公開 113分

ももいろそらを
(C) 2012 michaelgion All Rights Reserved.

ライター2人の平均評価: ★★★★★ ★★★★★ 5

轟 夕起夫

このヒロイン像は、日本映画史上の一種の発明だ!

轟 夕起夫 評価: ★★★★★ ★★★★★

一時、役者業を離れていたが現在は「イチナナライバー」としても人気、池田愛の10年前の(モノクロ仕様だった)初主演作がカラーに。これを観ると、「彼女の主演作が続けてつくられなかった」ことが惜しくなる。が! その悔やまれる損失を埋めるかのようについに機が熟し、映画が色めいたのだ。

それはまた、寡作だが絶対に真似のできないスタイルを持つ、小林啓一監督の“かけがえのなさ”を改めて知らしめるだろう。冒頭、「2035年の日記」からの振り返り、という設定をなくして純粋に「色褪せない今」を体感させようと、映画自体が発色を始める。無鉄砲すぎるが愛すべきニューヒロインの、心のゆらめき(&刹那なきらめき)と共に。

この短評にはネタバレを含んでいます
森 直人

作家性の原型が「そのまま」の色がついた世界で鮮やかに輝く

森 直人 評価: ★★★★★ ★★★★★

2021年、カラー版登場。『ぼんとリンちゃん』『殺さない彼と死なない彼女』等の傑作を放つ小林啓一監督のデビュー作が、10年経ってモノクロームという抽象のベールを剥がした。寅さん口調の異端の16歳・川島いづみは感受性が強く、上から斜め目線で世相を斬り、頭でっかちで青臭い。そんな彼女が現実社会のリアルに揉まれ、一筋縄ではいかない世界の複雑さや深さに体験的に出会う。

日常生活の冒険に際して、いづみは「他者」が不意に見せる意外さに驚き、衝突と融和を繰り返す。その連鎖の中で思考を転がす――つまりヒロインの自問自答がそのままドラマになる。世界発見の過程が刻まれた「初めての映画」は、今も圧倒的に瑞々しい。

この短評にはネタバレを含んでいます
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