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名もなき歌 (2019):映画短評

名もなき歌 (2019)

2021年7月31日公開 97分

名もなき歌
(C) Luxbox-Cancion Sin Nombre

ライター2人の平均評価: ★★★★★ ★★★★★ 3.5

なかざわひでゆき

格差が無秩序を生み、差別が弱者の口を塞ぐ

なかざわひでゆき 評価: ★★★★★ ★★★★★

 経済政策の失敗によって国民が困窮し、連日のようにテロ事件や暗殺事件が横行した1988年の南米ペルー。貧しい先住民の妊婦ヘオルヒナは、無料で診てくれるという産院で出産したところ、赤子は奪われ医師・看護師も忽然と姿を消す。身分証を持たない先住民ゆえ警察でも裁判所でも門前払いを受けた彼女は、最後の手段として新聞社へ訴え出ることに。正義感に駆られた記者が動き出すものの、真相へと迫る彼もまた同性愛者という「弱点」を抱えていた。格差と貧困が社会の無秩序を生み出し、差別と偏見が犠牲となる弱者の口を塞ぐ。ドキュメンタリータッチの淡々とした語り口ゆえ、なおのことズッシリと重みのある作品に仕上がっている。

この短評にはネタバレを含んでいます
平沢 薫

ストーリーの背後で、映像が不思議な叙情性を漂わせる

平沢 薫 評価: ★★★★★ ★★★★★

 1988年のペルー、乳幼児売買犯罪の被害者になる貧しい先住民の女性と、この事件を追ったために圧力をかけられる新聞記者を描く物語がさまざまな社会問題を浮かび上がらせるのだが、それだけではなく、それを描く映像が不思議な叙情性を湛えているところがこの映画の魅力なのではないか。
 監督が、あえてモノクロ、スタンダードで四辺がぼやける映像を選択しているのも、映像自体にストーリーとは別の物語を語らせようとしているからだろう。先住民たちによる伝統的な祭の光景。女性が見る海の上を動いていく霧。赤ん坊を探す女性と夫が行き場を失うと、2人の姿は輪郭のない影になり、彷徨する亡霊のように見える。

この短評にはネタバレを含んでいます
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