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復讐者たち (2020):映画短評

復讐者たち (2020)

2021年7月23日公開 110分

復讐者たち
(C) 2020 Getaway Pictures GmbH & Jooyaa Film GmbH, UCM United Channels Movies, Phiphen Pictures, cine plus, Bayerischer Rundfunk, Sky, ARTE

ライター3人の平均評価: ★★★★★ ★★★★★ 4

なかざわひでゆき

ホロコーストに加担した一般市民たちの罪

なかざわひでゆき 評価: ★★★★★ ★★★★★

 第二次世界大戦終結直後のドイツ。愛する家族を殺されたホロコースト生存者のユダヤ人グループが復讐に燃え、一般市民をターゲットにした大量殺戮を計画した…という史実の映画化。自らも妻子を失った主人公は、グループの凶行を阻止すべく潜入するも、やがて彼らの怒りと悲しみに共感する。浮き彫りにされるのは、ユダヤ人の子供が殺されているのを知りながら、自分の子供に絵本を読み聞かせていた人々の存在。つまり、直接的・間接的を問わずユダヤ人迫害に加担した「善良」なドイツ市民たちの罪である。しかし、だからといって暴力は正当化できない。決して忘れてはいけないし、許す必要だってないが、しかし同じ罪を犯してもいけない。

この短評にはネタバレを含んでいます
相馬 学

ナチスは消えても差別は消えず

相馬 学 評価: ★★★★★ ★★★★★

 “あなたの家族が殺されたなら、どうするか?”――ナチスのホロコーストを題材にした本作は、そんな問いかけで始まる。とはいえ、ユダヤ人の悲劇性以上のものに言及するのが独特。

 ユダヤ人の主人公は妻子を殺された復讐として、ナチスの残党を狩る活動に参加。“終戦でユダヤ人が安泰になったと思うな”という一般人にも、彼の怒りは向けられる。ナチスが消えても差別は変わらずそこにあるのだ。

 ある意味、主人公はナチスに……というより、差別意識に家族を殺された。そして、これは現代でも起こっていることだ。シンプルな問いかけから始まった物語は凄まじい怒りや暴力の連鎖という要素を交えつつ、重みを増す。見応えアリ。

この短評にはネタバレを含んでいます
山縣みどり

パルチザン版“イングロリアス・バスターズ”

山縣みどり 評価: ★★★★★ ★★★★★

ホロコーストを生き延びたユダヤ人が立てた復讐計画を軸にした戦後ドラマで、知られざる史実がドラマティックに描かれる。同胞の命を奪ったドイツ人殺害を目指すユダヤ人組織ナカムは一見、『イングロリアス・バスターズ』。しかし怒りに燃えているのに、リーダーのアッバからして鬼気迫るというよりも悲壮感たっぷり。復讐は復讐しか生まないし、虚しさが残ると達観している風情だ。イスラエル建国を目指すハガナーとしてナカムに潜入する主人公マックスが逆に計画に夢中になる姿と対照的で、愛する家族を理由なく殺害された人間は憎悪をいかに発散すべきか考えてしまう。世界的にきな臭さが漂う現在、戦争の悲惨さを知るためにも見てほしい。

この短評にはネタバレを含んでいます
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