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不思議の岩井俊二ワールド聖地巡礼

第29回東京国際映画祭

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岩井俊二

今年のTIFFは、アジア映画がめじろ押し! その中で「Japan Now監督特集」で特集が組まれる岩井俊二監督をフィーチャー。日本で撮ったのにどう見ても外国にしか見えない『スワロウテイル』、花火大会に灯台、プールなど田舎の夏を切り取った青春映画の金字塔『打ち上げ花火、下から見るか? 横から見るか?』、雪景色と美少女に魅せられるラブストーリー『Love Letter』など、岩井監督の“聖地”となった日本の風景をプレイバック!(取材・文:イソガイマサト)

『打ち上げ花火、下から見るか? 横から見るか?』(1993)

打ち上げ花火、下から見るか? 横から見るか?
(C)1996 ROCKWELL EYES INC.

ロケ地:千葉県飯岡町

撮りたかった風景:見慣れているようでどこか新しい田舎の風景

ロケ地は千葉県の銚子の近くの飯岡町という港町で。灯台があって、実際に花火大会が行われる予定があったのもよかったんですけど、その見慣れた田舎の景色が新しく見えるようにしたかった。それはあのときだけではなく、自分が常に目指していることのような気がします。ちょっとしたアイデアで新しい感じに見えないか? ユニークなことができないか? ということをきっと常に狙っているんでしょうね。

こう撮った:田んぼを背景にシティボーイっぽい少年を登場させた

あの当時のシティボーイっぽい格好の少年(山崎裕太)と少女(奥菜恵)を、ビニールハウスや畑のある田舎の風景をバックに撮るというのが、一つのテーマでした。だぶだぶのパンツを履かせたりして(笑)、見慣れた景色が新しく見えるようにしたかったんです。数年後に同じキャストが再び飯岡町を訪ねるドキュメンタリー『少年たちは花火を横から見たかった』(1999)も撮りましたが、ロケ地というのは一度そこで撮影すると自分の中の聖地になるんです。そこに幼少期からの記憶も重なり、改めて行くと故郷に帰ったような不思議な感覚になる。そういう意味で、映画は記憶やイメージを再構築する芸術と言えるかもしれません。

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『Love Letter』(1995)

Love Letter
(C)フジテレビジョン

ロケ地:小樽

撮りたかった風景:モダン過ぎない雪国

北海道は僕にとって特別な場所なんです。自分のルーツがあるんじゃないか? 前世の自分はここに住んでいたんじゃないか? と思うぐらい、子供のころから北海道ものには弱くて、常に魅了されてしまいます。景色がきれいだからとか、そういうことではなく、記憶が呼び覚まされる感覚に近いんですよね。中でも小樽は古風で、ちょっと洋風で、色味も落ち着いているし、坂と海がある。函館ほどモダン過ぎない、僕が求めるみずみずしい風景に彩られた大好きな場所だったんです。

こう撮った:日本離れした気候を最大限に利用

この作品は神戸と小樽が舞台になっていますが、実際には神戸では撮影していなくて。予算的に厳しかったし、似た地形だから一緒に撮れないか? ということで、神戸のシーンも小樽で撮ったんですけど、海から山に至る急傾斜特有の少し日本離れした気候だから、こっちには雲があるのに、反対側では陽が差しているような空模様になることがよくあるし、光がすごくきれいで、撮影にはうってつけなんです。しかも、映画に出てくる雪は8割が本物なんですけど、役者さんが現地に入ったときにタイミングよく降って、その前後は降らないちょっと異常な現象が毎日のように起こって(笑)。雪が残らないから翌日には夏のシーンを撮ったりしていたんですけど、あれは不思議な経験でした。

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『スワロウテイル』(1996)

スワロウテイル
(C)1996 SWALLOWTAIL PRODUCTION COMMITTEE

ロケ地:神奈川県新子安ほか

撮りたかった風景:アジアの架空都市

この作品では、アジアの架空の街「円都(イェンタウン)」を作りたかったんです。だから最初は海外で撮る予定で、実際に現地でロケハンも進めていました。ところが直前になって、美術監督の種田陽平さんから「このままだと現場が破綻する」って言われて。それはつまり、日本人のスタッフと現地のスタッフとのコミュニケーションをとる機能を確立できないということだったんですけど、そこで種田さんから「都内で撮ろう」と持ちかけられたんです。最初は「何言ってるの? 不可能だよ。そのために中国まで来ているんじゃない?」って思いましたよ。でも、種田さんが「いや、やれる」と言い切るので、都内周辺で「円都」を作る方向に切り替えたんです。

こう撮った:オープンセットで構築

横浜の隣にある新子安あたりには、アジアっぽい風景がまだ残っています。川が流れていて、そこにボートが浮き、川辺に家屋が立ち並んでいるその景色は、ちょっとアジアっぽい。だから、アゲハ(伊藤歩)が同郷の人々と別れる冒頭のシーンはここで撮ったんですけど、逆に新子安のほかにはアジアを感じさせる街はどこにもなかったので、街や通りなど全てオープンセットで作りました。海外での撮影は演出とは別のスキルが必要で、当時はあれが精一杯だったし、今だったら東京で撮る選択肢もないような気がします。

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『リップヴァンウィンクルの花嫁』(2016)

リップヴァンウィンクルの花嫁
(C)RVW フィルムパートナーズ

ロケ地:世田谷、蒲田、川崎、鎌倉ほか

撮りたかった風景:お金持ちの女性が暮らす家

この映画は世田谷から蒲田、川崎へと流れる前半と、真白(Cocco)の屋敷で展開する後半とに分かれますが、真白屋敷を探すのが一番大変でした。金持ちの女性の住居って普通は高級マンションとかになると思うんですけど、それだと画(え)的に面白くない。真白は成金じゃないですしね。そこで思いついたのが、映画も撮れるような大きなスタジオに住んでいるという設定でした。実際に奇抜で面白い物件も見つかって、一度はその方向性で撮るつもりでもいたんです。でも、その後に鎌倉のレストランが貸してくれることになったので、映画では「元レストランの撮影スタジオ」という設定で使わせてもらいました。

こう撮った:森の中のレストランを豪邸に見せる

小説版には真白屋敷が鎌倉にあるという記述があるんですが、映画では特に説明がないので、観た人は田園調布あたりかな? って想像するかなと。でも、実際の田園調布には、あんなふうに行けども行けども森みたいな広大な土地はないんですよね。撮影に使わせてもらったレストランは、観る人が想像力を膨らませやすい森の中の立地もちょうどよかったし、物語に必要な部屋数もそろっていた。しかも、僕が望んでいた天井の高い、とても大きな空間だったので、かなり面白い撮影ができました。撮影の後、現状復帰をするのが大変でしたけどね(笑)。

映画制作の全ての過程で並々ならぬこだわりを持つ岩井俊二監督は、ロケ地選びにもやはり独自の考えを持っている。最後に「思わず撮りたくなる風景は?」と聞くと、「役者に演技をしてもらったときに染みてくる場所があるんです」という思いがけない答えが。「それは自然と街が共存していたり、何かが宿っている場所。僕の『四月物語』(1998)は武蔵野がキーワードですが、小説『武蔵野』の原作者・国木田独歩によれば、武蔵野はノスタルジーが宿っている場所のようで。僕は人の記憶をくすぐる、そういう場所を常に探しているような気がします」

岩井俊二の美少女名鑑はコチラ

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【Japan Now監督特集 岩井俊二 上映スケジュール】

『打ち上げ花火、下から見るか? 横から見るか?』
10月28日(金)12:00~ 会場:六本木ヒルズアリーナ※入場無料

『Love Letter』
10月28日(金)16:00~ 会場:TOHOシネマズ 六本木ヒルズ SCREEN7
トークショー登壇ゲスト(予定):岩井俊二(監督/脚本)、中山美穂(女優)

『スワロウテイル』
10月28日(金)20:00~ 会場:TOHOシネマズ 六本木ヒルズ SCREEN7

『ヴァンパイア』
10月29日(土)12:00~ 会場:TOHOシネマズ 六本木ヒルズ SCREEN7
Q&A登壇ゲスト(予定):Q&A:岩井俊二(監督)

『リップヴァンウィンクルの花嫁』
10月29日(土)16:00~ 会場:TOHOシネマズ 六本木ヒルズ SCREEN7
Q&A登壇ゲスト(予定):岩井俊二(監督)

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