轟 夕起夫

轟 夕起夫

略歴: 文筆稼業。1963年東京都生まれ。「キネマ旬報」「映画秘宝」「クイック・ジャパン」「DVD&ブルーレイでーた」「QJweb」などで執筆中。近著(編著・執筆協力)に、『伝説の映画美術監督たち×種田陽平』(スペースシャワーブックス)、『寅さん語録』(ぴあ)、『冒険監督』(ぱる出版)など。

近況: またもやボチボチと。よろしくお願いいたします。

サイト: https://todorokiyukio.net

轟 夕起夫 さんの映画短評

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  • 17歳の瞳に映る世界
    観終えたあとも、いつまでもリフレインされる
    ★★★★★

    主人公は高校の文化祭のステージで、(「Tell Him」で有名な)The Excitersの「He's Got the Power」(63)をギター1本で歌う。明るくアップテンポなこの曲を彼女は、(中島みゆきのようにメランコリックに)自己アレンジして。と、そこに「男子」生徒からのヤジが──人物の個性と映画全体の輪郭が、見事に提示される冒頭数分。

    監督のエリザ・ヒットマンはロベール・ブレッソンの傑作『抵抗』(56)を参照したそうだが、なるほど、印象的な様々な“手の表情”が心に刻まれる(ある場面での握り合う手!)。原題の、素っ気ない官僚的な言葉の深さが観終えたあとも、いつまでもリフレインされる。

  • 夏への扉 −キミのいる未来へ−
    妄想含めて、作家論的にこう解釈してみました
    ★★★★

    大林宣彦フォロワーを公言している三木孝浩監督。『陽だまりの彼女』(13)はどこか、大林の『麗猫伝説』(83)の変奏に見えた。その脚本を手がけた菅野友恵とのコンビで再び「猫ムービー」、それもタイムトラベル小説の古典に挑んだ本作は、その流れで言えば時間が跳躍する『あした』(95)の三木版の趣も(田口トモロヲも出演しているし)。

    山?賢人はしっかりと“主役”の柄で、原作の危うさをアップデイトする清原果耶は盤石、そしてオリジナルキャラ、藤木直人のヒューマノイドが映画に楽しさもたらす。LiSAの「サプライズ」は、挿入歌=ミスチルの「CROSS ROAD」へのアンサーソングなのだと思う(曲調も歌詞も)。

  • ももいろそらを
    このヒロイン像は、日本映画史上の一種の発明だ!
    ★★★★★

    一時、役者業を離れていたが現在は「イチナナライバー」としても人気、池田愛の10年前の(モノクロ仕様だった)初主演作がカラーに。これを観ると、「彼女の主演作が続けてつくられなかった」ことが惜しくなる。が! その悔やまれる損失を埋めるかのようについに機が熟し、映画が色めいたのだ。

    それはまた、寡作だが絶対に真似のできないスタイルを持つ、小林啓一監督の“かけがえのなさ”を改めて知らしめるだろう。冒頭、「2035年の日記」からの振り返り、という設定をなくして純粋に「色褪せない今」を体感させようと、映画自体が発色を始める。無鉄砲すぎるが愛すべきニューヒロインの、心のゆらめき(&刹那なきらめき)と共に。

  • 1秒先の彼女
    映像表現の毛細血管が若く、物語の肺活量が多い
    ★★★★★

    “タイム感”が正反対の男女ふたりを主人公にした、探し物ならぬ「失くし物」の映画。チェン・ユーシュン監督は『祝宴!シェフ』(13)で幼い時分から親しんできた習わし、都市化によって失われつつある辦桌(バンド)=「屋外での宴会スタイル」に愛惜の念を表明したが、ここでは消えた「1日」を探す旅を通して、ゲスい世の中がいつしか消し去ってしまったものを問いかけてくる。

    いつもながら想像の斜め上……いや、“異次元の趣向”でもって突飛な奇想をヴィジュアル化。作為に満ち溢れているのに、ひとつひとつの映像表現の毛細血管が若く、しかも物語の肺活量が多い。細部まで手を尽くしたチェン・ユーシュンの「構築美」すら感じる。

  • アメリカン・ユートピア
    デイヴィッド・バーンとスパイク・リーの「ええじゃないか」運動
    ★★★★★

    デイヴィッド・バーンが11人の多種多様なパフォーマーたちとグレーのスーツを纏って、裸足のまま歌い、演奏し、踊る『アメリカン・ユートピア』は批評的視座に立った、「making senseのやり直し」なのかもしれぬ。「意味付けなんかやめろ」とは言えない状況になってしまったのだ。

    映画に限らずその作品が「いつ生まれたのか」はとても重要なことである。むろん本作はトランプ政権下に発表された。縦横無尽に動き回り、ラストを飾る「Road To Nowhere」ではステージからも解き放たれ、デモンストレーションのマーチ(行進)となってゆく。バーンと監督スパイク・リーの「ええじゃないか」運動の何と粋なことか。

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