隣人X -疑惑の彼女- (2023):映画短評
隣人X -疑惑の彼女- (2023)ライター2人の平均評価: 4
日本社会に蔓延する無自覚な差別や偏見を炙り出す
紛争のため故郷の惑星Xから地球へ逃れてきた難民を、各国が受け入れることになった世界。人間そっくりの姿をした惑星難民Xが、この日本にも住んでいるらしい。いったい誰がXなのか?彼らは危険な存在じゃないのか?国民の間に漠然とした不安や恐怖や好奇心が広まる中、特ダネを狙う下っ端の週刊誌記者が、他人との関わりを避けて生きる孤独な女性を一方的に「Xではないか」と怪しんで正体を暴こうとする。非現実的な物語に現実を投影した社会風刺型SFミステリー。例えばXをトランスジェンダーや在日朝鮮人やクルド人などに置き換えても成立しそうな話で、昨今の日本社会に蔓延する無自覚な差別や偏見の正体を炙り出す。今見るべき佳作。
偏見とヘイトの世に投げかけられたメッセージ
異星からの難民Xが社会に潜んでいるという設定。物語はミステリアスではあるが、見進めていくうちに、それはどうでもよくなる。
Xは人間に擬態して暮らしているので、誰がXなのかわからない。X自身でさえ、自分を人間と思い込むこともある。そんなXに対して向けられる偏見やヘイトを、台湾人留学生という日本で差別されるキャラを置くことで重層的に表現。これは巧い。
政治家に外国人差別をあおられ、メディアがその尻に乗っかり、パンデミックや戦争でさらにそれが加速してしまった日本の現状にもリンクする。日本人は“心”で他人と向き合っているのだろうか? そんなことを考えさせる、愛すべき愛すべきファンタジー。