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人気ゲーム「ウォークラフト」実写化!『ジュラシック・ワールド』レジェンダリー×ダンカン・ジョーンズの挑戦

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ダンカン・ジョーンズ監督
デヴィッド・ボウイさんの息子としても知られるダンカン・ジョーンズ監督

 昨年11月、ロサンゼルスの郊外、アナハイムのコンベンションセンターで、大手ゲーム会社ブリザード・エンターテインメントの祭典「ブリズコン」が開催された。例年通りチケットは瞬時に完売し、約2万6,000人のゲーマーたちが参加。熱狂的なファンで埋め尽くされたメイン会場のパネルでは、今年6月に全米公開が予定されている話題作『ウォークラフト』の予告編が初披露された。予告編では、ゲーム同様“ヒューマン”と“オーク”の戦いを軸にしながらも、全く相容れない二つの種族が「生き残るために手を組むことになるのか?」といった興味深いストーリーが明かされ、ファンから喝采を浴びた。

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 「ウォークラフト」は、世界で最もプレイされているMMORPG(大規模多人数同時参加型オンラインRPG)としてギネスブックにも登録された「ワールド・オブ・ウォークラフト」を含むブリザードのゲームシリーズ。本作は、最新のモーション・キャプチャー・テクノロジーを駆使してその人気ゲームを実写化した壮大なファンタジー超大作だ。

 『GODZILLA ゴジラ』『ジュラシック・ワールド』など大ヒット作を次々と発表するハリウッドで今最も勢いのある製作会社レジェンダリー・ピクチャーズとブリザードが共同製作し、また、先日亡くなった世界的ロックスター、デヴィッド・ボウイさんの息子にして、『月に囚われた男』『ミッション:8ミニッツ』などで知られる鬼才ダンカン・ジョーンズ監督がメガホンを取った。ブリズコンの会場で3年にわたって手掛けてきた新作の映像を初披露し、やや興奮気味のジョーンズ監督が取材に応じ、新作にかける思いを語った。(取材・文:細谷佳史)

“ヒューマン”と“オーク” 二つの種族の視点で語る物語

『ウォークラフト』

 ゲームではプレイする前に“ヒューマン”側か“オーク”側かなど種族を選択することになるが、ジョーンズ監督は、映画ではヒューマンとオークの両方の視点で物語を語ることにこだわったという。

ジョーンズ監督「ブリザードは、ウォークラフト・ユニバースのゲームを20年間も手掛けてきた。だからそこには20年間作り上げてきたストーリーがあり、彼らは(映画化する上で)どれが適切なストーリーかを見つけようとしていた。でもその作業はなかなかうまくいかなかった。それで幸運にも、僕のところにこの作品を映画化する上でのアイデアを提案するチャンスが回ってきた。このゲームは、どちらの種族を選んでもヒーローになれる設定になっているんだ。それで僕は『なぜ人間が善人で、モンスターが悪者じゃないといけないの?』と言ったんだ。それが僕の提案の核心だった。“ヒューマンとオークのどちらサイドにもヒーローを登場させる必要がある”というのがね」

『ウォークラフト』

 住んでいた場所を失い、ヒューマンの土地に足を踏み入れることを余儀なくされたオークと、自分たちの土地を守ろうとするヒューマンの対立は、今世界的な問題となっているシリア難民に通じる時代性が感じられる。しかしそういった世の中の動きは、ジョーンズ監督にとって全く予想外のことだった。

ジョーンズ監督「戦争では、誰もが自分が正しい側にいると信じている。そして、しばしばその両方が正しいんだ。僕らは特に政治的な映画を作っているわけじゃない。それは確かだ(笑)。でもそこには『誰もが家を持つ権利を持っている』という普遍的なアイデアがあって、僕らはそのアイデアを大事にした。そういった思いはどんな年齢の人にも通じるからね。この作品で今の世界を描こうとしたわけじゃないが、そこにはユニバーサルな考えと価値観があるんだ」

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ゲームの世界を実写化するという挑戦

『ウォークラフト』

 ゲームの映画化には失敗例も多く、そのプロセスは決して容易ではない。ジョーンズ監督にとって、独特な「ウォークラフト」の世界観を実写に移し替えることは、予想通り大きな挑戦となった。

ジョーンズ監督「ゲームの鮮やかな色彩や、キャラクターが体に合わない大きなサイズの鎧を着ているとか、シンメトリーのデザインといったスタイルを、僕らはできるだけ映画に取り入れた。プロジェクトの初めから終わりまで、ブリザートととても密接に仕事をしながら、彼らが手掛けたスピリットをできる限り維持しながら、実写版を作り上げていった。特にウェイ・ワンという、デユロタンや他のオークたちのデザインを手がけたアーティストがそういったことを可能にしたといえる。オークのビジュアルを観客にとって信ぴょう性があるものにしながら、同時に恐れと同情を抱けるものにするのは大きな挑戦だった」

ゲーマーでなくても楽しめる作品に

『ウォークラフト』

 もう一つの大きなチャレンジは、ゲームのファンを裏切らず、いかに一般の観客が楽しめる作品にするかといった点だったのは言うまでもない。自らをゲーマーと称し「ウォークラフト」を長年プレイしてきたジョーンズ監督は、ゲームを知らない人たちにこのゲームの楽しさを伝えることが自分の役目だと感じていたようだ。

ジョーンズ監督「これはブリザードにとっての赤ちゃんで、僕はそれを奪って、全くゲームと違う作品にするつもりはなかった。この作品を作る機会を得たということは、ファンが誰かにこの作品を見せて『だから僕はウォークラフトやこの世界が好きなんだ』と胸を張れる作品を作ることであり、また、ゲームについて何も知らない人たちへの翻訳者となることだった。このゲームに対するファンたちの愛情を、何も知らない人たちに翻訳して教えてあげることだったんだ」

『ウォークラフト』

 そしてジョーンズ監督は、この作品を楽しむのにゲーマーである必要も、ゲームをプレイする必要もないことを付け加えた。

ジョーンズ監督「僕がこの作品をやりたかった理由、そして僕がこの作品でやれるのを期待していたことは、とても人間的なストーリーを語ることだった。オーク側でもヒューマン側でも、観客が感情移入できるストーリーを語ることだ。(オークのフォレストウルフ族のリーダーである)デュロタンは父親で、妻がいて家族がいる。そして自分の種族を守る責任がある。彼は、観客が完全に理解できて同情できる人だよ。僕が作品を通して常に意識していたことは、観客がトラヴィス(・フィメル)演じるローサー(ヒューマン側の騎士)と、トビー(・ケベル)のデュロタンに常に感情移入できるようにすることだったんだ」

 『月に囚われた男』『ミッション:8ミニッツ』の両作で、SFというジャンルを超えた感動的な作品を作り上げたジョーンズ監督。非凡な才能を持つストーリーテラーとして知られる彼が、すでに確立されたゲームを題材に、どこまで感情豊かな作品に仕立て上げることができたのか、間もなく完成する本編を期待せずにいられなくなった。

 ちなみにジョーンズ監督は、父である、デヴィッド・ボウイさんの死後、自身のTwitterで以下のコメントをつぶやいた。「Very sorry and sad to say it's true. I'll be offline for a while. Love to all.(それが本当だと言うのは、とても残念で悲しい。しばらく(ネットから)離れます。みんなに愛を)」

映画『ウォークラフト』は2016年全国公開
(C) Universal Pictures

【今月のHOTライター】
細谷佳史(フィルムメーカー)
プロデュース作にジョー・ダンテらと組んだ『デス・ルーム』など。『悪の教典 -序章-』『宇宙兄弟』ではUS(アメリカ側)プロデューサーを務める。

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