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「量産型リコ」なぜザクからユニコーンガンダム?脚本家が明かす「誰の人生も否定しない」ドラマ作り

今回のリコは第一話でユニコーンガンダム作りに挑戦
今回のリコは第一話でユニコーンガンダム作りに挑戦 - (C)「量産型リコ」製作委員会2023 (C)創通・サンライズ

 乃木坂46与田祐希が主演を務めるドラマ「量産型リコ -もう1人のプラモ女子の人生組み立て記-」(毎週木曜深夜24時30分)が、6月29日深夜からテレビ東京系で放送される。全てが平均的な“量産型”主人公・小向璃子(与田)が、プラモデルとの出会いを通じて大人へと成長する姿を描いたホビーヒューマンドラマ。昨年放送されたシーズン1には、「量産型ザク」をはじめ実在するキットが登場し、プラモ作りとリンクした、社会人に寄り添う優しい大人たちのドラマは多くの視聴者の共感を呼んだ。

与田祐希、寝顔もキュート前作「量産型リコ」【画像】

 本作で企画・原案・脚本を務めた畑中翔太(BABEL LABEL)が、前作に込めたメッセージや制作秘話と共に、“もう一人のリコ”を描いた新作について語った。(編集部・入倉功一)

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メーカーの枠を超えたプラモ文化への思い

Q:「量産型リコ」の企画はどのように生まれたのですか?

テレビ東京のプロデューサーチームと、一緒に制作した「お耳に合いましたら。」や「八月は夜のバッティングセンターで。」のように、何かと何かを掛け合わせたドラマを開発しようとしていた時に来たお話でした。絶対に面白いものができると思ったので、ぜひ企画にしてみましょうと。

というのも、僕のなかで「プラモデルが組み立つ」ということと、「人生が組み立つ」ということが最初からリンクしていたんです。プラモデルって、集中して作っていると無になれたり、雑音が消えるホビーというか、何かに没頭することで身の回りの問題に向き合えたり、背中を押してもらえたりするかもしれない。プラモを組み立てることと人間ドラマってすごく相性がいいなと思っていたんです。なので当初はタイトルの「量産型リコ」よりも(副題の)「人生組み立て記」が企画のコアでしたね。

第1話でリコは「量産型ザク」を手に取る(C)「量産型リコ」製作委員会 (C)創通・サンライズ

Q:第1話でリコが出会うプラモに「量産型ザク」を選んだ理由は?

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僕自身が人生で初めて買ったプラモデルが、旧キットの「量産型ザク」だったんです。だから1話目は絶対にザクをやりたいと思いながら物語を作っていて、「何をするにも中間値のど真ん中をいく主人公」という設定を考えた時、「量産型〇〇」というドラマタイトルにしたらテーマ性が表に出てくるんじゃないかなと。そこから、たとえ周りに「量産型」と言われようが、人生は自分で色を塗った瞬間からオリジナルになるし、それでもう最高だよねというドラマの根っこにあるメッセージが組み立っていきました。

Q:ドラマにはバンダイスピリッツさん以外のメーカーのキットも登場しました。

そうですね。「ミニ四駆」に関しては当初からぜひテーマにしたいとお願いしていました(笑)。第2話の「GT-R」もアオシマさんのキットでしたし、他メーカーのプラモデルもテーマにしたいと言い出したのは僕らですが、バンダイスピリッツさんもいろいろと調整してくださって。そこは「プラモデルを文化にしたい」という、バンダイスピリッツさんの懐の深さというか心意気だと思います。

ミニ四駆で童心に帰る大人たちのドラマも話題を呼んだ(C)「量産型リコ」製作委員会 (C)TAMIYA

もともとこの企画は、プラモデルを売るためのドラマではなくて、文化としてプラモデルがもっと広がってほしいというところからスタートしているんです。もっとみんなが簡単に楽しめるものだということを発信したいというのが根っこにあったので、売れているからとか、新商品だからという理由でプラモが選ばれることはなかったです。

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Q:実際のホビーを扱ううえで特に気をつけた点はありますか?

プラモ作りの工程をリアリティをもってしっかり見せるようにしました。パーツは全部切り離すとか、塗装には時間がかかるし、塗ったら乾燥機にかけたりしてちゃんと持つとか。“3分クッキング”にならないように気をつけました。

Q:俳優の皆さんも実際に作られたんですか?

全工程ではないですが、これでもか! っていうくらい作ってもらっています。カットを変える際に分解してまた作ったりしているので、倍くらい作業しているかもしれません(笑)。尺の関係で飛躍は必要ですが、プラモデルファンには熱い方が多いので、そういう部分で嘘をつかずに、僕らができるなりにちゃんと見せることは意識していました。30分ドラマでは収まらないほどの情熱と時間がかかっているので、これがグルメドラマだったらどんなに楽だったか……と思うこともありましたが(笑)。プラモ作りのシーンはある意味、都合よく撮らなかったことで、カットからにじみ出ている熱量があるのではないかなと思います。

“嫌な人”は出さない

厳しくても“嫌な人”がいないリコの世界 新作「量産型リコ -もう1人のプラモ女子の人生組み立て記-」(C)「量産型リコ」製作委員会

Q:プラモ作りをきっかけに、リコたちが少しだけ前向きになっていく姿も印象的でした。

すごい強弱のある劇的な展開で変化するより、プラモじゃなくても、何かをきっかけに、ちょっとだけ背中を押されるっていうのが一番リアリティがあると思うんです。それこそ定年間近のおじさんや、バブル気分が抜けない上司や、やる気のない若手だったり、そういうどこにでもいる、誰かしらに当てはまりそうな人たちの背中を少し押せるといいなと。「量産型」を描くって、そういうことだと思うんです。

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Q:リコの周囲に“嫌な人”がいないのも特徴だと思います。浅井みたいに嫌みを言うキャラでも、悪い人間とは描かれていないですよね。

「嫌な人を作らない」っていうのは、僕のドラマ作りにおける明確なコンセプトです。全てのドラマではないですが、「量産型リコ」のような作品ではそれが重要なテーマでした。コンテンツっていろんな観られ方があると思いますが、深夜帯の短いドラマに求められているのは、週末に向けた小さな癒やしとか、楽しみなのかなと。リコがいる会社のチームに加わりたいとか、矢島模型店みたいなプラモデル屋に行ってみたいとか、観ている方が少しだけ逃避したくなる、ずっと気持ちのいい世界にしたかった。本当は、一度嫌な気分にさせたところで感動する展開をやった方がグッと気持ちは上がるとは思うんですが、「リコ」はちょっとずつ上がっていければいいぐらいの感じでやっているので、嫌な人は作らず、疲れてる方や働いてる方々に捧げています。

矢島模型店のモデル

今回もやっさんの名言は健在のようだ 「量産型リコ -もう1人のプラモ女子の人生組み立て記-」(C)「量産型リコ」製作委員会

Q:劇中の矢島模型店が、あまり見なくなった町の模型屋さんの雰囲気がすごく出ていましたが、モデルはあるんですか?

僕が子どもの頃、山口県に住んでいた時に地元に「ラジコンセンター」という、ミニ四駆やプラモを売っているお店があったんです。みんな“ラッセン”って呼んでいて、見た目は違いますが、ドラマに出てくるやっさんのような店主の親父さんがいて。そうした子どもや大人のたまり場みたいなお店になればいいなというイメージでした。

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Q:矢島模型店の品ぞろえも最新キットから古いものまで、種類も豊富で素晴らしかったです。

僕らの理想のお店を描きたくて、バンダイスピリッツさんの協力のもと、他社さんからもいろんなプラモデルをいただいて置いたんですが、ネットの反応を見ると、プラモデルが品薄になっているなかで、あんなお店は今や夢の場所だというお声が多かったです。そこはあくまでドラマということで……(笑)。

Q:「人生のカスタマイズは自由だ」など、店主のやっさん(演:田中要次)の名言も話題になりました。

いつもプラモデルの話ばかりしているのに、たまに人生の名言を言ったりすると深みが出ますよね。やっさんはキャラクターを作った最初から田中さんのイメージで作っていて、このドラマの1つの柱になる存在だと思って、そのキャラクターを深めました。そういう意味で、やっさんは僕らにとってもすごく重要なキャラクターで、今作でもやっさんは同じ設定で登場します。

もう一人のリコ、誕生秘話

Q:放送終了後から続編を望む声がありましたが、どの段階で決定したのですか?

正式なタイミングは思い出せませんが、予想以上の反響をいただいたこともあり、お話は放送後ぐらいから出ていました。もちろんうれしかったのですが、企画を作り、脚本を書く立場としては、前作で燃え尽きた気持ちがあったので、「どうしよう……」という思いもありました。全話に想いをかけて最後まで駆けのぼったので、いざ続編と言われてどうしようと。

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Q:それが今作で“もう一人のリコ”を描こうと思った理由ですか?

前作で一人一人のキャラクターにフォーカスして、チームが解散するところまで描いたので、そのまま続編を作ったら、人間ドラマのない、ただプラモを作るだけの話になってしまうのかなと思いました。もちろん、ストレートな続編を望む声があるのはわかっているんですが、それでは逆に皆さんの期待には応えられないし、自分のモチベーションも超えていけないなと。そうやって年末くらいまで悩んでいたところで「“量産型リコ”ということは、この世界には他にもリコがいるんじゃないか?」って妄想したんです。

プラモデルって成形機からランナーが生まれてくるじゃないですか。あんなイメージで、無限にリコがランナーのように射出されてきたら面白いなと。これこそ、この作品でしかできない続編のあり方だなと。自画自賛になってしまいますが、絶対に面白くなるしファンの皆さんも許してくれるんじゃないかと思って、チームに企画を提案する時に興奮していたのを覚えています。

役柄は違うけどあのメンバーにまた会える! 「量産型リコ -もう1人のプラモ女子の人生組み立て記-」(C)「量産型リコ」製作委員会

Q:リコだけではなく、前作のキャストが、同姓同名の全く異なる役柄で登場します。

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僕もファンの皆さんも、(前作の)メンバーに会いたい気持ちはあるので、役柄が入れ替わっても愛せるんじゃないかなと。劇団ってそういう感じですよね。劇団員が演目を超えていろんな人を演じるけど、その劇団が好きだから全部観る。そんな劇団「量産型リコ」みたいになれれば、ある意味で「量産型リコ」を永遠に作れるんじゃないかと(笑)。

Q:主演の与田さんも気合が入っていますか?

与田さんってリコちゃんと相違ない部分があって、すごくいい意味でフラットなんです。常に平熱というか。今回も飄々とやってくれていますが、迷いがなくなった感じはあります。1年目は初めての連ドラ主演で、不安や模索している部分があったと思うんですけど、今回はもう一つ大人になったというか、演技も堂々としていて、本当にチームの座長という感じです。

可能性の獣に込めたメッセージ

俳優陣も実際にプラモ作り 完成品がうますぎないことでリアリティーが生まれた(C)「量産型リコ」製作委員会 (C)創通・サンライズ

Q:前回はザクでしたが、今回、第1話のプラモデルに「ユニコーンガンダム」を選んだ理由は?

ユニコーンガンダムって通称が“可能性の獣”ともいうんです。前作のリコはイベント会社でもわりとぬるま湯なチームにいて、それはそれで人生を楽しんでいるっていうテーマでしたが、今回はスタートアップ企業を立ち上げた若者という設定。そうした「俺ら大学出て起業しちゃうぜ!」みたいな子たちもまた、ある意味で「量産型」だと思っていて(笑)。彼らはユニコーン企業になって飛び立ちたいと思っているけれど、まだまだ、真っ白な“ユニコーンモード”で、“デストロイモード”にはなれていない。そんな今から羽ばたくかもしれない彼らの姿をユニコーンガンダムに背負わせています。

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Q:今回のホビー選びは苦労しましたか?

前作ではガンダムからザクまで、テーマにしたいプラモデルを自由に選んでいたので、一番悩みましたね(笑)。でも、プラモデルって本当に無限の可能性があるんです。前回で扱えなかったジャンルも登場しますし、ガンダムだけでも「ユニコーン」のように新しいシリーズが出てくる。まだまだ描けるものはたくさんあって、ある意味で前作のラインナップを超えられるんじゃないかと思っているので、ぜひお楽しみください。

Q:本作が伝えるメッセージと、新作の見どころをお願いします。

前作から共通することではありますが、僕らはこのドラマを「量産型」をテーマにした「誰かに重なる物語」だと思っています。新しいメンバーも含めて全員が誰かに当てはまりそうな「量産型」を切り取ったキャラクターになっていますし、このドラマは誰のことも否定しません。そのうえで、どこか前向きになれるストーリーにしたいと思っているので、自分を重ねて観ていただけたら嬉しいです。

また、前作を観ていただいた方は、同姓同名のキャラの関係性の変化や、そんななかでも変わらないやっさんがいることで、共通するリコワールドを感じられる部分もお楽しみいただけると思います。同時に、過去作を知らなくてもいいのが新しい「量産型リコ」の楽しみ方でもあるので、前作を観た方も初めての方も、両方の間口から入っていただきたいと思います。

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ドラマ「量産型リコ -もう1人のプラモ女子の人生組み立て記-」は6月29日からテレビ東京系で放送開始(毎週木曜深夜24時30分~)

【シーズン1 ビデオグラム情報】
「量産型リコ -プラモ女子の人生組み立て記-」Blu-ray BOX&DVD BOX
発売元:「量産型リコ」製作委員会
販売元:ハピネット・メディアマーケティング
Blu-ray:2万900円(税込)
DVD:1万6,720円(税込)

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