シネマトゥデイ

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映画短評

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  • マン・ダウン 戦士の約束
    PTSDを抱えた帰還兵の心象世界を追体験する異色の戦争映画
    ★★★★

     米軍帰還兵のPTSDをテーマに取り上げた戦争映画は数多いが、その現実と妄想の入り混じった悪夢のような心象風景を当事者の主観で具体的に描いた作品は珍しいだろう。要するに、心を病んだ元兵士の目から見える世界とその心理状態を観客に追体験させるのだ。
     これらの描写が心理学的にどれだけ正確なのかは定かでないものの、しかし映画的な説得力は十分に持ち合わせている。戦場へ人間を送り込むことの罪深さを思い知らされるはずだ。
     家族への愛情だけを心の支えに地獄を彷徨う主人公を演じるシャイア・ラブーフも力演。この人、数々の問題行動さえなければ本当にいい役者なんだけれどね。

  • ペット 檻の中の乙女
    ひねりを効かせた展開で見せる監禁系サイコ・スリラー
    ★★★★★

     地味で孤独な非モテ男が、一方的に惚れた美女を誘拐して檻に監禁する。ウィリアム・ワイラー監督『コレクター』の系譜に属する話だが、本作が数多の監禁系サイコ・スリラーと一線を画すのはヒロインのキャラ。どういうことかというと、この被害者、そもそも野放しにしといちゃいかん危険物件だったのだ。
     というわけで、頭のネジが狂った男女の緊迫する心理的攻防戦が最大の見どころ。檻の外と中で次第に立場が逆転していく辺りの展開はなかなか面白い。惜しむらくは、テンポがあまりにも遅いところ。エンジンのかかるまでが長すぎだ。最後のオチも尻つぼみ気味。とりあえず、使い古された設定に上手いことひねりを効かせた点は評価できる。

  • クリミナル 2人の記憶を持つ男
    キャスティングは絶妙、とりわけコスナーが光る
    ★★★★

     R・レイノルズが出ているせいか、同じ記憶移植モノ『セルフレス/覚醒した記憶』を連想。そこにT・L・ジョーンズらの『JFK』トリオや、ワンダーウーマンことG・ガドットが加わり、キャスティングだけで胸が騒ぐ。

     テロリスト対CIAのサスペンスを盛り立てるうえで、バイオレンスは効果的に機能。そこにわざとらしさはなく、ロンドンの屋外ロケ効果もありナチュラルに映る。

     主演のコスナーは久々にハマリ役。『パーフェクト・ワールド』等の“ワルだけどイイやつ”パターンはい見飽きたが、ここではギリギリまで極悪人。設定は少々強引だが、簡単に改心しないキャラは自然で無理がなく、好感が持てた。

  • ナイスガイズ!
    脇役までしっかりキャラが立つオフビートの美学
    ★★★★

     S・ブラックらしいオフビート感が狂い咲く2時間弱。ポルノ業界のいかがわしさと、そこで発生した陰謀のミステリー、探偵コンビ奔走のスリル、70年代ノスタルジーが絡み、妙味を醸し出す。

     とりわけユーモアは重要。クマのような体格でむやみに暴力を振るうクロウと、ヘタレなゴズリングの丁々発止は絶妙だ。脇キャラの個性も立ち、しつこい殺し屋たちや娘の友人も、いるだけでジワッとおかしい。

     中でもゴズリングの13歳になる大人びた娘がダントツに面白いが、部屋に貼られたパンクのポスターを見るとDIYも納得。1977年にはリリースされていない、クラッシュ『ロンドン・コーリング』のポスターがあるのはご愛嬌。

  • 彼らが本気で編むときは、
    社会や家族の多様化が手に取るように理解できる
    ★★★★

    マイノリティへの偏見や育児放棄というハードな題材を扱うが、小学生女子の目というフィルターを通したのが荻上直子監督流。叔父の恋人がトランスジェンダーのリンコと知った少女の驚きやリンコの母性と優しさに癒される過程、リンコへの偏見に傷つき怒る心模様と全ての局面で彼女に共感する。LGBTという言葉が市民権を得た程度で、養子縁組も浸透しない日本社会で多様化と訴えても机上の論理となりがち。でも実際に映像でマキオ&リンコのようなカップルを見ると多様化の意味が伝わり、家族形態も旧弊依然としたものである必要はないとわかるのもいい。荻上作品の魅力の一つでもある自然な台詞回しが効いていることは言うまでもない。

  • マン・ダウン 戦士の約束
    PTSDの元兵士に失礼すぎやしまいか?
    ★★★★

    荒んだ都市をスカウトする兵士ふたり組が登場する冒頭で、ディストピア映画かと思ったら、話はどんどんメロドラマ風に!? シャイア・ラブーフ演じる主人公ガブリエルが涙を流し始めたあたりから先の展開は読めてしまうが、PTSDの原因と思われる友軍誤射に至る過程がバカバカしすぎて、白けた。アメリカでは戦争神経症を患った挙句にホームレスになる元兵士も多いわけで、そういう方々に対して失礼すぎやしまいか? パソコンやSNSサイトのパスワードを恋人や夫が簡単に解けるように設定する無神経な女のせいで心を壊すって、どうなの?

  • 愚行録
    なのだが映像はどこまでも端正で濁りがない
    ★★★★★

     描かれていくのは人間たちの愚行のオンパレードなのだが、それとは対比的に、映像は端正でくすみがない。
     冒頭のバスのシーンは、出来事と映像の質感の双方が、その後に描かれる物語の不穏な序章になっている。バスの中の、雨に濡れた窓、湿った空気、昼なのに明るくない光が、その後もずっと尾を引いて、物語の陰影をさらに濃くしていくのだ。この場面は原作にはないそうで、映像と脚本の力に驚かされる。
     微妙な低温度で貫かれた映像は、監督が映画を学んだポーランドの撮影監督が撮り、ポーランド映画「イーダ」のカラリストが色を細かく調整したとのこと。監督の映像へのこだわりが、独自の世界を生み出している。

  • 汚れたミルク/あるセールスマンの告発
    くっきり骨太なメッセージ
    ★★★★

    続けて公開となる『サラエヴォの銃声』が緻密な設計を見せるのに対し、こちらはえらく大ぶりな作りのタノヴィッチ作品。善良な庶民の出世物語、からぐるっと反転して告発劇が進む展開はO・ストーン的、あるいは今井正か。インド映画チームとのコラボも影響しているのか、愚直だが太い筆致。

    モデルの事件は90年代のもので、粉ミルクに特化して本作を捉えると誤解も生じる気がする。あくまでグローバル企業と医療の結託、食品と健康、「最たる被害者は子供」ってことについて、数々のドキュメンタリーが伝えてきた問題の本質を改めて俎上に載せている感じ。基本は直球勝負だが、ユニークなのは映画作家の信念を重ねたメタ構造の部分だろう。

  • ナイスガイズ!
    バディムービーとしての醍醐味
    ★★★★★

    『プレデター』の雑魚キャラ役者から、リブート版の監督まで上り詰めたシェーン・ブラック。アンガーリー・ライス演じる主人公の愛娘の活躍っぷりは、明らかに脚本作『ラスト・ボーイスカウト』流れだし、展開も演出も、笑えるぐらい初監督作『キスキス,バンバン』から何も変わっちゃいない。なので、今回の肝はポルノ・ヒゲでボケまくるライアン・ゴズリングと、ジョン・グッドマンにしか見えないラッセル・クロウの絶妙なコンビネーション。そして、ファッション、音楽、クルマなど、ザッツ70年代な空気感だろう。監督の好き好き度合いは十分伝わるが、116分はちょい長い。そんななか、異彩を放つ殺し屋役のマット・ボマーは買いだ。

  • 雨の日は会えない、晴れた日は君を想う
    17年ぶりの親子喧嘩も泣かせる。
    ★★★★

    今回も行き場を失った主人公の再生物語をガッツリ魅せる、ジャン=マルク・ヴァレ監督作。しかも、ジェイク・ギレンホールとクリス・クーパーが『遠い空の向こうに』以来、17年ぶりに親子役(今回は義理)で共演し、またも衝突する展開が泣かせる。散りばめられたシニカルな笑いや一人の子供の存在など、『永い言い訳』との共通項は多いが、主人公が自分の心を“解体(原題)”するため、身の周りの世界を“解体”していく隠喩もあることから、本作の方が一枚上手。覚えにくい邦題は若干損しているかもしれないが、本編を観た後なら、しっかり胸に刺さります。ちなみに、秘密を抱えた少年を演じるジューダ・ルイスは、今後ブレイク必至! 

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