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「光る君へ」直秀が泥を握りしめた二つの理由 毎熊克哉「まんぷく」の同世代演出と再会で閃き

第9回「遠くの国」より毎熊克哉演じる直秀
第9回「遠くの国」より毎熊克哉演じる直秀 - (C)NHK

 吉高由里子が「源氏物語」の作者・紫式部(まひろ)役で主演を務める大河ドラマ「光る君へ」(NHK総合・日曜午後8時~ほか)で、オリジナルキャラクターの直秀を演じる毎熊克哉。直秀は昼は散楽の一員、夜は貧しき人のために働く義賊という二つの顔を持つ人物として描かれ、3日放送・第9回で衝撃的な展開を迎えた。毎熊が自ら提案したという描写や、出演2作目の大河ドラマとなった本作にかけた思いを語った(※ネタバレあり。第9回の詳細に触れています)。

【画像】直秀にまさかの残酷展開…第9回

 平安時代に1,000年の時を超えるベストセラーとなった「源氏物語」を生み出した紫式部(まひろ)の生涯を、「源氏物語」の主人公・光源氏のモデルとされる藤原道長(柄本佑)とのソウルメイトのような関係を交えて描く本作。脚本を、社会現象を巻き起こした恋愛ドラマ「セカンドバージン」(2011)や大河ドラマ「功名が辻」(2006)などの大石静が務める。

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 平安の貴族社会を描く本作で実在した人物が多く登場するなか、毎熊が演じたのは架空の人物。オファーを受けた際、毎熊は「え、オリジナルキャラクターって?」と驚きがあったというが、貴族ではなく町の人間という設定を聞き「感覚としては今の自分に近いポジション。ある意味、視聴者の方に近い形で政権争いなどのメインストーリーを俯瞰して見て、風刺劇にしていくっていうのがすごく面白いなと。なおかつ、貴族に対する反抗心は強くあるんですけど、道長との出会いによって彼らに違った面を見出していくところも面白いと思いました」と振り返る。

 一方で、台本読み、顔合わせの日に脚本の大石と対面した際には「“楽しみにしているね”としか言われなくて、すごくプレッシャーに感じた記憶があります」とも。「出演シーン自体は多くないけれど、何かすごくにおってくる部分が大石先生の脚本にあって。だからすべては脚本にあるということなのかなと思って、間違っていたら間違っていたでしょうがないと、脚本に書かれているメッセージや、僕に対する期待っていうのを自分なりに感じ取って応えようと思いました」と自身を鼓舞していった。

 劇中で直秀の過去が描かれることはなく、謎に満ちた人物でもあるが、毎熊は「直秀の生い立ちなどは明確には描かれておらず、あくまで僕の想像なんですけど、散楽のメンバーたちは親の愛を知らずに育ち、帰る場所がないような人たちで、かなり早い段階から一緒にいたのではないかと。直秀という名前も自分で考えたのかもしれないし、芸名なのかもしれない。だからこそ、彼らは血は繋がっていないけれど、家族みたいな感覚がある」と直秀のバックボーンに思いを巡らせる。

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 幼少期に出会ったまひろと道長が6年ぶりに再会したのが、直秀らが散楽を行っていた町辻。ふとしたことからまひろ、道長と知り合った直秀は、やがて二人のキューピッドのような役割を担っていく。貴族を嫌悪しながら、二人の力になる直秀の心情について毎熊はこう分析する。

 「直秀は(下級貴族の)まひろも含め、道長ら貴族に対しての反抗心は強くあるけれど、その反面、愛情とかそういったことに対して羨ましさがあるんじゃないかと。だから、見知らぬ身分違いの男女が思いを寄せ合っていることに気づいたとき、普通だったら“何をやっているんだこいつら”と冷ややかに見たり、劇のネタにしたりしそうだけど、なぜか笑えない。そこには、純粋に思い合っている二人に対する羨ましさがあるのかなという気がしています」

~以下、第9回のネタバレを含みます~

 夜は義賊として貴族たちの屋敷に潜入しては金品を盗み出し、貧しき人々に分け与えていた直秀。第8回のラストではついに道長らに捕まってしまうが、第9回では直秀が義賊であることを知った道長が看督長(かどのおさ※検非違使庁に属する下級の役人。牢獄の管理や犯人の逮捕を行う)に心づけを渡し、処分を軽くするように交渉する。しかし、放免たちは直秀たち義賊を皆殺しにしてしまい、まひろと道長は直秀の無残な姿に言葉を失う。

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 このショッキングな展開について毎熊は「直秀が殺されるっていうことは早い段階で知っていました。第9回の台本を読んだときは、直秀の遺体がカラスに食われている描写がめっちゃいいなって思いました。直秀がまひろに都を離れることを告げるときに“俺は鳥かごを出て、あの山を越えてゆく”と言っていたように、直秀にとって鳥が自由の象徴だったような気がして。まひろの屋敷を訪れるときにもフクロウの鳴きまねで合図を出していましたよね。何のしがらみもなくどこにでも行ける、自由に自分で考え、自分の意志で生きていけるっていう直秀が鳥に食われるという皮肉な運命」と振り返り、毎熊のある提案がシーンに取り入れられたと明かす。

 「9回の演出を担当された中泉(慧)さんは僕と同い年で、朝ドラ「まんぷく」で出会って以来の再会だったんですよね。中泉さんもこのエピソードをすごく大事にしていて、直秀の最期の顔だったり、直秀の人生をどう終わらせるのかといったことについて、すごく話しやすかったです。お互いにより重要度が高いポジションで再会して“絶対いい回にしよう”っていう意識が何となくあって。そこで、台本にはなかったんですけど、直秀が泥を握りしめて死んでいるというのを提案させていただいたところ、採用してくださって。最終的に、泥を握りしめて死んでいる直秀を見つけた道長が、泥を払って扇子をもたせるというシーンになったんです」

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道長は直秀が握っていた泥を払い、扇子をもたせる

 劇中、直秀が息絶えるときの様子は描かれていないが、泥を握りしめるという直秀の行動を考えた理由は二つあるという。「一つは抵抗したんだろうなと。実は直秀を殺した人物は第2回で登場しているんです。直秀が町の人をいじめていた検非違使にイラッとして石ころを投げて逃げていたら、まひろとぶつかる……というシーンだったんですけど、その時に“待て!”と直秀を追いかけていた二人に殺されるわけです。その二人に対してというよりも、国の権力に対しての反抗、悔しさがにじみ出た死に方になったらいいなと。もう一つは、そんな思いを道長にバトンタッチするようなニュアンス。観てくださる方に伝わるかどうかはわからないけど、僕としてはそういう思いでした」

 「どうする家康」の大岡弥四郎役(ゲスト出演)に続く大河ドラマ出演を経験した毎熊。放送開始からの反響の大きさも実感したといい、「撮影は3か月で終わったんですけど、1年分の気持ちで挑んだ。それは他の作品ではなかなかない感覚」と大河ならではの醍醐味をかみしめていた。(編集部・石井百合子)

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