シネマトゥデイ

ジョニー・デップ独占インタビュー


『ブロウ』
9月15日 日比谷みゆき座他 全国東宝洋画系)/ 2時間03分
配給:ギャガ・コミュニケーションズ

■スタッフ■監督: テッド・デミ 製作総指揮: ジョルジア・カサンデス 脚本: ニック・カサヴェティス 撮影: エレン・クルス 美術: マイケル・ハナン 編集: ケヴィン・テント 衣裳: マーク・ブリッジス
■キャスト■ジョニー・デップ ペネロペ・クルス フランカ・ポテンテ レイ・リオッタ ポール・ルーベンス ジョルディ・モリャ レイチェル・グリフィス

公式サイト:http://www.blow-jp.com/




釈放される2014年にはすでに72歳になっているユングに少なからず同情している

ジョニー・デップは、最近とても平和な日々を送っている。出演作選びにうる さい事で知られている、このセクシーな男優は、私生活でも何かと話題を振りま いてきたが、 今までにない最高の幸福感に浸っている。ニューヨークの高級ホテルの1室を壊 して逮捕歴のある、かつての反逆児は、現在、恋人の歌手兼女優のヴァネッサ・ パラディと、彼らの娘のリリー・ローズと一緒にパリで穏やかに暮らしている。

「こんな美人たちに囲まれていると、家を空けようなんてとても考えられない ね」と、今の生活に満足し切っている。かつてのミュージシャンのデップをアメ リカに連れ戻し麻薬密売映画『ブロウ』の主人公で実在のブローカー、ジョー ジ・ユングの役を承諾させるのには、かなりの説得力を要した。  

ブルース・ポーターの同名の小説を映画化した『ブロウ』は、70年代、80年代 のアメリカに、コカインを密輸した最大の麻薬密売組織の一員であるユングの栄 光と転落の物語である。全米高校フットボールの選手だった彼が、コロンビアの 麻薬密売組織の中心人物パブロ・エスコバーの片腕となるまでの半生を描いた実 話に基いている。非合法なアメリカン・ドリームを体現しようとした彼は、合衆 国の客を相手にコカインを密売し1億ドル以上もの大金を稼ぐが、結局計画につ まずき全てを失い、なによりかけがえのない娘からの信頼をもなくしてしまう。

彼女は何度か電話はかけるが、懲役25年の刑に服している彼にいまだかつて一度 も会いに来たことはない。  

実際、デップはニューヨークのオティスヴィルにある連邦刑務所内で、ユング 本人に幾度か面会し、時間的には、短いものだったが、親しく話を聞いている。 デップはその時の感想を次のように述べている。

「僕は、釈放される2014年にはすでに72歳になっている彼に少なからず同情して いる。彼は、親のいいなりに育てられた操り人形だった。彼の両親は息子にプレ ッシャーと過剰な期待をかけ、思い通りに育てた」

親子の確執は、映画の中で も克明に描写されている。母親は金銭に執着心の強い勝気な女性として、一方父 親(レイ・リオッタ)は、成功とは縁がない生真面目な小心者として描かれてい る。ユングは、彼らがどのように生き、どのように変わっていったのかをよく見 ていた。彼はコカイン中毒の妻(ペネロープ・クルズ)と20年間贅沢三昧に暮らすが、結局は飽くなき欲望と薬物依存から抜け出せないまま自滅してしまう。

 

一緒に逮捕された仲間は、みんな2、3年の刑期なのにユングだけ25年を言い渡 された

最近の宣伝プロモーションのインタビューで、デップはユングを「とらえどこ ろの無い」男だと評し、こう印象を述べている。

「僕が、彼に会って一番安心したのは、彼がとても人間くさいことだ。彼は決し て人に対して悪意や恨みを持ったことがないし、欲深い人間でもない。過ちを認 め、苦悩の余生を生きなければならない、むしろ可愛そうな人間なんだ。皮肉屋 で、変わり者で、打ちひしがれているけれど、本当は強靭な男なんだ。

彼はもう 充分刑に服してきたよ。もう釈放されても良いんだ。一緒に逮捕された仲間は、 みんな2、3年の刑期なのに彼だけ25年を言い渡された。

彼はもう立派に罪は償 ったと僕は信じている。彼はもう立ち直っているからこの先何年も独房に居つづ けても意味がない。

僕は、更正プログラムが良かったというより、むしろ彼が甘 んじて受け入れなければならなかった歪んだ考えと、乗り越えてきた容赦のない 現実を直視したことで、自らを更正させることができたんだと思う。彼は、意外 にスム―ズに社会復帰できるような気がする」

 

ドラッグを単に気晴らしに吸うものなんて軽く考えるのは大間違いだ

D.A.R.E.プログラムをこなしているユングは、晴れて自由の身になった時に は、若者たちに薬物の恐ろしさを身を持って教えていくだろう。

「彼は娘(『ブロウ』で入る映画化料は全て彼女が受け取ることになるが)に も、父親として満足な愛情をかけてやれなかった罪滅ぼしも出来るだろう」と言 うデップは、観客がこの映画から、ユングが置かれた環境でどう生き抜いてきた か、何が彼を間違った方向へ進ませたのかを、汲み取ってほしいと願っている。

「彼の人生は、彼が望んだものではなかったけれど、結局は、両親と同じような 生き方をしてしまった。そこをよく分かって欲しい。ドラッグを単に気晴らしに 吸うものなんて軽く考えるのは大間違いだ」  

ティーンエイジャーでドラッグに手を出した過去を持つデップは、当時を振り 返ってこう告白する。「ドラッグは、隠れ蓑だったんだ。本当は何か得たいの知 れない恐ろし いものから逃れたい、その恐怖心を麻痺させたい一心だった」。強烈な陶酔感に 浸り ながら、僕はいつかは直面せざるをえない悪魔と出会う瞬間(その時、僕は彼を 睨んで「負けるものか」と奮い立たなければならないんだが)が、少しでも先に 伸びるこ とだけを願っていた。事実、僕は何度か悪魔に出会っている」

 

この作品は1人の男の生き様を見つめた物語だ

ケンタッキー州オーウェンスボロ生まれで、ワーキングクラス出身のデップ は、フロリダで育ち高校を中退した後ロックバンドに加わり、70年代の終わり頃 カリフォルニアに移った。俳優の道に強く惹かれ、80年代後半、刑事ドラマの青 春版「ハイスクール・コップ」で大ブレークし、現在のヴァネッサ・パラディと 落ち着く前は女優のウィノナ・ライダー、シェリリン・フェン、ジェニファー・ グレイやモデルのケイト・モスとの華やかなロマンスが、タブロイド紙上を賑わせた。デップは、スターダムに踊り出る前の無名時代を懐かしんで、

「僕の人生 は、ユングほど波瀾に富んだものではなかった。でも、家賃も払えず途方にくれ ていた時、アラーの神か誰かが突然、未払い分のチェックを送ってくれたんだ」 と打ち明けている。

彼はその後、ヒット作よりも演技力を高めてくれる役柄を選 んでチャレンジしている。『ギルバート・グレイプ』、『シザーハンズ』、『エ ド・ウッド』などに意欲を見せた反面『スピード』、『インタビュー・ウィズ・ ヴァンパイア』『レジェンド・オブ・フォール 果てしなき想い』などは、パス している。ごく最近では、アカデミー賞ノミネート作品の『ショコラ』で、またもや味のあるアウトサイダーを好演している。  

彼は『ブロウ』を、今年度アカデミー賞作品の『トラフィック』のようなアメ リカにおける麻薬戦争を批判したものとは別のものだと言っている。

「この作品 は1人の男の生き様を見つめた物語だ。麻薬密売が彼のビジネスであり、金儲け に命を賭けることこそが仲間の期待に答える唯一の道と信じ実行した。だが最後 には財産もなくし、家族の絆も失ってしまう。彼は人生に敗北したのだ。たとえ 彼の目指したアメリカン・ドリームは手中に収めてもね」

(アンジェラ・ドーソン/訳 浮穴真理子)
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