シネマトゥデイ

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ハリウッドで作られた初めての本格時代劇『ラストサムライ』の公開を12月に控え、主演のトム・クルーズとエドワード・ズウィック監督が来日。日本のキャストとともに記者会見を開いた。ハリウッドが作るチャンバラに、日本人なら誰もが不安を覚えるはず。しかしこの日、本編のなかの4つの映像が世界に先駆けて公開され、トムとズウィック監督が自信を持って、その完成度の高さをアピールした。


トム(以下TC):僕はこれまでたくさんの映画を作ってきたけど、これほど心に残るものは初めてだよ。日本の文化やサムライの道への共感が伝わり、皆様へのギフトとなればうれしく思います。


ズウィック監督(以下EZ):これは、まだ世界のどこでも公開していない映像。日本で最初に公開するのがふさわしいと思ったんです。
まずは、物語の冒頭が一連のシーンによって公開された。続いて、渡辺謙の演じる勝元と、トムの演じるオールグレンが出会うシーン。トムとズウィック監督によって、丁寧に解説が行われる。
TC:このシーンでは、渡辺さんの演技の重みや力強さがわかる。彼以外にこの役を演じる人は思い浮かばないんだ。渡辺さんは非常に寛大でパワフルで、知的な俳優。僕らの間には言語の障害はあったけれど、2人だけの言語を発見し、カメラの外側でも友情を育てられたんだ。

EZ:私は今まで日本の俳優を演出したことがなく、役作りもアメリカの俳優とは違うと思っていたけれど、偉大な俳優には何の違いもないとわかった。渡辺さんがこの映画に持ち込んでくれた知識や経験、努力、この映画に貢献してくれた寛大さに御礼を申し上げたい。続いて、真田広之の演じる氏尾に、オールグレンがトレーニングを受けるシーン。

TC:真田さんの才能は誰もが知っているだろうね。このシーンは、肉体的にとても過酷なシーンだが、彼の肉体的なパワーがよくわかる。これは非常にサイズの大きな映画だけど、感情的にはとても個人的な、人間的な映画。ストーリーの力は人間関係からわきあがり、真田さんがそれに大き
く貢献してくれた。雨の中で、あれほど私の顔の近くに寄るなんて、彼以外には許せないよ(笑)


EZ:真田さんは、日本の名優であるのみならず、世界の名優といっていい。本当に素晴らしい時代考証をしてくれた。彼を映画に出てくれた俳優としてだけでなく、友達として呼びたいと思う。

そして最後のシーンは、物語の後半部。オールグレンが日本の言語や人々を理解した段階のドラマで、小雪との絡みが登場する。ここでトムは日本語を話しているが、ズウィック監督いわく、「真田さんがトムに教えた」そうだ。

TC:僕の日本語がダメなら、真田さんを責めてくれ(笑)。小雪のキャラクターはとても難しい役。自分の中にたくさんのストーリーを持っているような女性を、具象化し、口頭で現す女優がほしかった。小雪さんは優雅で謎めいて、自分のアイデアをしっかり伝える能力を持った人だ。

EZ:どんな女優でも、トムの相手役はとても緊張するはずだよ(笑)。彼女はそれに敢然と立ち向かい、いつも自分をしっかりともって相手役を務めてくれた。
こうして、日本の主要キャスト3人が揃い、いよいよ記者会見が始まった。まずは、日本のキャスト3人に挨拶をしてもらう。

渡辺(以下WK):5月の半ばにニュージーランドで撮影があり、7月にアフレコで大まかな編集の画を見せていただきました。公開が待ち遠しいのもありますが、誰にも渡したくない、という感じるくらい、自分に刻まれてしまった作品です。

真田(以下SH):この作品は、アメリカの監督がサムライ映画を撮るという、歴史的なもの。その中で、日本人として恥ずかしくないものがどこまでできるか、それだけを考えていました。2つの文化が入り混じる現場で貴重な体験をしました。世界中の人に見てもらえたら光栄に思います。

小雪(以下KO):アメリカ映画で日本の文化を描くということに、楽しみな部分もあり、不安もありました。自分が現場に入って何ができるのか考えましたが、画を見たときに、アメリカと日本が上手く融合しているのでは、と安心した気持ちになりました。それが皆さんに伝わればうれしいです。

Q:『ラストサムライ』という映画を通して、皆さんがそれぞれ感じた武士道、日本人らしさというものはどういうものですか?

TC:いい質問だね。この作品を作りたいと思ったのは、武士道やサムライの道を知りたいと思ったから。サムライの精神が持つ、名誉を重んじる気持ち、情熱や、忠義を重んじる気持ち、アイデンティティに共感を覚えるんだ。その掟は非常に力があり純粋だし、その価値観はすべての人の人生を輝かせることができると思う。武士道に関しては時間があれば何時間でも喋ってしまうほど強く心に響くものだけど、この映画では、サムライの文化が持つ美学を伝えたいと思った。サムライの掟が持つ力、美しさを伝えられればうれしいよ。

WK:(トムを指して)彼はこんなナリをしていますが、実は日本人です(笑)…と、言うくらいでした。僕ら日本人でも、武士道やサムライの精神を本当に解っているのか?ということもありますし、この映画を通じて、僕ら自身もそれを探していこうと思った。日常的なレベルで、いつもそんなことを感じながら撮影していましたし、撮影への取り組み方も、誠実さや思いやり、精神のすべてを注ぎ込んだような気がします。


EZ:この映画は、歴史の転換期を描いているんだ。転換期において、日本の人々が武士道の精神から離れようとしている時期。そこで提示される質問は、サムライの精神が近代になっても維持できるのか、ということ。それは日本でもアメリカでも、世界でも問われるべき質問であり、毎日の生活で、そういった価値観を維持できるのか、という問題を提示しているんだ。


SH:すべて語りつくされてしまいましたね。でも、もうちょっと語っていいですか?(笑) 「武士道」と一般的に考えると、サムライとして剣を振るう姿が浮かぶと思うけど、サムライは戦士としてだけではなく、独自の文化と精神性と哲学を持っている。どんな文化を継承して、どんな精神構造をしているのか、そういった、サムライの二面性が出せたと思います。武士の精神は、自分に厳しく他人に優しく、自分を鍛えているからこそ争いを避けて、戦わずして勝つというもの。それが今どれくらい残っているか?残っていれば、すごくいい世の中になる。日本人自身も、それをもう一度見直すきっかけになれば、と思います。

KO:そもそも武士道って、言葉で表現するものではないと思うんです。自分の精神の中にあって、自分に誇りを持って生きる道を全うする、という姿勢を、人が言葉を使って表現するものだと思います。現代社会でも、信念を持って生きている人は魅力的ですし、私もそうありたいと思います。


Q:武士道は、今の日本ではノスタルジックに語られているようです。アメリカナイズされた日本では、若い世代は武士道を知らないと思いますが、アメリカ人として、西洋化された日本をどう思いますか?

TC:この作品では、日本文化にアメリカが入ってきた、という事実を描くことがテーマであり、まさにそれを描いてきたんだ。アメリカ人として、そういう映画に関われたことは名誉に思うよ。


EZ:現代社会では、何か悪いことがあると他人の責任にする傾向があるね。歴史的に見ればわかるように、すべての物事はシンプルに起こるものでもないし、そのときの政治のドラマが関わりあって起こる結果なんだ。すぐに誰かの責任になすりつけるのではなく、自分がそこで何をなしたか、自分の責任はどうなのか、ということを考えるべきだと思うね。それは人生においても言えることだし、それこそが武士道じゃないか?

今回、トムは初めて殺陣に挑戦していますが、これまでこなしてきたアクションと、どんな風に違ったかを教えて下さい。また、渡辺さんと真田さんから見て、トムの殺陣はどのように映りましたか?


TC:撮影前に8ヶ月、殺陣の練習をした。幸い、2人の先生(渡辺と真田)が助けくれて、とても寛大に教えてくれた。この役のために、20ポンド体重を増やしたんだ。重い刀や甲冑を着るからね。そうして身体を変えることで、精神的に、この人物になり切ることができた、実りある過程だったよ。もう一度言うけど、僕の殺陣がおかしかったら2人の責任だ(笑)。でも、自分で責任をとらずに人になすりつけていては武士道に反するかな?


WK:トムのように熱心な俳優さんを見たのは、真田広之ぐらいではないかと…(真田さん苦笑)。よろいを着て、朝から晩まで延々撮影するんですが、撮影後にまた翌週の練習をする。まだやるの?というくらいやりましたね。あと、殺陣はものすごいハードで、本当にお互いを信じないと、大怪我では済まないくらいの、パズルのような殺陣でした。僕が、思い切って彼の頭の上に刀を通して、彼が降りかける刀を僕もよける、という形でやっていましたので、本当に戦友と呼ぶにふさわしい感じでした。

SH:トムは本当にタフで、本当に練習熱心。必ず立ち会って稽古するんですが、撮影が終わって数時間練習をして、毎日、自分が納得するまで何度も繰り返す役者根性は、本当にすごかったですね。彼と初めて会った時は、すでにかなりの練習を積んでいて、少しだけ、日本の剣術に近づくようアドバイスするんですが、教えたその場ですぐ吸収していって、どんどん腰が落ちてサムライらしくなっていく。その過程で僕たちも友情を膨らませて、役の成長と生活そのものがオーバーラップしました。信頼なくしてはお互いに命を預けられない、という貴重な経験をさせてもらいました。


EZ:これだけの大きなサイズの映画で、こういった殺陣のスタイルが見られるのは非常にまれです。とても美しいけれど、芝居的とかダンス的な殺陣ではなく、1歩間違えば命を失う危険をはらんだ殺陣のスタイルです。3人の俳優は運動神経に長けていて、これほど献身的なアクター・ファイター(戦う俳優)は他にいないと思います。もちろん、CGIは一切ありませんよ!


TC:自分に正直であること、正直であり、友人に忠誠心を尽くすことが大切。一番重要なのは、周囲の人と助け合うこと。他の人にいいことをして報われることほど、生きがいを感じることはない。本当に、どんなことでもいいんだ。道を渡る人に微笑を見せることでもいい。それを一人一人がやれば、この世界は良い世界になると思うよ。
8月28日(木) グランドハイアット東京にて
取材・文/竹内詠味子
 (取材・文  竹内詠味子)

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