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 石井聰亙監督 独占インタビュー 『DEAD END RUN』

古くは『狂い咲きサンダーロード』『爆裂都市 Burst City』から、最近では浅野忠信、永瀬正敏共演の『五条霊戦記//GOJOE』『ELECTRIC DRAGON 80000V』まで、常に話題作を放つ鬼才・石井聰亙の新作『DEAD END RUN』が間もなく公開。映像と音楽の疾走感と、その先にあるドラマティックな展開に惹きつけられる本作は、伊勢谷友介主演の第1話「LAST SONG」、永瀬正敏主演の第2話「SHADOWS」、浅野忠信主演の第3話「FLY」といった3つのストーリーから成るオムニバス映画だ。そして、全3話には必ず“逃げる男”が登場し、彼らは追い詰められた瞬間にそれぞれのドラマを紡ぎ出していく。石井聰亙にとって、映画界にとって“新たなる試み”ともいえる本作に、監督自身が込めた想いとは?

――まず、主演3人の起用の経緯を教えてください。

“逃げる男”をテーマに3つの物語を作ろうということになったんですが、まずは一緒に仕事をしたこともある永瀬くんと浅野くんにお願いしたんです。テーマにとても合う2人だし、彼らにとってもチャレンジになるんじゃないかなと思いました。それで、最後の1人には、彼らよりもう少し若い俳優を探していたんです。最終的に伊勢谷くんに決めたのは、カッコいい彼がミュージカルのようなものを演じたら面白いだろうなと思ったからです(第1話「LAST SONG」はミュージカル仕立て)。それに、伊勢谷くんの作品を何本か観させてもらったんですが、すごく素直な演技をする人だったので、実際の彼にもピュアな魅力があるんじゃないかなと。実際にそうでしたね。

――なぜ“逃げる男”なんでしょう?

実際に僕が追い詰められているわけではないんですが、何となく気分的にそういうものがあったんです。袋小路に向かって走っているような……。それに、お金がかからないテーマでしたし(笑)。

――そんなに予算がなかったんですか(笑)?

全くなかったです(笑)。なので、何もない状態の場合、どうすれば映画を面白く作れるかな? というところから考えました。それで、男が逃げて、何かに出会って、弾ける……というテーマに行き着きました。やりたいテーマと置かれている状況が合致した結果がこの作品です。

――低予算のわりには豪華キャストですよ。

役者さんやスタッフには随分無理をしてもらいました。永瀬くん、浅野くん、伊勢谷くんにはとても頼めないと思っていたんですけれど、快諾してくれたので嬉しかったですね。これはボランティア同然です。ただ、予算はないけれど、演出と演技だけはきちんとしているものを作りたかったので、彼らの存在は心強かったです。

――今回の作品では、監督は脚本を書かれていないんですね。

今回のプロジェクトは、今まで組んだことのないスタッフと一緒に仕事をしようという意味合いもあったんです。撮影や照明、衣装、そして脚本の浦辻純子さんもその1人なんですが、彼女は僕が福岡で映画塾を開講した時の生徒さんで、劇作家なんです。僕がコンセプトを与えて、脚本が出来上がるのを待つという形を取ったんですが、どんなものが出来上がってくるのか楽しみでしたね。でも、第1話が出来上がってきた時には、内容が意外すぎて、どうしていいのかわかりませんでした。だって、ミュージカルになっていたんですから(笑)。すごく面白いアイデアなんだけれど、どう撮っていいのか見当がつかない。僕にとってもチャレンジでした。

――そのミュージカルの中で、伊勢谷くんは粟田麗さん演じる女性に「なんで踊るんだよ~?」とツッコミを入れますが、あれはアドリブですか? かなり面白かったんですけれど(笑)。
アドリブだったんじゃないかなぁ。伊勢谷くんは自分の本当の感情を芝居に入れるタイプなんです。彼も脚本を読んだ時はかなり戸惑っていたので、それが現れているんじゃないかな。役者さんが演じる時点で、そのキャラクターは彼らのものですからね。

――主演の3人はそれぞれの物語にハマっていましたね。

ハマって見えるのが彼らの上手さですよね。でも、永瀬くんが第1話に出て、伊勢谷くんが第3話に出て……といった別パターンも見てみたい気がします。

――小物についてもお伺いしたいんですが、永瀬さんと浅野さんがはめていたサイケなデザインの指輪には意味があるんですか?

あれは衣裳の北村道子さんが持ってきたもので、イスラエルの女性物理学者の方が作ったものらしいです。「これを使いましょう!」と北村さんに言われて、「ハイ……」っていう僕の一言で使うことになったので(笑)、最初は特に意味があったわけではないんですけれどね。でも、実はあの指輪をモチーフにしたバックストーリーも作ったんですよ。

――欲しいんですけれど……。

あれは高いみたいですよ~。一点ものなので、全く同じものはないんですけれどね。僕もほしい(笑)。

――ところで、撮影期間はどのくらいだったんですか?

ものすごく早かったです! 10日間だったと思います。ほとんど一発撮りでしたから(笑)。その代わり、リハーサルをきちんとやりました。それをDVカメラで撮って、編集までしましたから。その映像も面白いものでしたけれどね。

――音楽面のこだわりを教えてください。

前作の『ELECTRIC DRAGON 80000V』は、パンク一色で突っ走るという感じだったんですが、『DEAD END RUN』は音楽的にカラフルになっていると思います。クラシックのような綺麗な曲と疾走感があって激しい曲の両方を取り入れることで、様々な要素が詰まった雰囲気を出してもらいたかったんです。いろいろな人が観て、楽しめるようにね。

――作風として、ロマンティックなものも見受けました。

そうしたかったんです(笑)。追い詰められている気分だけれど、再生に向かいたいという想いがあり、DEATHの空気が蔓延している中で女性が本来持っている力を切望している……という。恋愛とか、母親というわけではなく、もっと大きいところでの話なんですが、今はそういった力に興味がありますね。制作中にはさほど思わなかったんですが、出来上がったものを見てみると、自分の中のそんな気分が出ているなと思います。今後も、それは作品に反映していくでしょうね。

――なぜ、そのような心境になったんでしょう?

今、世の中ってものすごく殺伐としているじゃないですか。実は、オウム真理教の事件があった当時に、僕の絶望した心を一番救ってくれたのは『恋する惑星』という映画なんですね。だから、自分もそんな作品を撮ってみたかった。

――『恋する惑星』が監督の心を救ったんですか!?

何か、いいなぁって……(笑)。理屈じゃないんですけれど、絶望的な気分が和らぎましたね。トニー・レオンが帽子を目深に被って歩いて来る姿やフェイ・ウォンが踊っている姿の素晴らしさに感心して、晴々しい気持ちになりました。あんな世界もあるけれど、こんな世界もあるんだなって。

――普段はどんな映画をご覧になるんですか?

何でも幅広く観ますよ。アクションも、アート的なものも、ラブストーリーも、ヒューマンドラマも。最近感動したのは、「シティ・オブ・ゴッド」と「HERO」。あまりに桁外れの傑作なので、衝撃を受け、監督として久々に気合が入りまくりました。

――では、これから映画をご覧になる方にメッセージをお願いします。

とにかく気楽に観て、楽しんでいただきたいですね。時間も短いですし、料金も安くしてもらっていますし、前売り券には3人のいい男のポストカードもついてきますから(笑)。僕の今までの作品よりはとっつきやすいと思いますので、新しいアミューズメントとして楽しんでほしいです。僕の作品は男の子がよく観てくれるんですが、女の子にも是非観てほしいですね。

――ラブストーリー的要素もありますしね。

うん、胸キュンな感じだからね(笑)。

石井聰亙監督のサイト http://www.ISHIISOGO.com
(文・インタビュー渡邉ひかる)

 

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