シネマトゥデイ

 マイケル・マン監督独占インタビュー
『コラテラル』

取材・文:FLiXムービ−サイト

トム・クルーズが初の本格的悪役に挑戦したことで話題を呼んでいる『コラテラル』。メガフォンをとったのはアル・パチーノ、ロバート・デ・ニーロが火花を散らす『ヒート』やラッセル・クロウとアル・パチーノのノフィクション・ドラマ『インサイダー』を世に送り出したマイケル・マン監督。プロの男たちが繰り広げる濃密なドラマをスタイリッシュな映像で撮らせたら、彼に勝るものはないと賞賛されるマイケル・マン監督に、新作『コラテラル』について話を聞かせてもらった。

■夜を撮るための特別なデジタルカメラ?

Q:『コラテラル』では、ほぼ全編をデジタルで撮影されたそうですが、デジタルで撮ったことによる利点はどんなところにありましたか?

そうだね。スター・ウォーズもデジタル・エフェクトを使うためにデジタルで撮ることを採用していたね。この作品は夜の撮影がほとんどだから、この夜を撮るために特別なデジタル・カメラを開発したんだ。そのカメラを使うことで、手前の人物の顔も、明かりのない奥にいる人物の顔も、ちゃんと見える映像を作ることができた。そして絵画を描くように、映像をその場で処理ができた。例ば、18%赤を抑えようとかね。

Q:トム・クルーズの殺し屋ヴィンセントのキャスティングは、トム・クルーズ本人の希望だったのですか? それとも監督が希望されたのですか?

僕がトムに声をかけたんだ。でも最初、トムはビックリしていたよ。僕はトムに言ったのさ。「そろそろ君も悪役に挑戦する時期だよ。スティーヴ・マックィーン、アル・パチーノ、ロバート・デ・ニーロ。みんな悪役をやっているじゃないか」って。そしたらトム「OK!」って答えてくれたよ(笑)。

Q:トムと映画作りをしてみていかがでしたか

トムには演技をすることに集中してもらいたかった。だからそれ以外の部分は僕が決めるようにしたんだ。もちろんトムからもアイディアを出してもらうけど、彼は私ができないことをできるからね。別人になりきることができるんだ。それは僕にはできないことだ。だからお互い足りない部分を補いながら映画を作り上げていったんだよ。まさにいいパートナーシップをトムと組むことができた。いい結婚ができた感じだ(笑)。

■ヴィンセントは生身の人間

Q:ヴィンセントを血も涙もない冷血な、まるで感情がないロボットのような殺し屋として描いていたら、映画の雰囲気は、また違ったものになっていましたが、トムが演じたヴィンセントには生身の人間っぽさにあふれていました。

それこそ僕が描こうとしていたことなんだ。最も重要なことなんだよ。冷血な殺し屋の顔をしているけれど、その裏にある部分を垣間見えるようにしたかった。でもどうやってそれを観客に見せていくかが僕の課題だったんだ。その解決作が“今夜、彼は壊れていくぞ”ということだ。計算づくだったヴィンセントの行動が変わっていく。ダニエルを殺した後に後悔したりね。そこから彼の変化が始まるんだ。ヴィンセントという一人の人間が、彼の過去を含め、この晩に壊れていく、危機的な状況を描くことで、殺し屋という顔に隠された生身の部分を出そうとしたんだ。それぞれの人間に過去がある。今日、僕は君と会った。でも今ここにいる君というのは過去の君をすべて含んでいる。今日ここにいる君にすべてがある。ヴィンセントもマックス(トムと出会い、長い夜を過ごすことになるタクシー・ドライバー)も同じさ。そんな2人が出会い、物語は始まっていくのさ。

Q:そんなヴィンセントとマックスの関係はとても微妙なものですね。素性を知ったマックスを殺さず、ヴィンセントは彼とともに行動します。

ヴィンセントがマックスを殺さないのは、彼を必要としていたからなんだ。そして一緒に行動することになったマックスをなんとかコントロールしようと、いろいろやってみるんだ。でもマックスは全く聞いていない。そうするとヴィンセントはだんだんイライラしてくる。そしてマックスは時間が経つにつれて気づくんだ。「なんで俺を殺さないんだ」って。その疑問をマックスはヴィンセントにぶつける。この疑問の答えは、ぜひ観客の皆さんにも考えてもらいたいと思うね。そしてその答えというのはヴィンセントの最後のセリフに隠されているんだよ。ヴィンセントが、なぜマックスを必要としていたのか。その謎がこのセリフで解けるはずだ。

そして2人の関係というのはまるで兄弟のようなものだ。「あの女の子に電話しろよ」とマックスに言ってみたり、まるで長年つきあっている友達が言うような言葉をヴィンセントは口にしている。もちろんヴィンセントはそんな関係をマックスとの間に持っていない。そんな関係を持つことができたらという彼の願望の現れだったんだね。

■マックスの眼鏡はマイケル・マン監督の眼鏡がモデル

Q:ジェイミー・フォックスが演じたマックスですが、あるシーンで眼鏡をはずした時に、まるでヴィンセントのようになりましたね。

マックスはあのシーンで、“自分は死ぬ”と思っている。死ぬか殺されるか万が一の確率で成功するかもしれないと考えている。どう自分はふるまうべきか、そのモデルとなるのはヴィンセントしかいない。だからヴィンセントのまねをしたしゃべり方をするし、彼のセリフを引用したりするんだ。眼鏡をはずして、ヴィンセントになりきっていたんだ。その眼鏡なんだけど、これなんだよ。(そう言って自分がかけていた眼鏡をはずす監督)僕がかけていた眼鏡をはずして、「ジェイミー、この眼鏡どうだい?」と聞いたら「いいね。それでいこう」となってこの眼鏡を使うことにしたんだよ。

Q:そのマックスが運転するタクシーは、塗料の濃いオレンジに、微妙に青みがかったパールを加えたそうですが、このことでどのような効果を得ることができたのですか。

マックスのタクシーの色はリップスティックオレンジ(まるで口紅のようなオレンジ色)で、この色の上に透明なコートを塗っている。このコートに5%の青を混ぜているんだ。いろんな実験をしてこの数値にたどりついた。そしてこの色はときどき液体のように、なめらなかに見えるんだ。ロサンゼルスには2種類の街灯があるんだ。アプリコット色のものと、ブルーグレー色のもの。それぞれの街灯の明かりを受けとることで、車体の色も変化する。それを表現したかったんだ。ところで、よくイエローキャブって聞くだろう。でもイエローじゃないんだ、本当は。特にカリフォルニアでは全然違う色なのに、イエローキャブって言うんだよね(笑)。

■ロサンゼルスに生息するコヨーテ

Q:劇中に登場したコヨーテですが、これは監督の実体験に基づいているのですか? このコヨーテの登場シーンはとても印象的でした。

ロサンゼルスでは、コヨーテなんて普通のことなんだよね。ここには山もあるから鹿もでるんだよ。ライオンもね。夜中の2時にベビーシッターを送った時に僕は3匹のコヨーテと出会ったんだよ。彼らの目というのは、僕を見ていても僕を見ていなんだ。もっと僕の深いところを見ているような気がするんだ。コヨーテを見ると、内省するような気分になるんだ。ヴィンセントもコヨーテを見て、自分を見つめ直していたんだ。

■ 製作総指揮にフランク・ダラボン、チャック・ラッセル

Q:製作総指揮に名を連ねている、フランク・ダラボンと言えば『グリーンマイル』の監督で、チャック・ラッセルはあの『マスク』の監督ですが、この2人と撮影のことでなにか話しましたか?

私もよく製作総指揮をするけど、マーティン・スコセッシが監督なら僕から何も言うことはないね(笑)。だからマイケル・マンがやるなら言うことはないだろう(笑)。お互いのやり方を尊重しているから、特に彼らと話し合うことはなかったね。

Q:最後に映画の公開を楽しみにしている日本の皆さんに一言メッセージをお願いします

2人の男が、それぞれの過去を背負って出会う。12時間という凝縮された時間の中で、2人は全く違った人間になっていく“今夜、すべてが変わる”そんな映画だよ。ぜひ、見てほしいな。

このインタビューが、日本では一番最初のマスコミインタビューとなったマイケル・マン監督は、あますことなく、この映画について語り、眼鏡にまつわるエピソードや、なぜヴィンセントが素性を知ったマックスを殺さないのかの謎を解くヒントまで教えてくれた。一体2人に何が起きたのか。その答えを探しに、ぜひ劇場に足を運んでみよう。

 

 

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