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『海猫』森田監督インタビュー

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森田芳光監督インタビュー
『海猫』

取材・文:FLiXムービーサイト

谷村志穂の人気小説「海猫」が、『失楽園』『阿修羅のごとく』の森田芳光監督によって映画化された。夫と義弟との愛に揺れ動く主人公を軸に繰り広げられる究極の愛の物語を、森田監督がどのように料理したのか。撮影にまつわる苦労話やヒロイン・薫に伊東美咲を抜擢した理由などについて聞かせてもらった。

Q:『失楽園』以来の7年ぶりの恋愛映画ということですが、甘い青春恋愛映画ではなく、極限の愛を描いたわけですが、久々の恋愛映画の撮影はいかがでしたか。

愛するということは、どこか傷つく部分もあるわけじゃないですか。ただ甘いものではないですからね。それが大人の愛だと思うし、『海猫』はそこを表現したつもりです。

Q:今回伊東美咲さんを愛のヒロインへ抜擢した経緯とは?

小説の主人公の薫はロシアと日本人女性のハーフで、色が白くて背が高い。外見的な要素から伊東美咲をまず考えましたね。そして彼女は『模倣犯』に出演していたのですが、芝居の感性があると思った。将来彼女は僕の作品の主演になる器だと思いました。それでこの前の『阿修羅のごとく』を経て、『海猫』に至ったというわけです。

Q:これまでにない伊東美咲さんの体当たり演技が目をひきますが、監督としては伊東さんのどんな部分を引き出そうとしたのでしょうか。

“どんなカッコイイ女の人にもコンプレックスがある”、これが一番彼女から引き出したかったことですね。彼女が演じた薫は色が白くて、背が高くて、とても美しい。函館の町の中にあって、彼女はうらやましがられる存在のはず。でも現実はそうではなくて、いろんな意味で目立ってしまい、それがコンプレックスになっていた。まわりの人から孤立して、そこから逃げ出したかった。それで結婚によって逃避した。もちろん邦一に惹かれていた訳ですけど。その必然性を彼女の表情や話し方に出すことができればと思いましたね。今、都会で働いている女性の中にもあると思うんですよ。仕事を辞めて、みんなの知らないところへ行って結婚してしまいたい。どこかでのんびり陶芸でもやりたい、とかね。そんな現代女性の心情にだぶるような作品にしたかったですね。

Q:赤木兄弟には佐藤浩市さんと仲村トオルさんが扮していますが、この2人は監督がイメージしていた邦一と広次でしたか。

2人とも小説通りでしたね。邦一を、漁師の長男で荒々しくて“夫は強いんだ”という考えだけの男にはしたくなかった。どこかに弱さと悲しさをだしたかった。そんな部分を彼(佐藤浩市)はうまく表現してくれました。

Q:仲村トオルさんとは『悲しい色やねん』以来16年振りのお仕事でしたよね。

彼は16年前、『ビー・バップ・ハイスクール』の頃で人気の頂点にいました。人気が前面に出てしまい、何を考えているかわからないところもあったんですね。感性とか細かいところをわかっているのかな、というのがありました。でも今は細部まで神経使っているし、芝居を真面目にやっているな、って思いましたね。舞台もやっているし、海外の作品にも出演している。どんどんチャレンジすることで、いい大人に、いい役者に成長したと思いますね。ひたむきさを感じるし、男の色気も感じますね。

Q:ちなみに邦一と広次のどちらに監督ご自身は似ていると思いますか。

僕はこの2人よりも、たかし(薫の弟)に似ていますね。どこか間が抜けているところが自分にもあると思いますね(笑)。

Q:今回は谷村志穂さんの同名タイトルの人気小説が原作でしたね。

原作は何回も読みましたが、シナリオが出来てからは読まないようにしました。

なぜなら自分の映画として消化したかったからです。あと原作とは長さの関係もあって設定がいくつか違うんですね。ですから一度原作は忘れようと思いました。

Q:撮影を振り返って、印象に残っているシーンはありますか?

役者はコントールできたのですが、海猫には苦労しました。思い通りに動いてくれないから(笑)。フィルムもたくさん費やしました。特にクライマックスのシーンの海猫はもう大変でした。主人公達の心情に上手くシンクロする海猫が撮れなくて。あの映像が撮れた時はホントよかったです。あっ、でもこれが見どころというわけではないですよ(笑)。鳥類映画ではないので(笑)。

Q:クライマックスの雨の中の邦一との対決シーンはかなり緊迫感のある見せ場のシーンとなっていますが、撮影はどんな感じでしたか。

4日間で撮ったのですが、あの雨は“雨降らし”といって、人工的に降らしていました。でも晴れていると雨が映らないんですよ。だから曇ってくれないと困るわけです。夏の北海道で4日間曇りというのは奇跡的なこと。それがちゃんと曇ってくれて、恵まれていましたね。普通天気に恵まれるというのは晴れを指すのですが(笑)。逆に晴れて苦労したこともあって、それは昆布漁のシーン。波が荒くて、風が強くて、撮影ができない!“晴れているのに撮影できない”というのは初めての経験でしたね。自然との戦いでした。

Q:それでは最後に映画の公開を楽しみにしている読者の皆さんにメッセージをお願いします

『阿修羅のごとく』は年齢層が高すぎて、若い人がなかなか足を運ばなかった部分もあると思います。でも今回の『海猫』は、若い人が見てもかなり泣けるし、映像的にもおもしろいと思います。韓国のドラマに対抗して、我々も精一杯作りましたのよろしくお願いします。海猫がヒットしないと次回作もないので(笑)、ぜひ見て下さい(笑)!

『海猫』は11月13日、全国東映系にて公開。

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