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『空中庭園』小泉今日子 単独インタビュー

取材・文・写真:FLiXムービーサイト

『青い春』の豊田利晃監督が、角田光代の第3回婦人公論文芸賞受賞作を映画化した『空中庭園』。本作で主人公の絵里子にふんしたのは、『風花』以来4年ぶりの主演映画への復帰となる小泉今日子。彼女に映画に関するさまざまな話を聞いてみた。

■女性がかっこいい映画

Q:『風花』以来4年ぶりの主演映画になるのが、本作ですが……。

この映画の衣装を担当している宮本まさ江さんとは古くからおつきあいがありました。一緒にお酒を飲んでいて、ある日「女性の映画って少ないよね」という話になりました。「個性的な男優のおもしろい映画がたくさんあるのに、女性のかっこいい映画がないね」と。

いろいろなことを考えているうちに、豊田監督は? という話になって。豊田監督と宮本さんはずっと一緒にお仕事をされていました。でも、まさか豊田監督が女性の映画を撮るとは思っていなくて……。盲点でしたね(笑)。豊田監督と「空中庭園」という原作があり、わたし自身も家族の話をかっこよく撮れたらと思いました。すべてが運命的に結びついて、『空中庭園』を作ることになったんです。

Q:かっこいい家族、かっこいい女性の映画を作るということで始まり、実際に絵里子という女性を演じてみていかがでしたか?

絵里子は全然かっこよくないの。でも彼女が自分で抱えている問題に正面から向き合う姿はかっこいいと思うなぁ。どんな役を演じるにせよ、自分のフィルターをとおして表現しますよね。自分の中でほんの小さな絵里子との共通点を見つけ、それを増幅させて演じる。そうすると、絵里子が自分と似ているのか似てないのかということは分からなくなっちゃいますね(笑)。

■母親になったことはないから……

Q:京橋家のモットーは「何ごともつつみかくさず」でしたが、このモットーに共感できましたか?

モットーがあるのに母親の絵里子が一番秘密を持っている。でも「何ごともつつみかくさず」ということを、母親も父親も目指していると思いますね。いい家族でありたい、いい母親でありたい、いい父親でありたいと意識的に思っているのではないでしょうか。もちろんわたしは母親になったことはないのでわからないのですが。外に向けて「我が家はとてもいい家庭なのよ」とアピールするために、演じている人は多いと思います。だから京橋家のような家族はいるかもしれませんね。

Q:クライマックスで絵里子が叫ぶシーンを演じていた時、どんな心境でしたか?

わたしは自分の演技について監督に尋ねるということはあまりしません。演技が違っていれば、監督から声がかかるだろうし、監督と自分の間にはそんな信頼関係があると思います。だから疑問点があれば、台本を読んだ時点で解決しておきたいです。現場には持ちこまないようにと。でもあのシーン(で絵里子が叫ぶシーン)を撮る前については一発勝負だったので、監督に聞きました。わたし以外――カメラとかは何度もテストができたけど、わたしはそうはいかなった。多分あの声は1回しか出せないと思いますしね。台本には慟哭(どうこく)と書かれていたけど、わたしは「慟哭(どうこく)?」という気持ちがあって……。だから監督に聞きました。そうしたら監督が「産声でしょう」と答えてくれて。わたしもあのシーンは「ある種のエネルギーの誕生」だと思っていました。だから監督からその一言を聞いてすっきりして、演技に集中することができました(笑)。

Q:絵里子は大楠道代さんが演じた母親との間に確執があるという設定でした。劇中、大楠さんと言葉でぶつかりあうシーンを演じてみて、いかがでしたか?

大楠さんは女優として、人間として、そして女性としても尊敬できる方でした。心の奥深いところで信頼できる方だったので、緊張感のあるシーンを撮ったにも関わらず、不思議な集中力が生まれました。集中すると周りが見えなくなると思いますが、今回はそうではありませんでした。回りの状況をすべて把握しつつも、役に集中している。ある種のトランス状態ですかね(笑)。お互いにそんな状態だったと思いますよ。不思議な、サイキックな体験でした。

多分、恋人とけんかをしているときと一緒です。すごくまじめに喧嘩をしているのに、回りの状況が見えてしまっているというのかな(笑)。

■いまは本よりもインターネット

Q:豊田監督は現場でどんな演出をされましたか?

監督は本番直前に俳優を呼んで「ここのセリフをこれに変えてみて」とよく言いました。でもそのセリフを受ける俳優はそのことを知らない。カメラが回っているのに、全然違うセリフを言われて、頭は混乱している。でもその言葉にあわせて演じることで、心の揺れがストレートに出る。監督はその揺れをカメラに収めたくて、セリフを直前で変えたのでしょうね。わたしも何度も「えっ!?」って思うことがありましたが、逆もありました。本番直前に監督から指示を受けて、広田くんの顔を叩くことになったんです。でも実際には微妙に芝居のタイミングがずれてしまい叩くことはできませんでしたが(笑)。

Q:ところでインターネットは利用されますか?

よくショッピングをしています。本とかCDとかミネラルウォーターとか……。家にいるとしょっちゅう宅配便の人が来て、みんな顔見知りです(笑)。調べ物をする時によく使っています。演じる役やロケで行く場所などについて調べていますよ。1冊の本を読むより、インターネットですかね。

Q:それでは最後に読者の皆さんへメッセージをお願いします。

わたしと近い年齢であれば、絵里子に共感して観ることができると思います。わたしより上だったら大楠さんが演じたさと子の視点で、わたしより下だったら鈴木杏ちゃんが演じたマナの目線で観ることができます。ですから今だけでなく、時間が経ってから、もう一度観て欲しいと思いますね。

もしこの映画が気に入らなかったら、とことん嫌いになってください。でも、もし好きになってくれたら、徹底的に愛して欲しいですね(笑)。

役に対するスタンスから撮影現場におけるエピソードまであますことなく語ってくれた小泉今日子。言葉の一つ一つには彼女の女優としてのキャリアが感じられたが、美しい肌と笑顔には年齢を感じさせない輝きがあった。日本を代表する女優として輝き続ける彼女のさらなる活躍を期待したい。

『空中庭園』は10月8日、ユーロスペース、ジャック&ベティほかにて全国順次公開。

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