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『真夜中のピアニスト』ロマン・デュリス単独インタビュー

取材・文・写真:FLiXムービーサイト

『ルパン』『真夜中のピアニスト』と、出演作が目白押し。フランスで最も人気のある俳優ロマン・デュリスが来日した。東京に来たら、必ず六本木のクラブに繰り出していくハリウッドスターと違い、新宿のゴールデン街が大好きだという。次回作の準備のため、頭をすっかり丸坊主にした彼が、映画について、そして、演じることへの情熱をたっぷりと語ってくれた。

■マッチョで男っぽく肉体派

Q:『真夜中のピアニスト』の原点である『マッド・フィンガーズ』はハーヴェイ・カイテルが主演でしたが、演じる上で、ハーヴェイのことは意識しましたか?

映画の冒頭、マッチョで男っぽく肉体派であるトムは『マッド・フィンガーズ』でのハーヴェイ・カイテルのイメージにピッタリ合うので、そのイメージを参考に役作りをしました。男の世界で生きる暴力的な不動産業者の一面は、今回一番一生懸命役作りをした部分だと思います。その後、トムの前に、ピアノが現れて、女性的な感性がそれによってもたらされるという部分では自分自身そういうところがあるので難しくなく演じることができました。

Q:暴力、ピアノを弾く静寂という対照的な事がらの対比が描かれていましたが、あなたは喧噪と静寂ではどちらが好みですか?

わたし自身は静寂というものを必要としていますが、大都市に住んでいるので喧噪は自分の一部でもあります。ただ、だんだんと年齢が上になるにつれて、バカンスに行くだけではなく、毎日の生活の中でも自分の中で静けさを持つことは大切だなと思うようになってきました。役についてですが、コントラストがあるということは役作りにおいて非常に面白いんです。その両面を描くことができるので、豊かな経験ができました。

■芸術一家

Q:あなたの家庭は、芸術一家だそうですが、ご両親やお姉さんの影響というのは俳優という芸術的な仕事に対してどんな影響を与えてますか?

わたしの家族は、本当に芸術的な一家だと思います。父は建築家で母は元バレリーナで今はカラーリスト。兄はデザイナーで姉はピアニスト。そういう意味で、内面的な影響は受けているかもしれません。よく監督にわたしは肉体的で、フィジカルな役者と呼ばれるんです。自分はあまり意識したことないけど、それはバレリーナだった母の影響を受けていて、体を使って何かを表現する力が内面にあるのかもしれませんね。

■本当は好きじゃなかった

Q:『ル・ディボース パリに恋して』でも歌いながらピアノを弾いていましたが、今回はかなり高度な演奏でしたね。ピアノは元々弾けたんですか?

『ル・ディボース パリに恋して』のときはまねだけで練習はしなかったけど、今回の撮影は実際に弾いていることを映すという設定だったから、曲全体は弾けないけど一部は弾けるように、かなり特訓しました。ところで、『ル・ディボース パリに恋して』はどうでしたか?

Q:うーん……。

僕は好きじゃないんだけど(笑)。あのときの僕は、全然いい気分じゃなかった。ずっと、自分自身でいられなかったんです。スミマセン(日本語)。

Q:あの映画は、ハリウッドのラブコメディーですが、ヨーロッパの人は、ハリウッドに対して否定的な人もいますね。実際ハリウッド映画に出演してみて、違和感を覚えましたか?

ジェームズ・アイヴォリー監督は、ヨーロッパに拠点を置いて作家映画を作っている人なので、自分としてはハリウッド映画に出演したとは思っていません。僕にとってのハリウッド映画は、大型予算のアクション映画。だた、そういう映画を作れるのは誰かといえばハリウッドしかない。ただ自分自身はそういう映画には出たいとは思いません。ヨーロッパの人がハリウッド映画を批判するのは、うらやましがっているだけじゃないかな(笑)?

■今日の服装は仕事用

Q:今回のあなたは今までと全く違ったキャラクターで、変幻自在な印象を受けますが、どうやったらそこまで自由にいろいろな役柄を演じられるのでしょうか?

わたしは俳優という仕事を始めて11年ですが、俳優を続けるうちに変容していくことが出来るようになってきて、どんどん俳優という活動がおもしろく感じられるようになりました。そういった変幻自在な変化は好奇心を持つこと、観察すること、役の持つ雰囲気の世界に自分を浸からせるようにしているからだと思います。

Q:あなたは、とてもスタイリッシュですが、普段からこんなにおしゃれなんですか?

髪型は次の映画の役作りのためだけど、今日みたいな服装のスタイルは計算しているわけではなくて自然に変化しているんです。ただ、このピカピカのジャケットを毎日パリで来ているかというと、そういうわけではなく、これは仕事用の服装です(笑)。

Q:フランスでは一番女性にモテるそうですが、今回の映画では言葉の通じない女性との心のふれ合いが描かれていましたね。異国の女性との恋はどうですか?

僕にとって国籍は関係ないですよ。でも一緒に生活するのに何を言っているか分からないのはまずいですよね(笑)。それに文化が違う人と一生をともにするのはやっぱり、少し大変かな……。

■人間性を帯びた主人公

Q:トムの緊張感がこちらにもすごく伝わってきました。そういう感情の表現で気をつけた点はありますか?

彼は、ずっと神経質でいらだっている感じで描かれているけど、それは彼が立ち止まると、自分には、なにも出来ないということに気付いてしまうから。ただ、自閉症的につっぱしるような雰囲気を作るようにしました。呼吸をしないで、海に潜りつづけるような感じです。撮影中の2か月間はそういった状態を保つようにしていました。たばこも病的にイライラしたように吸うのは、彼の性格や心のあり方と合うので、そのような演技を持続するように努力しました。

Q:本作が『マッド・フィンガーズ』よりも魅力的になった部分を教えて下さい。

リメイクをしたものが必ずしも前の作品よりも良くなるとは限りませんよね。今回の場合は、わたしの意見ですが、『マッド・フィンガーズ』に比べてあの映画の欠点がなくなって、トムの回りのあるテーマを見せた、いい作りになっていると感じました。例えば映画の中でロシア人の1人を復讐するシーンにしても、彼の決断によって、人間性を帯びつつも、復讐も果たすという、いろいろなテーマをきちっと描いているところがいいと思うんです。今回の作品はただのリメイクではなくて、監督がインスピレーションを得ただけで監督独自の映画になっている。そこがこの映画の魅力だと思っています。

ひとつの質問に対して、一字一句ゆっくりと考えながら丁寧に答えてくれたロマン・デュリス。その真摯な態度から、俳優を続けてきた4年間の間に、彼の中で大きく育っている演技への情熱を深く感じた。撮影中、トム役を演じながら、あまりに多くの量のタバコを吸いすぎたせいで、いつのまにかタバコを止めてしまったというロマン。今まで彼が演じたイメージをすべて一掃する、ストイックで、緊張感あふれる演技を見せた『真夜中のピアニスト』。本作で、演技派として高く評価されたロマン・デュリスから、ますます目が離せない。

『真夜中のピアニスト』は10月8日より渋谷アミューズCQNにて公開中。

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