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『TAKESHIS'』 北野武 単独インタビュー

取材・文・写真:FLiXムービーサイト

第62回ヴィネチア国際映画祭に正式出品されたことでも話題になった『TAKESHIS'』。北野監督の内面を描いたシリアスな作品ともいわれているが純粋にエンターテインメントとしても楽しい。そんな『TAKESHIS'』で2役をこなし監督、脚本、編集も務めた北野武監督に話を聞いた。

■ヴェネチアでの反応

Q:ヴェネチアでは、前告知なしに『TAKESHIS'』が突然上映されたんですが一番印象的だったことは?

ヴェネチアはね。マスコミにも上映当日まで一切教えないというサプライズの扱いで、そこで記念として、ヴェネチアン・グラスの壺みたいのもらったんだけど。映画いっぱい見てる人は新しいって思うかも知れないけど、普段ほとんど映画を観てない人にとっては今回の映画はちょっときついんじゃないかって思ってたのね。それで、編集が終わって何か月かたって、自分もヴェネチアの会場で久々に観たんだけど、まあ疲れ果てたね。会場の反応ってのは、終わって、会場がスタンディングオベーションするんだけど、おれが見たとき、疲れきって下向いて拍手している観客が多くみられてさ、「あ~あ大変だね、こりゃっ」て思ったもん(笑)。でもそういうふうになるなとは思ってたから。ああ、思ったとおりだって。

■編集はプラモデルの組み立て

Q:編集のほうはどのように進んでいきましたか?

編集はね、もうプラモデルみたいに、組立て作業だから。デパート行くと、プラモデル用のキットを売ってるわけでしょ。でもおいらは、元のキットから作らなきゃいけないから。それで、番号つけて箱に入れて、そっから売りもんだから。だから編集ってのは、1人で全部やんなきゃいけないわけなんだからものすごく面白いんだ。この作品では、観てる人の頭をconfuse(混乱)させるために、常識的な時間軸を壊したかったんだよね。それが、いろんな感覚を奪うことになるというか……遊園地なんか行くと、ジェットコースターや、お化け屋敷がそうで。でも映画だと、サスペンスみたいに視覚的にドキッさせることはあっても、それは大体映画を観てる人には慣れてることなんだよ。だから今度の映画は、まず感覚で観てもらって、分析しようと思ったら最低2回ぐらい観て、「ここで言ってるセリフがここで現れた」とかって観てほしい。ストーリーを追っかけてるだけだと、流れてっちゃって、気がつかないところがたくさんあると思うんだよね。

■夢の話

Q:映画の中だけではなく、過去の北野作品に登場していたキャラクターもでてきて、遠い記憶もひっぱりだされるような感覚でしたね。例えば、寺島進さんが演じた『みんな~やってるか!』の血まみれヤクザとか……。

うん。「やってた、やってた~」ってやつね。これは、あの映画のあのシーンだとか、自分の過去作品のシーンを思い出させる場面をいろいろ見つけられるだろうね。

Q:今回は出演者が一人何役も演じられていますよね。その中でも常連の俳優さんたちが、"ビートたけし"のいる世界とは対照的に、"北野武"の世界ではかなり、個性的だったんですが

あれはね、おれの場合、夢見るとね、会った人とか、そのままの姿で出てこないの。たとえば、うちのマネージャーとか、運転手なんかはヤクザになって出てくるんだよ。それで、おれのこと殴る蹴るするんだよ。同じ人が、違う役出てくるっていうのは映画ですごくやってみたかったこと。映画の最初のころにおれがマネージャーに向かって「お前運転手になりゃいいじゃねえか」っていう、セリフがあって、のちのち、そのマネージャーが運転手になって出てくるっていう。そのためには、その役者は同じ人じゃなきゃいけない。日本では、顔みりゃ同じ役者だとかわかるんだけど、外国にもってったときに、マネージャー役の男が運転手になってるのとか、気がつくかなって……。あっちの人にすれば、日本人はみんな顔似てるんで。だから、おれの映画ファンは、たとえば大杉さんはおれの作品の常連として知ってるから、2役やってることが分かって面白かったって言ってくれるんだよね。

■軍団のヒップホップ・ダンスの先生

Q:坊主頭の俳優さんは、常連の多い北野映画ではニューフェイスでしたね。

TOSHIさんね。ヒップホップのダンサーではけっこう有名な人。ヒップホップの先生もやってるんだよ。

Q:そんな先生が、監督にガンガン殴られてましたが(笑)。

あれはね、うちの軍団の若いののヒップホップ・ダンスの先生でもあるの。毎週日曜日、あの人が3時間ぐらいやるの、おれんちの稽古場で。それがね、苦痛でね。どうやって逃げようかってみんな考えてて、風邪ひいたとか、足が痛いとか言ってみんな帰っちゃったりすんだけど。だってあんなの出来ないでしょ、くねくねするのなんて、おれは、いっつも首クネクネさせてるけど、これ、意識してやってないからね。1、2、3、4って、カウントにあわせてこれはできないからね。

■ヤクザの出演希望者

Q:劇中のエピソードに、ヤクザの息子がオーディションを受けに来るシーンがありましたが、あれは実際にあった話ですか?

いや、やくざの子どもは若っていうんだけど、若のオーディションに付き合ったことはないなあ(笑)。

Q:監督の映画に出たいって言うヤクザの方とかいらっしゃらないんですか?

ヤクザにもおれのファンの人はいるよ。でも、ヤクザの役なら得意だからって言われても、本物に来られても困っちゃう(笑)。 それに、本物はヤクザの役はやれないね。だって本物だから。映画は作り物だし。本物らしく似せてやってるだけであって、本物が本物のマネはできないわけよ。だから、ビートたけしは、ビートたけしのものまねはできないんだよ。だから、おれがなにやるかっていったら、松村のまねはできるんだよ。「なんだこのやろうダンカン!」って(笑)。

■美輪さんは蛾(ガ)

Q:カットをしたくなかったけど、してしまったシーンはありましたか?

昔、それで怒られたことがある。セット作って待っててくれたんだけど、カメラのぞいて、「こんなのいらない」っつって帰っちゃったことがある。それで、気まずい雰囲気になったこともあったね。この映画でいえば、踊りのシーンはだいぶ削ったね。美輪さんの歌のシーンで蛾の幼虫を運んでるシーンがあったでしょ?あれ、ほんとはちゃんと美輪さんが歌ってるとこだけを撮るつもりでいたんだけど、あれは、イモムシを片付けてるところを撮っちゃおうって思いついて撮影したのね。で、それを美輪さんの歌にかぶせたんだけど、美輪さんはまだ自分が蛾になってるって気付いてないから、申し訳ないことをしちゃった(笑)。「よいとまけの唄」のシーンで、どっかん、どっかんやられてる中にいるのは美輪さんなんだけどなあ……。

Q:美輪さんが中に入っているって設定だったんですか?

そうだよ。あれから孵化(ふか)して、蛾(が)になって飛んでいったのが美輪さんなんだから。

Q:今回の映画で、ひと区切りと聞きましたが、どういうことでしょう? もう監督や、大杉さん、寺島さんのヤクザ姿をみることはなくなってしまうんでしょうか?

ん~。まあ、都はるみ、みたいに引退っつって、どうせまた同じことやるよ。いまやってみたいことは、巨匠って言われた人たちの撮り方を参考にしながら戦後の日本とかを撮ってみたいね。足立区に住む、悪がきの話を作りたい。『Dolls ドールズ』とかああいうのを撮るとね、「どうしてヤクザ映画撮らないんですか?」って言われてね、で、ヤクザ映画撮ったら「どうして、いつまでも暴力ばかり撮るんだ!」って言われて、困っちゃうよね。もう、やることねえじゃねーか!(笑)ってね。

笑顔でときおり、ギャグをまじえながらもいろいろと語ってくれた北野監督。その話し方もサービス精神にあふれ、その場にいる人の心を知らないうちに惹きつけてしまう不思議な魅力のある人だった。この映画で区切りをつけるというような話を聞いていたが、まだまだ撮りたい題材がたくさんあると語ってくれ、ひとまず安心だった。これからも、ひとつの型にはまらない、いろいろな北野作品が観られることだろう。

『TAKESHIS'』 は11月5日より丸の内プラゼールほかにて公開。

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