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『THE 有頂天ホテル』三谷幸喜 単独インタビュー

取材・文・写真:FLiXムービーサイト

数々の名舞台を作り出しドラマや映画、そしてエッセイもこなすマルチな才能の持ち主、三谷幸喜。去年、三谷幸喜が脚本を担当した大河ドラマ「新選組!!」は、視聴者から続編希望の手紙が殺到するほどの人気を集めた。そんな売れっ子演出家の待望の監督作品第三作、『THE 有頂天ホテル』がお正月にいよいよ公開される。役所広司、香取慎吾、佐藤浩市、松たか子など豪華キャストが勢ぞろいした本作について、存分に語ってもらった。

■全員が希望どおり! 完璧なキャスティング

Q:三谷監督のスタイルは、あらかじめ役者さんを決めてから、脚本にあてこんでいくというスタイルをとられるそうですが、今回もそのスタイルだったのですか?

今回はちょっと違って、最初にプロットがあってまずそこから全体の構成を作りました。もともと群像劇をやりたかったんですが、群像劇っていうといろんな登場人物が出てきて、いろんなエピソードがあって、でも結局それが重なることなく終わっちゃうというパターンが多い。でもそうじゃなくて最初はバラバラなんだけどそれが最終的に一つにまとまって、できればラストシーンには全員が集まってるみたいな、そんな映画を作りたいというのがありました。だから今回はまず本を書いて、そこからキャスティングだったんです。

Q:キャスティングは思い通りに決まりましたか?

そうですね。最初イメージしたキャストを書いたものをプロデューサーの方に渡すんですが、100%思いどおりにいくことなんてないんです。でも、今回は皆さん出てくださることになって、僕が一番びっくりしています。

■『THE 有頂天ホテル』こだわりのワンシーンワンカット

Q:ワンシーンワンカットにこだわったことで大変だったことはありますか?

今回はほとんどワンシーンワンカットだったんだけど、これは細かくカットを割って「24 -TWENTY FOUR-」みたいにスピーディーな作品を作ることが僕にはできないから。じゃあ僕にできること、僕が他の人よりもうまくできることはなんだろうって考えたときに、ワンシーンワンカットに落ち着いたんです。僕は20年舞台をやってきましたけど、舞台っていうのは究極のワンシーンワンカットだと思うんです。暗転とか挟まない場合は、ずっとワンカットなわけじゃないですか。そういう環境の中で仕事をしてきたので、僕にとってはワンシーンワンカットのほうが作りやすいし楽なんですよね。

でも、こだわった点があるとすれば、ただカメラを据え置きにして会話のみの芝居はつまらないから、俳優さんもできるだけ動いてもらったし、カメラもレールや、ステディカムを使ってかなり動いてもらいました。だから現場は結構大変だったみたいですね。ただ僕はあまり現場を見なくてモニターを見ているから、どれだけ現場がすごいことになってるか全然分からないんです。カメラが動くってことは録音部もみんなが動くわけですからね。

照明さんも含めて全員が段取りを覚えて、きっかけを覚えて……だから5分ぐらいの長回しなんてほんとに大変なんだけど、一番楽なのは監督なんですよね。僕は、離れた所で見てるだけなんで(笑)。だから僕自身はとっても楽しかったです。俳優さんは大変そうでした。

Q:長回しのシーンは舞台俳優さんのほうが、得意でしたか?

どうだろうな。でも生瀬さんなんかは、5分間の長回しの一番最後でとちることが何度もあったし。あ、「あんまりそういうことを言うな」って生瀬さんに言われてるんですけどね。僕がその話を新聞に書いちゃったんで、いろんな人から「お前はもうだめだ」って言われたらしいんですよ(笑)。怒ってましたねえ。また、言っちゃいましたけどね。だから逆に舞台の人が得意かっていうとそうでもないんですよ。舞台みたいに一か月稽古したら出来るかもしれないけど、稽古期間は映画の場合ないですから。朝来て段取り決めて、それでやるから皆と一緒なんです。ほんとにそこは集中力で乗り切るしかないんですよね。

■演出家三谷幸喜、西田敏行のお尻に負ける?

Q:コメディ映画の場合、舞台と違って観客の反応が見えない分とても難しいと思いますが、どんな風に笑わせる場面を撮っていくんでしょうか?

まだまだ3本目なのでこれから勉強しなければいけないと思うんですが、正直とても難しいです。モニターに映っているものが、数か月後にはそれがスクリーンに映像として映し出される。だから僕はスクリーンの向こう側でそれを観ているお客さんを想定して、モニターを見なきゃいけないんです。だけど、どうしても自分の中に入っちゃうから、そこまで冷静に見られないんですよね。

特にワンシーンワンカットだと編集がきかないので、後でどうにかなるもんじゃない。だから、現場で全部作らなくちゃいけない。ここで笑いの間を計らなければいけないのであって、イメージしていくのはホントに難しいですね。

たとえば、お客さんがワーッて笑っちゃったために大事なセリフが聞こえなかったりすることもあるわけで、監督はそこまで考えて撮らなきゃいけないんです。ビリー・ワイルダー監督の面白いエピソードがあるんですが、『お熱いのがお好き』のすごく面白いシーンの後にジャック・レモンがマラカスを振るシーンで、スタッフが「あれだけ面白いセリフのあとに、マラカスなんて振らせる必要ないじゃないか」って言ったら、監督が「いや、あれは笑いがおさまるのを待ってる間なんだ」って言ったそうなんです。巨匠っていわれる人はそこまで計算しているんですね。でも、なかなかそこまではいけないですよねえ。

一番悔しいのはね、試写で一番盛り上がるのが西田さんがお尻出したときなんですよ。結局それなんだ、って。これだけ苦労して作ったのに、西田さんのオケツに負けてしまったって言うのがとても悔しいです。

Q:一番気に入ってるセリフはありますか?

僕が一番大好きなセリフがあって正直観るたびに笑っちゃうのが、これも西田さんなんですけど、西田さんが記者会見場で記者に、「だまれ!……大人になれよ」って言うせりふがあるんです。ホンットにおかしいんですよ。ただ、またまた悔しいことにそれは台本にはないセリフで、あの場で西田さんが突然言ったセリフなんです。だから正直複雑なんですが……でも大好きです。

Q:アドリブはけっこうあったんですか?

基本はないです。やはりワンシーンワンカットだとすごい緊張感の中やるんで、突然本番で違うセリフ言ったら回りが困ってリアクションできなくなっちゃうからやらないんです。でも、西田さんだけは……自由にやってもらいました。

■香取慎吾は、追いつめられるとなんでもできる!?

Q:香取慎吾さんの弾き語りソングがとても印象的でしたが、香取さんにギターを弾かせようというアイデアはどこからきたんですか?

本人はギターをやったことないって言ってたけど、「新選組!」のときに、現場に遊びに行くと、よく控え室で香取さんと、土方役の山本君がジョイントでギター弾いてたんですよ。僕それ見ていて、「彼はできる!」と思って書いちゃったんですけどね。後になって、できないって言ってましたけど、彼は追いつめられると何でもできちゃうタイプなんで、結果的にはちゃんとできてましたね。

Q:2時間という限られた時間の中で、泣く泣くカットしたシーンはありませんでしたか?

佐藤浩市さんと篠原さんが語り合うシーンがあって、それがもったいなかったですね。でもほかの映画に比べるとカットしたシーンはかなり少なかったかな。わりと計算どおりにいった気がしますね。ただ2時間の映画のつもりで作ったら結局2時間15分になったんですよ。でも最初のシーンで時計が10時を指してたんです。これカウントダウンまでの映画なんで2時間だと大晦日を過ぎちゃうんですよ。で、これはやばいってなって、苦肉の策で最初の10時の時計をCGを使って9時50分にしました。ちょっとお金がかかっちゃいましたね。

Q:『THE 有頂天ホテル』を舞台化する予定はありませんか?

どうかな、でもこの映画って僕の舞台をそのまま映画に持ってった感じはあるんですけど、それをじゃあ今度はそのまま舞台に持っていけるかというとこれはやっぱり映画じゃなきゃ難しいんですよね。だからもしやるとしたら連続ドラマですね。毎回違うお客さんがやってきて……みたいな。でも、もうセット壊しちゃったからね……(笑)。

Q:『さまざまなことに挑戦している三谷監督ですが、次なる挑戦はなんでしょうか?

来年は念願の歌舞伎を春にやるので今はそれに集中してます。あれだけいい俳優がそろった劇団ってないからね。とても幸せです。

トレードマークのスーツ姿で現れた三谷監督は、ひとつひとつの質問に丁寧に答えてくれる姿がとても印象的だった。演劇の話や、好きな監督の話になると途端に少年のように目を輝かせて話し出して、監督の、映画や舞台を愛する気持ちが熱く伝わってきた。公開を控えて不安でしょうがない様子の三谷監督に、その場にいたスタッフが「面白かったですよ」と声をかけると「あ~もう、もっと言ってください!」と頼んでしまうおちゃめな一面もチラリと見えた。

『THE 有頂天ホテル』は来年1月14日より全国東宝洋画系にて公開。

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