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永作博美
『好きだ、』
『好きだ、』永作博美単独インタビュー

取材・文:鴇田崇 写真:田中紀子

前作『tokyo.sora』で高い評価を得た石川寛監督の最新作『好きだ、』が、いよいよ公開される。互いに惹かれ合いながらも一歩前に踏み出せないまま、17年という長い歳月を経て再会を果たす2人の男女。彼らの織りなす純粋な愛の行方を詩情豊かな映像で紡ぎ上げた石川監督が、昨年のニュー・モントリオール映画祭で最優秀監督賞を受賞したことでも話題の一本だ。そんな本作で17年後のヒロインを演じた永作博美にさまざまな話を聞くことができた。

■タイトルの"、"がポイント

Q:今回17年後のユウ役を演じることを決めた、最大の理由はなんでしょうか?

たぶんタイトルですね(笑)。惹かれますよね、こんなに直球なセリフを久々に見たなって思って。よく知っている言葉だけど、とても力強く見えてしまったんですよね。なんだろうこのエネルギーはって。最初の時点では脚本があったんですけど、やっぱり"、"がすごく多かったんですよ(笑)。

Q:確かにとても変わったタイトルですよね。

撮影後、石川監督や皆さんとお話する機会が増えてきた時に、『やっぱり"、"がなんだかいい』って話をしましたね。この"、"には、"好きだ"って言えた後に、そこから続く物語があるんだなって。その先は映画を観たそれぞれの方が、この"、"の後のストーリーを作っていくんだなって思ったら、うれしくなりますね。

Q:映画は17年前と17年後の2部構成的な展開ですが、17年分の説明はあったんですか?

特にないんです(笑)。17年前の2人の映像を石川監督に見せていただきました。西島さんにも西島さん用のVTRがあったんです。脚本にもとても雰囲気があるなぁって思いましたが、石川監督には『読んでもいいけど覚えないでください』って言われて(笑)。そういう演出の仕方も面白いと思いましたね。

■石川監督の独特な演出にビックリ!

Q:その石川監督はセリフを用意しないなど独特な演出法を取られますが、通常の作品と比べてどうですか?

あまりにも差がありすぎて、最初はいろいろ戸惑いました。いつもならセリフを覚えて最終地点に向かっていくんですけど、まったく組み立てられないので。この差はすごく大きかったですね。どっちが好きかってよく聞かれますけど、どっちがいいとか言い切れないのが不思議。あんなに苦労したけど苦労した分、愛着が生まれてますからね。どっちも楽しいです。

Q:相手役の西島秀俊さんとは、演じるうえでの相談はされましたか?

実は撮影に入るまで、西島さんとは話をさせてもらえなかったんです。それまでに大事なことを話されては大変だって監督が思ってたらしくて(笑)。本当に初対面の状態で、17年後に初めて会うシーンから撮影が始まったんです。カメラが回った瞬間、それがふたりが交わす最初の言葉でなかったらもったいないと。私自身も、気がつけばリアルさを求めようとしていたかもしれませんね。何も決まってない状態っていうのは何かを決めたくなるものですけど、始める前に最初に何かを話してしまうと何かが決まってしまうじゃないですか。だから何も決めずにそのシチュエーションに入ることが重要だったんです。

Q:ぶっつけ本番みたいな状態ですね。間の取り方とかも苦労されたのでは?

計算する余裕はなかったですね。必死に何を話すか考えていたので。2人には思い出がないところで思い出を話さなければいけなかったりするじゃないですか。体験していない事実を話すことが一番怖い。たわいない話はどうにか話していられるんですけど、思い出話をするのが怖いんです。だけど、それを話さなければ終らないシーンもあったので、とっても勇気が必要とされましたね。

■ユウは自分であって自分でない存在

Q:ところで石川監督には映画同様のエピソードがあったそうですが、永作さんご自身はどうですか?

みなさん持っているんじゃないですかね(笑)。今なら青春の忘れ物なんて面白く振り返ることもできますけど、昔は本気で悩んで言えなくって本気でもんもんとしていたことってあると思うから。絶対にみんなにもあると思います。

Q:そんな永作さんご自身は、高校時代を振り返ったりしますか?

私はないですね(笑)。それほど高校時代にすてきな印象が残っていないので。もちろんあの時は楽しく過ごしていましたけど、今の方がもっと楽しいと思うので、そんなには思い出すことはないです。ただ、懐かしいなぁと感じるぐらいですかね。

Q:演じられたユウとご自身を比較してみていかがですか?

「ユウの中に私が半分以上入っているんですよね。似てないとは思うんですけど、私が作り上げた34歳のユウってことになると、似ていないとも言い切れない。もっとリアルに言っちゃうと、全部自分じゃないかって気もするんですよね。自分の中から絞り上げて作り上げたキャラクターってことを考えると、100%ユウで100%ユウじゃないっていうか」

■2人の人生を一緒に体感してほしい!

Q:もし17年前の2人に直接会えるとしたら、17年後の立場から何かアドバイスをしてあげますか?

えー、言えないですね(笑)。なんか言っちゃいけない気がする。変えちゃいけない気がするんです。この2人の人生を(笑)。んーたとえば、17年前の時代に私がユウではなく違う人間として存在していたとしていたら、友達としてなにかは話したかもしれないですね。その人の受け持った運命を壊したくないんですよね。そのままの方がいい。

Q:意味深なラストシーンも、2人を応援したくなる気持ちにさせられますよね。

いろいろ結論付けているシーンとかいろんなパターンがある中で、石川監督はあのシーンを選んだんです。実は、違うバージョンの作品がいくつも作れるのではないかっていうぐらい膨大な量を撮っているんです。

Q:最後になりますが、これから『好きだ、』をご覧になる方へメッセージをお願いいたします。

「自宅でネット検索をしているとのと同じぐらい気楽に見られる作品ですので、ぜひ観に行ってほしいです。そして2人の人生をぜひ体感してみてください。こんなに近くで人の人生を見られることもなかなかないですし(笑)。一緒にドキドキしていただけたら最高にうれしいですね」

本作の繊細な映像美のように透明感のあるたたずまいが印象的な永作さん。質問のひとつひとつに言葉を慎重に選びながら受け答えする彼女の真摯(しんし)な姿勢からは、適切なセリフを自ら考えて口にしなければならなかった本作のユウを間近で見ているような気にさせられた。過酷な撮影の苦労をまったく感じさせない、自然でリアルな演技も要注目。「女優としていい経験をさせていただいた」と語る永作さんの今後の活躍が楽しみだ。

『好きだ、』は2月25日より、アミューズCQN ほかにて公開。

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