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ヴィゴ・モーテンセン
『ヒストリー・オブ・バイオレンス』
『ヒストリー・オブ・バイオレンス』ヴィゴ・モーテンセン単独インタビュー

取材・文・写真:FLIXムービーサイト

過激な暴力描写と、セックスシーンで愛と暴力の究極の対立を描いた『ヒストリー・オブ・バイオレンス』。過去を背負った男トム・ストールを熱演したヴィゴ・モーテンセンが、プロモーションのため来日した。『ロード・オブ・ザ・リング』のアラゴルン役で一躍世界中から注目を浴びた彼が、まったく違う顔を見せた本作。演技者として常に挑戦を続けていくヴィゴが、崇拝している、巨匠デヴィッド・クローネンバーグとの作品作りについて語ってくれた。

■暴力描写への葛藤(かっとう)

Q:とても過激な内容でしたが、最初に脚本を読んだ感想を教えてください。

最初に脚本を読んだ時は、正直とても不安だった。脚本といっても、まだきちんと完成してもいなかったし……。そしてなにより、作品のテーマそのものに一番の不安を覚えた。とても暴力的だったからね。これを、一体誰がどう撮るんだろうって考えていたんだ。自分でも、この役を引き受ける自信がなかったんだけど、ある日、監督の候補にデヴィッド・クローネンバーグの名前が挙がっていることを聞いたんだ。すぐに会いに行って、話を聞いたよ。どんな風に撮るつもりなのか……とかね。そしたら、意外なことに巨匠と呼ばれている彼でさえも、自分と同じように作品の暴力描写についてすごく悩んでいたんだよ。僕は彼と話して、彼が僕と同じ考え方であることに、何よりもほっとした。僕はもうずっと長い間、彼のファンだったんだ。この作品を引き受けたのは、監督がデヴィッドだったからだと思うよ。

Q:ラストシーンが印象的でしたが……。

うん。あのラストシーンに関しては自分でもすごく気に入っているんだ。最近のハリウッド映画ってなんでもかんでもラストに答えをもってくるよね。この作品はその中でも特別。それから僕自身こういうスタイルの映画が大好きなんだ。ラストシーンを撮影したのは、とても静かで暗い夜だった。普段はフレンドリーなスタッフたちもみんな静かでね。目の前では小さな子役の女の子がすばらしい演技を見せていた。マリアの顔を見て、子どもたちの顔を見たときは、自分の中に確かにトムがいた。トムになっていたと思う。デヴィッドは、そういう奇跡が起こることを予見して、このラストシーンを撮影の終わり間近に持ってきたんだ。そして、一言僕に言ったんだよ。「ここで言うことは何もないよ。あとは君たちの自由にしてくれ」って。そして彼の予想通り、このシーンは本当に美しいシーンになった。トムの感情は、観客の皆さんに想像してほしいな。

■過激な性描写も……

Q:暴力描写もさることながら、過激なセックスシーンもありました。あれは、大きな挑戦だったのでは?

そうだね。確かにとても大変だった。作中では、マリアとのセックスシーンが2か所出てくるんだけど、1回目のシーンを最初に撮ったときは、とにかく居心地が悪かったよ。普通の映画のラブシーンっていろんな方向から、角度を変えて撮ったりするんだけど、デヴィッドは1つの位置にカメラを据え置きにするんだ。ただ、2人の男女が交わる姿を撮る。僕ら俳優は逃げも隠れもできなくて、一台のカメラの前で、男と女としてメイクラブをするんだ。それって本当にリアルな撮り方だと思った。それから、2つ目のセックスシーンは2人の感情がぶつかりあってつながっていくんだけど、ただ僕が演じるトムが自分の妻を乱暴するシーンにはしたくなかった。トムは逆にその行為を止めたいんだ。でも、妻は続けたいと思っている。2人の間には以前とは違う何かが生まれてしまっているんだ。トムが、自分の衝動を抑えようとしながらも、妻を渇望している。愛に餓えたように、お互いを求め合うあの場面は、逆に最初のシーンよりも愛のあるシーンだったと思っているよ。

Q:監督は、すぐに「カット!」と言うほうですか?

それが、なかなか言わないんだ(笑)。ただ、とにかくカメラを回している。ずっと回りっぱなしだから最初は本当にやりにくかったんだけど、いつまでたっても終わらないから、だんだん慣れてきたよ。それに、できあがったショットを見て、すごく納得したんだ。彼の目的を理解できた気がしたよ。

■一瞬にして人生にして人生を変えた『ロード・オブ・ザ・リング』

Q:キャラクターのバックストーリーはあらかじめ、話し合ったんでしょうか?

すべて話し合った。彼と家族、マリアとの出会いから、娘との関係など、物語では描かれていない部分をね。自分と兄との関係もかなり深く話し合って、作品へのつながりを考えていったよ。

Q:主人公のトムは、店に来た強盗を倒したことで一瞬にして人生を変えてしまいましたが、あなたにも似たような経験はありますか?

『ロード・オブ・ザ・リング』に出演したときかな。あの映画に出てから、周りの環境もすべてが一瞬にして変わった。毎日家でのんびりしていたのが、急に毎晩パーティーの誘いの電話がかかってきたりね(笑)。でもかといって、僕はパーティー好きではないから……。周りの友達はみんなパーティーへ行ってるけど、僕はインドア派だから行かないんだ。プレミアとかもすてきだとは思うけど、あんまり行かないな。でも、あの映画がなかったらこの役にも、デヴィットにも出会えなかったからね。とても感謝しているよ。

一つの質問に対して、とにかく熱く語るヴィゴ。なぜか大きな洗濯袋をさげて部屋に入ってきたので、中身を聞いてみると大きな黒革のノートブック。このノートブックは、前日の記者会見でもしっかりと持っていて、記者からの興味をひいていた物。これには、自作の詩や、文章などがたくさん書いてあるらしい。「今まで2回もなくしていて怖いからいつも持っているんだ」と言って大きなズタ袋を持ち上げるヴィゴは、宝物を離さない子どものようだった。そんな、かわいい面も持っている熱き男ヴィゴ。タフな演技に挑戦した『ヒストリー・オブ・バイオレンス』の彼に注目したい。

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