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松平健
『バルトの楽園(がくえん)』
『バルトの楽園(がくえん)』松平健 単独インタビュー

取材・文・写真:FLIXムービーサイト

6月17日から公開される『バルトの楽園(がくえん)』は、第一次世界大戦中にドイツ人捕虜たちを、平等に、尊厳を持って扱い、捕虜たちから模範収容所と呼ばれた板東収容所を描いた作品だ。本作で、板東収容所の所長であり実在の人物、松江豊寿を演じた松平健は、日本を代表する俳優として、ドイツの名優ブルーノ・ガンツとドイツ語のセリフでの共演を果たした。日本人には、聞きなれないドイツ語を完璧にマスターして、現場のドイツ人俳優からも絶賛されたという松平が、本作が持つ「日本人の心」について語ってくれた。

■松江所長は、弱者に優しい寛大な人柄

Q:脚本を読まれて受けた感想はいかがでしたか。

松江豊寿という人物は、脚本を読んで初めて知りました。こんな時代にこんな人がいて、こんなすごいことをやっていたのか? と、とても感銘を受けたので、こういうお話を日本の皆さんに知ってもらいたいと思って出演を決めました。

Q:松江所長という人物のどういうところに引かれましたか?

お父さんが会津藩士だったことから、父親譲りの信念と武士道が根底にある、弱者に優しい寛大な人柄ですね。彼の気骨(きこつ)があるところにも引かれましたね。あの時代には珍しい人ではなかったんでしょうか。

Q:大河ドラマで演じられた「弁慶」もそうですが、実在の人物を演じる上で、気をつけていることはなんですか?

その人物の経歴などを調べたり、今回は(松江所長の)お孫さんからお話を聞いたりしましたね。これは、そのときのお話なんですが、松江所長は、とても優しい人で、怒ったところを見たことがない。それくらい優しくて、よくひざの上で遊んでいたそうですよ。映画の中でも、子どもをひざに乗せていたシーンがあったでしょう? きっとあのとおりの人だったんじゃないかな。

■地元のひとたちとの交流?

Q:鳴門にすごく大きいセットが組まれたと聞きました。そちらはどうでしたか?

すごく大きかったですね。昔の写真と比べても同じくらいの規模で、外観だけでなく内側もしっかり作ってあって、そこでちゃんと生活できるほどリアルでびっくりしましたね。

Q:地元の方もすごく協力的だったとうかがいましたが、交流はありましたか?

そうですね。皆さん、食事まで用意してくれたんですよ。ドイツ人ばかりでなくて、エキストラも含めて毎日100人近い人が来てましたからね。だから、ドイツの俳優さん向けの食事は、洋食でパンとソーセージ、ハムとかが置いてありました。コーヒーとかも飲み放題で。いつもの現場とは、違いましたね。地元の人たちが、本当に優しい気持ちから、ボランティアでやってくれて、うれしかったです。

Q:ドイツの料理も出ましたか?

ドイツ料理といっても、ハム、ソーセージ、それからドイツのパン(笑)。捕虜たちが、あの時代に残していったドイツの文化がそのまま地元に残っていて、そのときにソーセージ作りを教わったお店が地元にいまも残っていましたよ。

Q:松平さんも食べられました?

いや、僕は普段のロケ弁(笑)。

■ドイツ人俳優は、フレンドリー!

Q:撮影中、たくさんの人が関わっていると、いろんな出会いがあったと思いますが、一番印象に残っているのは?

そうねえ。外国人が多いので、外国の映画に出ているみたいでした。あとは、ドイツの俳優さんたちが、休憩中もみんなサッカーして遊んでいるんですよ。それで、「あなたもやらない?」って誘われて(笑)。

Q:ドイツの俳優さんたちは、結構フレンドリーなんですね。

そうそうそう、なんかサッカーが好きなんだよね。すごく。僕も、中学のときにサッカーやっていたから、好きなんだけど。

Q:ブルーノ・ガンツさんという素晴らしい俳優がドイツから参加されていますが、共演はいかがでしたか?

緊張しましたね。国際的にも有名な人ですから。最初はとってもコワモテというか、意外と厳しい人かな? と思っていたんですが、芝居し始めたら大変優しい人でした。僕は、今回ドイツ語のセリフがすごく多かったんですよ。撮影前にちょっと自分のセリフの練習していたら、ガンツさんがあわせてくれて。「もう1回、もう1回」って、練習につきあってくださいました。とっても優しい人でしたよ。

■ドイツ語は発音が大変……

Q:ドイツ語は初めてですか?

もちろん、初めて。日常でもあまり聞いたことがないし。

Q:いかがでしたか? ドイツ語っていうとすごく難しいですよね。

難しいね。発音も、英語みたいに流れないで、はっきり一言一言発音しなきゃいけないし。

Q:結構セリフの量もあったと思いますが。

そうですね、半分くらいはドイツ語だったかな。一番難しいのは数字。数字の発音は難しかったなあ。

Q:ドイツ語で一番難しい発音って、どんな音なんでしょう?

なんだろう? 鼻から抜けるような発音って言うのかな? ほら「グガッ」って、やるでしょ。ああいうのが入るんだよ。なんだか、タンが絡んだようなね。あれが、ぜんぜんできなかった。

Q:難しそうですね(笑)。それをセリフの中に入れていくんですよね。どのくらい勉強されましたか?

最初にもらったテープをちょうど全国を巡業してたんで、ずーっと聞いていました。撮影に入る5日くらい前から先生について、発音のチェックとかをしてもらいました。

Q:ふだん聞きなれない外国語を話すだけでも大変なのに、そこに感情を入れるというのは、ずいぶんご苦労されたのではないでしょうか?

そうですね。だから、まずセリフを日本語で覚えて、そこに気持ちをつくって。後は頑張って覚えていく(笑)。

Q:ドイツ語の勉強もされて、ドイツ人の役者さんがいる環境の中で、ドイツ語での交流とかはありましたか?

日常会話はぜんぜんしゃべれない(笑)。だから、表情とアクションだけ。けれど向こうの人が日本語であいさつしてくれました。日本語の勉強をして「このセリフを日本語で言いたい」とか、皆さんすごく熱心でしたよ。

■「暴れん坊将軍」でデビューした高島礼子との共演

Q:共演の高島礼子さんは、お父さんのような存在である松平さんの奥様役はとても緊張されたそうです。夫婦役を演じられていかがでしたか?

彼女は「暴れん坊(将軍)」でデビューしたからね。彼女はイメージ的に性格のきつい役が多かったでしからね。それが、明治の女性のような控えめな役まで演じるようになって、役者としての幅がますます広がってますね。

Q:松平さんから見られた高島さんの印象はどちらの印象に近いですか?

普段活発なほうだからね。

Q:じゃ、どちらかというと「極道」の方?

(爆笑)うん。

■松平が考える、日本人の心

Q:戦争という状況下にあって、敵国の捕虜に対しての憎しみもない、板東収容所のようなところがあったという事実に対してどういう印象をもたれましたか?

やっぱり、松江所長の人間性だね。「武士道」、武士の情けってあるじゃないですか。勝負しても最後まで殺さないという。形の変わった「最後の武士道」を感じましたね。

Q:武士道には日本人が今忘れかけているものがたくさんあると思うのですが、今の若者にこういう武士道を思い出して欲しいというところはありますか?

すぐ、キレちゃうところかな。だから今悲惨な事件が多いじゃないですか。むしゃくしゃしてすぐ殺しちゃうとか。そんなのって考えられないですよね。たとえば、「武士は食わねど高楊枝(たかようじ)」っていうでしょう? 我慢することも武士道だし。だからもっと、人情とか、日本人が昔から持っている人に対する思いやりとかを大事にして欲しいですね。

Q:この映画を観た日本人に、一番感じて欲しいところはどこでしょうか。

異国文化の人間同士がいかに仲良くなっていくか、付き合っていくか。松江さんみたいに一生懸命接すれば、最後には分かり合えるという、そういうところですね。

日本人が忘れかけている武士道について、語る姿は、真剣そのもの。しかし、その一方でうれしそうに6月8日に行われるプレミアで、第九を歌う予定だと語る松平に自信のほどを聞いてみると、「全部ドイツ語でしょ? 無理だよね。きっとアップアップになっちゃうな」とおちゃめに笑ってみせた。厳格ななかにも、ユーモアがあり、そして、優しさがある。収容所の捕虜たちと、いつも気さくに話し、海水浴まで許可していたという松江所長と、松平健がリンクした気がした。

『バルトの楽園』は、6月17日より全国東映系にてロードショー。

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