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北村一輝
『花田少年史 幽霊と秘密のトンネル』
『花田少年史 幽霊と秘密のトンネル』北村一輝 単独インタビュー

取材・文・写真:シネマトゥデイ

三池崇史監督に名付けられた「北村一輝」という名前を背負い、10年以上もの間、映画界で個性派俳優として活躍し続け、ブラウン管に登場しても圧倒的な演技力で視聴者の視線をくぎ付けにしている北村。8月19日より公開される、少年と幽霊たちの交流を描いた『花田少年史 幽霊と秘密のトンネル』でも特別な存在感を放っていた。役のためなら自分の歯でさえも抜いてしまうという、筋金入りの「役者魂」を持つ彼が、作品のことや「映画」への思いを語った。

■悪役を演じるときは、「悪」のバックボーンを作る

Q:本作ではCGを使ったシーンが多く見られましたが、撮影はいかがでしたか?

ブルーバックの撮影って、想像力の世界で行われるんで、すごく難しいんです。「ここで撃たれます」って言われても、何も分からないわけじゃないですか。「はい、撃たれた」って言われて、「ウギャーッ」て芝居するわけだから、難しいし、それに……恥ずかしい(笑)。ワイヤーで吊られるのは、遊園地みたいで、いいんだけど(笑)。グリーンバックは細かいカット割をして、撮影していくので、役者としては地道な戦いですね。でも、これからCGを使う映画も増えてくるだろうから、いい経験になったと思います。

Q:演技をする上で、北村さんが気を付けていることってなんでしょうか?

僕はいつも、作品のカラーに合わせるようにしています。ただ、お芝居を一生懸命やるってことと、観た人が楽しめるとは別問題だと思うんです。今回のようなエンターテインメント性の強い作品で、観てもらう人に分かりやすく、楽しんでもらうように演じるときもあれば、逆にリアリティを求めながら演じているときもある。それは、ケース・バイ・ケースで、ピピッピピッと変えていますね。

Q:今回の役柄を例にとると、いかがでしょうか?

彼は目先の欲ばかり、自分のことばかり考えている。そういう人は、絶対にいつか後悔が残る。ただ、それを真剣に演じようとすると、重くなるんで、軽めに演じました。そうしたら、映画ではありえないくらい、コントみたいな芝居になっちゃいましたね(笑)。

Q:悪役を演じる機会が多い北村さんですが、心から悪い人間と、表面だけが「悪」の人間とは違うと思います。北村さんのなかでの「悪」の位置付けを聞かせてください。

それについて聞かれるのは初めてだけど、実は役者をする上ですごく大事なことだと思います。悪役を演じるとき、僕はその「悪」のバックボーンを、必ず作るんです。「なぜ、そうなったか。なぜ、そういうことをしてしまうようになったのか」と。そうすると、ひとつのしぐさをする上でも、納得した動作が生まれる。もちろん、映画の中で、そういう説明があればとても分かりやすいのですが、それがなくても観客の皆さんに伝わるように「悪」の根っこの部分を、どこかで見せるようにしていますね。

■花田少年くらいの年ごろが人生のピーク

Q:花田少年くらいの年ごろ、北村さんはどんなお子さんでしたか?

10歳くらいのころ? あ~、これちょっとみんなの前で言うのは、なんだけど、「イケてたよっ」。みんな、すっごい、うつむいちゃったけど、もう一回言おうか~? 「イケてたよっ」。あのね、これほんと! 多分、僕の人生のピーク! モテたし! もう、そんときがピークだったね。子どものころって単純じゃないですか? 運動神経良かったり、頭良かったり、目立ったり、強かったり。そういうのでモテるでしょ? 大人になるにつれて、人間の深い部分を見られるようになっちゃって、そうしたら、だんだんダメになっちゃったんだけど(笑)。昔は、頭良かったし、運動神経良かったし、強かった。一路(花田少年)には負けないね(笑)!

Q:花田少年を元気に演じていた須賀健太くんは、いかがでしたか?

須賀健太はすごいですよ! 一番すごいのは、人の話をちゃんと聞くってこと。監督や僕が何を言おうとしているかを、すごく理解する力がある。彼とは年が離れているのに、やけに気が合うんです。空き時間もキャッチボールしたりして、実はメル友ですよ! ときどき、あいつが大人なのか、僕が子どもなのか分かんなくなっちゃうんですよね。ほんと、普通に会話しています。

Q:花田家は、とても楽しい家族ですよね。北村さんが描く、理想の家族像を聞かせてください。

この家族は最高だと思います。親と子どもの距離が近いから、何でも言い合えるし、腹割って話せるし、戦えるし。この家族って、昭和の匂いがしますよね。今、日本の家族が失っているものがこの映画にある。まっすぐ進むだけが人生じゃないってことを描いている。このお母さんは最高だって思いますね。

■すべての世界を知った上で、「映画が好き」と言いたい

Q:最近は、ドラマでも活躍中の北村さんですが、映画界からテレビ界に進出したことで何か感じることはありますか?

最初は映画の世界にいて、何十本と出演していました。そのころに思っていたのは、どんなにそこで、がんばっても、大きい映画や、いい映画、大きいチャンスは名前がある人に取られる現実がある。最初テレビに出たころに、いろいろ言われたこともありました。でも、それって大きなお世話で、自分が望んでやっていることだから。これは、誰の人生でもない、僕の人生なんです。今、ちょうど久しぶりに三池組でやっているんですけど、映画はいつだって戻れる「心のふるさと」。10年くらいやっていたから、良い意味で映画に気を使っていないんですよね。僕は、役者としてプロであり、職人でありたい。テレビ、舞台、映画すべての世界を知った上で、「自分は映画が好き」って言える立場までいきたいんですよね。

Q:「ドラマを見て好きになった」という女性ファンには、どんな作品を観てもらいたいですか?

それこそ、無名時代に出ていた作品がいいんじゃないかな? だって、そういう時代があって、今の自分があるから。なかには、セクシー路線の作品もあるかもしれないけど、作品に必要とされたカラーだったから、いやらしく演じただけだからね。かっこよく映るのが僕らの仕事じゃないから。テレビドラマって、どっかでそういう部分があるから、かっこよく見えるように、かっこよく演じているけど、僕はもともと変態とか変質者とか、精神異常者とか、そういう役がほとんどだったんですよ。そういうのを、いっぱい観てもらって、逆にそういうキャラクターを演じた自分を気持ち悪いって言われたら本望なんですね。

Q:普通、そういう過去って隠したがりませんか?

そりゃあ、プロフィールにも書いていない、変な映画もいっぱいある。あまり脱ぎすぎていて、ちょっとこれ人に見せるのどうなの? みたいなのもね。間違いなく、僕と仲がいいスタッフは、僕の全部の裸、知っていますからね。もう見飽きたってくらい! だって、休憩中もフルチンで歩いているような状況で撮影していたし。でも、こういうことを、隠すつもりなんてない。今こうやって言うこともまったく抵抗ないし。むしろ誇りに思っています。いろんな経験があるから、今がある。常に進化していきたい、変わっていきたいんです。“モビルスーツ”みたいに(笑)。

■誇りを持ち続けていたい……

Q:『キル・ビル』にも出演された北村さんですが、本格的なハリウッド進出は考えていませんか?

ハリウッド映画に出ている人は多いけど、自分からは行かないな。媚びる気は一切ない。呼ばれるようにがんばる。夢が、憧れと違うところって、夢って、段階を踏まなきゃつかめないものでしょ。夢をつかむためにはそれなりの努力と準備が必要だと思うんです。そして今の自分は、その段階じゃないのは分かっているから、やれませんね。今は、自分のやっているコトに誇りを持ちたいし、日本映画がああだ、こうだって言う前に、だったら日本映画を変えればいいじゃんって思うんですよね。

「あのころの自分がいるから、今の自分がある」。無名時代の話も隠すことなく笑顔で話し、そしてハリウッド進出については、まだ時期じゃないと言い切る。北村一輝の人気の秘密は、まさにこの男気ではないだろうか。彼の自分が出演した作品すべてに対する深い愛情は、役者としての誇りを持ちつづけているからこそ出ているように感じられた。多くのことを、経験し、吸収し、どんどん進化をとげている北村一輝。“モビルスーツ”のような(?)進化する俳優として、これからの活躍を楽しみにしたい。

『花田少年史 幽霊と秘密のトンネル』は8月19日より、全国松竹系にて公開。

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