シネマトゥデイ

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ソン・ガンホ、ペ・ドゥナ
『グエムル -漢江の怪物-』
撮影中、実の兄と妹のように感じられた
『グエムル -漢江の怪物-』ソン・ガンホ、ペ・ドゥナ単独インタビュー

取材・文:平野敦子 写真:シネマトゥデイ

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『JSA』や『大統領の理髪師』などの話題作に出演し、韓国の実力派俳優として人気を誇るソン・ガンホ。そして『子猫をお願い』や『リンダ リンダ リンダ』などへの出演で日本でも人気の高いペ・ドゥナが『グエムル -漢江の怪物-』で共演した。この2人は怪物と死闘を繰り広げる一家の兄妹役を熱演。お互いに対する思いや、新鋭のポン・ジュノ監督との仕事についての本音を聞いた。

■実の兄妹のようなきずな

Q:今回お2人は兄妹の役ですが、お互いをどのようにご覧になっていたのでしょうか。

ソン・ガンホ(以下、ソン):ペ・ドゥナさんとは以前『復讐者に憐れみを』という作品で共演しました。残念ながらその作品は興行的には決して成功したとは言えませんが、そのときの彼女の熱演はとても記憶に残っています。それ以来、ふたたび彼女と顔を合わせることになったのですが、お互いもともと親しいこともあって、本当に兄と妹のように演技ができたのではないかと思います。

ペ・ドゥナ(以下、ペ):わたしも『復讐者に憐れみを』という作品で初めてソンさんにお会いしたのですが、その映画の中でわたしたちは敵対関係にあったんですね。ですから当時はソンさんのことが怖かったし、とても近寄りがたい存在だと感じていました。ただ、ソンさんは一番上のお兄さんという役柄でしたので、心理的にもわたしが一番頼りにできる存在でした。もちろん大先輩でいらっしゃるので、完全に気を許すということはないのですが、以前よりリラックスして接することができたように思います。撮影中ふとしたときに本当の実のお兄さんのように感じられることもありました。

Q:家族を演じられたみなさんはとても仲が良かったということですね。

ソン:わたしの弟役を演じたパク・ヘイルさんがよくおっしゃっているのですが、わたしたち出演俳優はみんなとても個性的で、しかもわたしもペ・ドゥナさんもパク・ヘイルさんも主役級の俳優です。個性のはっきりした人たちが、1つの作品に集まるということは本当に大変なことなのです。当初はわたしたちに家族としての調和が保てるだろうかと心配もあったのですが、いざ撮影に入ってしまうと、お互いに以前から知っているということもあって、家族として、そして俳優としての演技のアンサンブルがとてもうまくいったのです。

■怪物が現れたら日本に逃亡!

Q:今回はソウル市民の憩いの場である漢江(ハンガン)にグエルム(怪物)が現れるわけですが、もし現実にそうなったらどうなると思われますか。

ソン:映画と同じようにパニックに陥ると思います。ただわたしは冷静に対処すると思います。

ペ:そうですね……、いざとなったら冷静でいられそうな気もするし、もしかするとパニックになってしまうかもしれませんね。ただ、この作品で描かれるように、自分の家族を怪物にさらわれてしまったら、わたしは冷静ではいられないと思います。実際にあのようなグエルムが現れたら、わたしは絶対に家から一歩も外に出ません!

Q:今回グエルムはその家までも倒してしまいますが、そうなったらどうされますか?

ソン:日本に逃げて来なくちゃ(笑)! 誰か彼女の面倒みてくれますか?

ペ:そう、日本に逃げなくちゃ(笑)! ソンさんの家は漢江から遠いからうらやましいです。

Q:この映画はハッピーエンドと考えていいのでしょうか。

ソン:それはやはり観る人によって違うと思います。この作品は観客全員に同じようなカタルシスを与えられるようなハッピーエンドではないような気がしますね。ポン・ジュノ監督は小さなヒューマニズムではなく、大きなヒューマニズムを描こうとしたんだと思います。この家族はグエルムとの戦いで大きな犠牲を払うわけですが、だからこそ映画に深みが出ているのです。わたし自身の解釈としては、もちろんハッピーエンドだと思っています。物語終盤、男の子が出て来るのですが、その子は希望を表現しているのではないでしょうか。ただ最終的には映画をご覧になる観客の方々に判断していただきたいと思います。

ペ:わたしもソンさんと同じ意見です。

Q:家族で食卓を囲むシーンが印象的でしたが、お気に入りのシーンはありますか。

ペ:わたしもあの食卓のシーンは好きです。撮影のときも、とてもいい雰囲気でしたし。あとは合同追悼式の場面などはこの作品ならではだと思いますので、とても印象に残っています。

ソン:言おうとしてたことを先に言われちゃったな。ほかのことを考えなくちゃ(笑)。わたしは父が亡くなるシーンを挙げたいです。あのワンショットというのはこれまでの韓国映画でも見たことのないようなシーンだと思いますし、非常にポン・ジュノ監督らしさが出ていると思います。例えるならば、今村昌平監督や黒澤明監督の映画で観られるようなカットだと思います。主人公たちがいて、お父さんがいて、そしてその後ろに軍人たちもいるという、すべてがそろったすばらしい場面だと思います。

■ポン・ジュノ監督作品との仕事は大変!?

Q:映画を通して笑いと涙が同居しているように感じたのですが、その喜劇と悲劇を演じ分けるのは大変ではなかったのでしょうか。

ソン:なるようになれという感じでしたよ(笑)。まぁ、それは冗談で……。ポン・ジュノ監督の作品では喜劇と悲劇が同居しているんです。そのことによって作品がよりリアルに感じられるし、もともと人間というものは一貫性があるものではないんですね。普通の映画であれば、ある程度その人物像をはっきりさせるために一貫性を持たせているのですが、ポン・ジュノ監督に関して言えば、あえて人物に一貫性を持たせることがないんです。それは実際の人間がそうだからなんです。笑いの次にすぐに悲しみがあり、また今度は笑いも起きうるということで、それを表現するのはわたしたち俳優にとって非常に難しいことでした。

ペ:わたしはもともと笑い上戸でなかなか笑いをこらえられないのですが、今回はポン・ジュノ監督の作品だということで、覚悟を決めて臨みました。先ほどのお話にも出た合同追悼式の場面でわたしはずっと泣きじゃくっているのですが、その周りで起きていることというのはどこか滑稽(こっけい)でおかしなことだったりするんですね。泣いているのに、周りを見るとおかしくてたまらないんです。なので気持ちを強く持って「笑わないようにしなくちゃ!」と努力しました。あと、お父さんが亡くなる前のシーンでは、胸にぐっとくるような話を滔々(とうとう)と述べるわけですが、子どもたちは睡魔に襲われてこっくりこっくりしているんですね。内容だけを見ると決しておかしい場面ではないのに、その状況自体がおかしいんです。そのおかしさを観ている人たちにもそのまま伝わるように演技をするというのは大変でした。

■3度目のオファーは……!?

Q:お2人ともポン・ジュノ監督とお仕事をされるのは2回目で、どちらも撮影はとても大変だったそうなのですが、もし3度目のオファーが来たら受けられますか。

ソン:映画を1本撮るとなるとかなりの苦労をしますからね。その苦労をしてでもやるべきかどうかということをよく計算しなくちゃ(笑)! できるだけ体を使わずに、ロケではなくてセットでできるような作品なら考えます(笑)。

ペ:わたしもそのときになってみないと分からないですが、ポン・ジュノ監督とは今回2度目ですので、また次も一緒にやろうとおっしゃっていただけるでしょうか(笑)!?

儒教の国韓国では年長者を敬う。そのせいだけではないと思うが、ペ・ドゥナは先輩であるソン・ガンホ氏を立て、先輩であるソン・ガンホ氏は後輩をいたわり、冗談で周りを和ませる気遣いも忘れない。彼らは俳優としてプロフッショナルであると同時に、とても人間的で温かい。ポン・ジュノ監督との仕事に関しても、持って回った言い方はせず、その大変さをストレートに表現する。その率直さと潔さ、それが韓国映画人の魅力なのだ。

『グエムル -漢江の怪物-』は9月2日より全国東宝系にて公開。

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