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松田龍平、三池崇史
『46億年の恋』
何が好きで、どうなりたいのか分からなくなっていた
『46億年の恋』松田龍平、三池崇史単独インタビュー

取材・文・写真:シネマトゥデイ

今は亡き伝説のマンガ原作者梶原一騎と、空手界のカリスマ真樹日佐夫の共著「少年Aえれじい」を、『殺し屋1』の三池崇史が大胆な演出でアレンジを加えて映画化した『46億年の恋』。本作でミステリアスな美少年、有吉を演じた松田龍平と、インディーズからエンターテインメント色の強い作品まで、幅広いジャンルを撮り続ける三池崇史監督に話を聞いた。

■変わらない自分にイラついていた

Q:今までの三池作品とは違って、静かな印象を受けましたが、意識されてのことなのでしょうか?

三池:静かに撮ろうと思ったわけではないですけど、ただ、そうは言いながらも、どこかで何か違うもの……つまり自分たちはその現場に多くの時間いて、現場で生きているんで、一つの方法とか、一か所にとどまっているのではなくて、いろいろやれればいいな、という思いがあるのかもしれないですね。たくさんやっている分だけ、そういう思いって逆に強いのかも。それは、「よし、こんな作品を撮るぞ」ということじゃなくて、どちらかというと、変わらない自分にいらついているってことかもしれないですね。

Q:撮影場所にも、こだわりがありましたね。

三池:同じ場所で撮影をするというのが『46億年の恋』の第1条件だったので、人が使っていない場所を探しましたね。撮影場所の空間はあるんですけど、そこはやっぱり、ただの箱とはいえ撮影するための空間で、そこには時間が刻まれているんですよね。ロケーションして、そういうのが作品のトーンになっているとは思うんですけどね。

■撮影中に感じていた空気

Q:出来上がった作品をご覧になって、いかがでしたか?

松田:そうですね、どの現場に行っても、映画によってその現場の雰囲気は全然違うんですけど、『46億年の恋』の場合は、撮影のときに僕がずっと感じながらやっていた空気が、そっくりそのまま映画に流れていて、それが、うれしくもあり、すごいと思いました。

Q:松田さんを起用されていかがでしたか?

三池:松田くんの場合はカメラマンが、撮っているとき幸せそうなんですよね。絵がいいんじゃなくて、要はカメラマンにとって構図がどうでもよくなってしまうんです。カメラマンは、撮っている顔なり、立ち姿なりを見ているんで。カメラマンの中では、自分の切り取っているフレームなんて関係なくなるんですよ。カメラマンにとって、そういう存在ってなかなかいないんですよね。

Q:本作では、表情で演技する場面が多かったと思いますが、セリフがたくさんある作品と表情だけの演技とでは、松田さんにとってどちらのほうが演じやすいですか?

松田:うーん、どっちがやりやすいとか、そういうことじゃないんですよね。ただ、セリフが少ないと、セリフに頼れないんで。頼れないってことは、やっぱり自分の中からにじみ出ないといけない部分があるじゃないですか。以前、三池監督とお仕事させていただいた『IZO』とは、また全然違う現場でしたね。

■女性だったら成立しなかった作品

Q:三池監督は、本作で男性だけの世界を描かれていますが、今までも男性のヤクザものも、すごく多いですよね。男性だけの世界で、三池監督がいちばん魅力を感じる点は?

三池:男の役者と女優ってのは、全く違う生き物だって思うんですよね。魅力があるからとか、男ばっかりを描きたいからってわけではないんですけど、自然にそうなっちゃっているんです。

Q:松田さんは、女優さんとお仕事される機会が多いと思いますが、今回、相手役が安藤さんで、男性同士の愛が描かれていますね。『御法度』で描かれていた“愛”とは、また違う愛だと思うのですが、今回の男同士の愛はいかがでしたか?

松田:男は、女性に対して愛情とか性欲とかあるんですよ、ごちゃごちゃと(笑)。でも、男性に対してはそれがなくて、愛が100%に達しちゃったら、ごちゃごちゃも、まったくなくて単純にその人のことを好きか、その人そのものになりたいかのどちらかなんですよね。それって女性に対してはあり得ない。だから、どちらかの役を女優さんが演じていたら、成立しない話なんですよ。そういう意味では、相手が安藤くんでよかったと思いますね。

Q:安藤さんは、俳優としても、そういう役をしていて抵抗がない相手というか、男性としての魅力がありますか?

松田:ほかの役者さんだったとしても、それはそれで、自分なりにその人を観察して臨みます。でも、安藤くんだったから、よけいなことを考えないですんなりやれましたね。

■日本映画界を破壊する役者、松田龍平と安藤政信

Q:三池監督から見て、松田龍平・安藤政信という役者には、どんな未来が待っていると思いますか?

三池:これは2人に共通しているんだけど、もう役者を始めて7、8年近く経っているわけでしょ。ベテランでしょ。そんな感じ全然しないんだもん。いろいろ見て、すごいポジションにはいるんだけど、まだ、「予告編」という感じ。これからなんだよねっていう、なんかワクワクさせるところがあって、これは特殊な才能だと思うんですよ。実際に、まだ始まりにすぎないんだから、とんでもないことが起こればいいと思います。ただ、そうなるには、それに見合うだけの映画界側の力がないといけないんです。今のメジャー系の映画なんて、全然太刀打ちできないよね。大体今の映画のキャスティングって、どこで誰がキャスティングしても、候補に出てくる人はみんな一緒で、「この人にこの役で、こんな形でこうなればすごいんだよ!」というプロデューサーとか監督って見たことがない。

松田:ぼくも、それ思います。今、本当にそうだな……。

三池:安藤くんも松田くんも、そこにはもうすでにハマらない。そういうものを壊していくんだって思う。バジェットの大きさとかじゃなくて、違う形で破壊していくっていう期待を感じるなあ。

■苦悩の時期に、出会った『46億年の恋』

Q:松田さんご自身にとって、『46億年の恋』はどんな作品でしたか?

松田:作品が決まる前は、おれの中で、ずうっと7年間、毎回同じようなことを繰り返してやっていて、ぐるぐる回っているって感じていた時期だったんです。それで、一回初心に戻ろうと決めたときにきた作品が、この作品だったんです。いろんな情報がたくさんありすぎて、自分が、何が好きで、何を表現したくて俳優をやっていて、どうなりたいのか全然分からなくなっちゃったんです。一回全部ニュートラルに戻そう、そして本当に自分がしたいこと、好きなこと、それを見据えることが、おれにとってそのときすごく重要でした。そして、自分をニュートラルに戻したとき、一発目にやったのが『46億年の恋』だったんです。それが自分にとってよかったと思える部分もあったし、逆に自分にちょっとがっかりする部分もあったし、その2つの微妙なラインのところで撮影していました。あのとき出会えた作品がこの『46億年の恋』でよかったと映画を観たときに感じて、うれしさがこみ上げてきました。

撮影の方法や場所に縛られて、変わらない自分にイラついていた三池監督と、8年間の役者人生で、自分を見失いかけていた松田龍平。そんな2人が、新しいものを求めて作った『46億年の恋』。「新鮮な気持ちで演じられた」と話す松田龍平の姿は、カリスマ三池が描き出すスクリーンの中でまぶしく、あやしく輝いていた。本作をきっかけに日本映画の可能性を、限りなく広げた監督と2人の役者。日本映画界の未来を背負った彼らのこれからに、大いに期待したい。

『46億年の恋』は8月26日よりシネマート六本木ほかにて公開。

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