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赤井英和&田中好子
『ありがとう』
被災しても命を貰ったら、わたしは生きていきます
『ありがとう』赤井英和&田中好子単独インタビュー

取材・文:福住佐知子 写真:シネマトゥデイ

阪神淡路大震災から11年、震災を経験し、その不幸な出来事を乗り越えプロゴルファーとしての道を歩んできた古市忠夫をモデルに書かれた平山譲氏の小説「還暦ルーキー=ありがとう」が映画化された。主演の赤井英和とその妻を演じた田中好子が撮影時のエピソードや大切な人との心の触れ合いについて語った。

■“キャンディーズ”のスーちゃんとの共演

Q:この映画は大震災を経験し、再生していく人たちの物語ですが、初めて脚本を読まれたときの感想を聞かせてください。

赤井:「あの状況の中でこんなスゴイ人がいらっしゃったんやな」という驚きがありました。その人を演じさせてもらうにはそれだけの心積もりというか、ふんどしの紐(ひも)をしめてかからなきゃいかんと思いました。

田中:震災を体験した方たちのお気持ちを、震災を体験していないわたしがどれだけ伝えて演じられるか、責任と不安を感じました。東京生まれの東京育ちのわたしが関西弁を使って、どれだけ心を込めて気持ちを伝えられるかも不安でした。でもわたしが演じることでひとりでも多くの方にメッセージを伝えることができればと思い、出演を受けさせていただきました。

Q:お2人はご夫婦を演じられていますが、最初に会われたときの印象と演じられている内にその印象がどのように変わっていったのかを教えてください。

赤井:最初お会いしたときは「あのさよならコンサートのキャンディーズのスーちゃんや」と思いました(笑)。今回ご一緒させていただいて、本当に素晴らしい女優さんだというのを実感しました。

田中:最初にお会いしたのは20年くらい前で、『どついたるねん』で赤井さんが新人賞を受賞されて、わたしが『黒い雨』で主演女優賞をいただき、いくつかの受賞会場でご一緒しました。あのときの赤井さんと夫婦役ができると思って、とても楽しみでした。関西弁ができないわたしは、赤井さんに助けていただけるんだなあと思って安心しました(笑)。

赤井:いやいや、田中さんは撮影に入ると、休憩中や食事のときもずっと関西弁でしゃべっていらして、役に没頭されていました。

■「あきらめない」「負けない」という力強いメッセージ

Q:田中さんは夫を支える完璧な妻を演じられましたが、赤井さんの夫役はいかがでしたか?

田中:赤井さんだからこそ、古市さんの役をまっすぐに演じられたんじゃないかなと思うんです。実際の古市さんも明るくて、赤井さんにそっくりなんですよ(笑)。

赤井:えへへ……ありがとうございます。

Q:赤井さんは20歳近く年上の古市さんを力強く演じられましたが、役作りや体力づくりで苦労されたのはどんなところでしょうか?

赤井:年齢に関しては気にしていませんでした。頭を白髪に染めたぐらいです。映画の中で伝えたいのは、「あきらめない」「負けない」という力強いメッセージです。古市さんがプロを目指してトレーニングするシーンでは、自分がボクサーだったころにトレーニングしていたのを思い出しました。僕は、ゴルフはドヘタです(笑)。でも、年一回フルマラソンを走っています。香港やニューヨークでも走りました。今年は上海を走ります。家の奥さんもずっと走っていますが、フルは今回初めて一緒に走るんです。その経験が体力作りに役立っているのかもしれません。

Q:女優さんも体力が必要ですが、日ごろからどんなことに気をつけていらっしゃいますか?

田中:運動とヨガとクラッシックバレエ、いろいろと努力しています。やはり努力していかないと……(笑)。

■被災者の方々に思いをはせる

Q:リアルなオープンセットに驚きましたが、その場に立ったときのお気持ちを聞かせてください。

赤井:瓦礫(がれき)の下で亡くなった方たちのことを思うと自然に涙が出てきました。

田中:「おじいちゃんの位牌も、おばあちゃんの位牌も燃えてしもたな。みんな燃えてしもた。何もかんも。全部燃えてしもたんかぁ」というセリフがありますが、実際に生き埋めになった方がたくさんいらしたことを考えると、生かされたわたしたちはその方たちのためにも、明日に向かって一生懸命、夢と希望を持って生きていかなきゃいけないんだと実感しました。

Q:心に残る感動的なセリフがたくさんありましたが、特に印象に残っているセリフを教えてください。

赤井:夫婦のシーンで、プロテストを受けようとする夫に奥さんが「仮にテストを受けるとしたらいくらぐらいかかるの?」と聞いて「そやな200万ぐらいとちゃうか?」と答えると、奥さんが「聞いたわたしがアホやった、サイナラ」というやり取りがあって、おかしかったですね。(笑)田中さんがおっしゃるから特にかわいらしかったと思います。

田中:わたしは「苦しくなったら顔上げて、奥歯折れるまでかみ締めて(途中からは赤井さんと2人で声をそろえ) 笑うんやでぇー(笑)」この言葉を、自分が苦しいときに言葉に出していつも言うんですよ。「奥歯かみ締めて笑うんやでぇー。奥歯かみ締めたら笑えんやろ!」って自分で言って、笑っています。

■ありがとうは1日150回

Q:タイトルにもなっている「ありがとう」という言葉ですが、最近心に残る“ありがとう”という言葉の思い出はありますか?

赤井:奥さんがちゃんと子どもを育ててくれたり、僕の服などをそろえてくれたりすることに対して、いつもありがとうと感謝しています。ありがとうといつも思ってはいるんですが、この映画で、思ってるいだけでは伝わらない、ちゃんと相手の目を見て気持ちを言葉にして言わないと、と思いました。だから最近は、毎日150回くらいのありがとうを嫁さんに言っていますね……。150回は嘘でした(笑)。

田中:“ありがとう”と“ごめんなさい”が素直に言える人間になりたいと思っているんですね。親しき仲にも礼儀あり、でも長く付き合えば付き合うほど言葉が素直に出なかったり、言わなくても分かるだろうと思ってしまったり……、でもそうじゃないんですね。やっぱり口に出して、目を見て、ありがとうと言うことが大切なんだって思います。

Q:キャストがとても豪華でしたが、印象に残った方はいらっしゃいますか?

赤井:田中さんが現像するフィルムを集めるために、自転車で工事現場を回っているときに島木譲二さんが出てきて「お宅のご主人プロゴルファーを目指してるんやて? わしら、勇気づけられまんがなあー。頑張ってもろてやー」と言いながら灰皿で頭をぽこぽこやっていたんです。「このおっさん、何やってるんやろ?」と思いましたが、明るくて前向きなキャラクターでこの映画には必要、ホッとして、ええシーンになっていました。

田中:ひとりの被災されたおばあちゃんがある日、出かけようとして「どこに行くの?」と聞かれたときに「大阪に吉本を観に行くんや。衣食住がそろっても人間には夢が必要や。夢や希望がないと生きていかれへん」と言われたというのを聞いて、人間は夢とか希望とか笑いとかが大切なんだ、ひとりでは生きていけないんだと思いました。

Q:最後にこの映画を観る人たちへのメッセージをお願いします。

赤井:この映画を観てたくさんの幸せの涙を流してください。そして大事な人に"ありがとう"を伝えてください。タイトルの『ありがとう』と心からの感謝の"ありがとう"を伝えてください。

田中:家族のきずなの中で、夢を実現させて人生を大きく変えた人の物語です。夢の大切さや生きる希望をもう一度見つめ直してもらいたいです。

震災現場でのシリアスな表情からプロゴルファーを目指し、希望に向かってまい進していく人間味あふれる姿を、温かな人柄そのままを全身で演じきった赤井。奥さまへのあふれるほどの愛情も聞いていてうらやましいほど。一方の田中は、「被災しても命を貰ったら、わたしは生きていきます」。と田中のきっぱりと力強い言葉が印象に残った。なれない関西弁もなんなくこなし、苦難の中、夫を支え見守る妻の絶望から希望へと変化していく表情も完璧に演じている。2人の話を聞いて、これから先どんな人生が待っているかわからない、だからこそ人にやさしく、思いやりのある人生を送りたい。そんなメッセージが伝わってきた。

『ありがとう』は11月25日より全国公開。

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