シネマトゥデイ

シネマトゥデイ
私的映画宣言 セカンド・シーズン1月

鴇田崇 高山亜紀 今祥枝 中山治美 前田かおり 相馬学

執筆者の近況など

高山亜紀 中山治美
先日、渋谷駅からバスに乗って、ふと窓の外を見ると、知らない間に渋公(渋谷公会堂)が渋谷C.C.Lemonホールなんていう酸っぱそうな建物に変わってました。この名前だったら、TO-Yは絶対、ここではライブしないでしょう。何とかして。 「ウルルン滞在記」で阿部サダヲがチェコの人形劇を学びに。居候先は、私の大好きなマペットアニメ『パットとマット』のルポミール・ベネシュ監督宅で大興奮!! ベネシュ監督は12年前に亡くなったが、息子さんが後を継いでいるのね。羨ましいゾ、阿部さん!
鴇田崇 相馬学
年末恒例のTV番組の収録が無事に終了。何番組か撮ったのですが、最後のセットが某深夜番組の「○○こ○○○ん」をパクッたような配置だったんですけど。なんか演出もそれっぽかったしなー。さてシネマトゥデイの読者の皆様、今年はありがとう!! 来年もいい映画に巡り逢えますように!! 続編モノ多そうだけど、まぁいいや。 年末進行の真っ只中、我が家のPCが2台立て続けに壊れた。ネットカフェで仕事をしようと行ってみたら“アダルトダウンロード開始!”“AV1000本見放題!”などなど、誘惑の張り紙が壁にベタベタ貼ってある。締め切りとの戦い、そして煩悩との戦い。良い精神修練の場となりました。

 それでもボクはやってない
 
  『Shall We ダンス?』の周防正行監督が、11年ぶりにメガホンを取った本格的な社会派ドラマ。電車で痴漢に間違えられた青年が、“裁判”で自分の無実を訴える姿を、日本の裁判制度の問題点を浮き彫りにしつつ描く。ハリウッド映画『硫黄島からの手紙』に出演し、世界的に注目を集めた加瀬亮が、本作で初主演を果たす。主人公を弁護する弁護士には、瀬戸朝香、役所広司らがふんする。3年もの歳月をかけて“裁判”について取材した監督が、現代の日本における“裁判”の現実を突きつける。

加瀬亮
瀬戸朝香
山本耕史

監督・脚本:周防正行
   
高山亜紀   作品評価5 好き度4
どこまで理不尽なんだよ、日本の裁判。昔、『ザ・レイプ』を見たときは被害者が加害者のように責められるやり口に疑問を感じたが、20年前から、ちっとも進歩してない。まぁ、満員電車のマナーって神経質過ぎるくらいで、ちょうどいいからなぁ。でも、映画を見た男性陣は完全に同情すると思うよ。だからといって、男女問わず、植草ミラーマンみたいな人が無罪、主張しても、誰も信じないよね。え? 案外、無実なの? それはないでしょう……などなど、誰もが議論を闘わせたくなってしまう本作。映画の鑑賞後賞味期限の最長記録を更新してくれそうだ。上映時間も長いのだが、それは全く感じさせなかった。周防監督にとっての11年は映画の勘を忘れるどころか、完全に充電期間だったのね。
中山治美   作品評価4 好き度4
  映画を見ている最中は、知らなかった裁判の流れを追うことに集中し、「ためになる映画だな」ぐらいにしか思わなかったが、振り返れば2時間23分あっという間。周防監督の巧みな脚本と、加瀬亮の計算された演技が、観る者を揺さぶるのだ。見るからに気弱そうな金子(加瀬亮)の痴漢は冤罪だと信じたいのだが、時に金子は親身になる友人や母親に悪態を付いたり、部屋から痴漢のAVが見つかったりと、邪悪な心をチラリ、チラリと覗かせて、観る者の同情心を寄せ付けない。おまけに、現場に居合わせた証人たちの発言は「羅生門」のように異なり、私たちを惑わす。そう、自分も裁判に参加していたような気分に。周防監督の術中にハマってる!?
鴇田崇   作品評価2 好き度2
  個人的にも興味があったし、全国の殿方なら誰もが見過ごせないチカンが題材の冤罪劇を、周防正行監督が映画化しましたね。『Shall We ダンス?』の周防正行監督って、その『Shall We ダンス?』以来、11年ぶりの監督作になるわけですが、さすが緻密に取材を重ねる周防流だけあって、3年ですか? 見応えある裁判ドラマになってはいます。ただ、裁判はホリエモンの騒動にしろなんにしろ、ある程度想定されたストーリーがあって、その通りにコトが運んでいく危険性は専門家じゃなくても周知の事実で、ハッキリ言うと裁判になってからはもはや手遅れよ。だったら未曾有の事件に巻き込まれないための、具体的な方策だけを真剣に考えてみたいですが。


 ディパーテッド
(C) 2006 Warner Bros. Entertainment Inc.
  巨匠マーティン・スコセッシが、香港映画『インファナル・アフェア』をリメイクしたアクションサスペンス。マフィアに潜入した警察官と、警察に潜入したマフィアの死闘がスリリングに描かれる。レオナルド・ディカプリオとマット・デイモンが主人公の警察官とマフィアをそれぞれ熱演。名優ジャック・ニコルソンがマフィアのボス役で脇を固める。ボストンを舞台に描かれた本作は、スコセッシ監督らしいバイオレンスシーンと、敵対組織に潜入した男ふたりの心理描写に注目。

レオナルド・ディカプリオ
マット・デイモン
ジャック・ニコルソン


監督・製作:マーティン・スコセッシ
     

高山亜紀   作品評価3 好き度3
何だ何だ、この浅さは。ああ見えて『インファナル・アフェア』のアンディ&トニーさんは結構、オッサンだから。レオとマットみたいな若造に演じてもらっても、人生の奥行きを感じない。間が生む感情があったのだ、オリジナルには。この映画にはその「間」がない。だから3部作が1作にする力技ができたのだろう。余韻も情緒も何もかもぶち壊し。ギャラに応じて、見せ場を与えているのか、誰がメインなのかもわからなくなってしまっている。ジャック・ニコルソンをあそこまで目立たせる必要があるのか。一方、マークは髪型が象徴するように、何だかなぁな存在。さらにいえば、男くさいドラマにするのは構わないが、ヒロインに全く色気がなかった。これだけ才能のある人が集まってこの状況ってちょっとびっくりである。
中山治美   作品評価4 好き度4
  鼻からオリジナルには劣るだろうと踏んだ筆者の注目は、マット・デイモンVS.マーク・ウォルバーグの、ハリウッド2大猿男の競演! この2人、『オーシャンズ11』に出演予定だったマークが『PLANET OF THE APES 猿の惑星』の主演を選んだため、『~11』に仲間入りしたのがマットという因縁の間柄。で、同じスクリーンで冷静に観ると、マットの方が猿度高し。しかも今までのマットにはない極悪猿ってのがいいですな。だがこの争いに、“狼”が乱入。そう、ジャック・ニコルソンだ。自然の摂理通り猿よりも、ましてディカプリオより狼の方が強力で、本作品では好き放題暴れまくり。この調子じゃ、ディカプリオのオスカー受賞の道はまだ遠い?
鴇田崇   作品評価5 好き度5
  なんでも飲み会の席で女性に対してマーティン・スコセッシを熱く語るとモテないと女性の編集者から聞いたことがありますが、モテなくたっていい、僕はスコセッシを熱く語りたい。そんな巨匠の『インファナル・アフェア』のリメイク版は、キリスト教、ギャング、音楽、終わりのほうでやたらに人が死ぬと、まごうことなきスコセッシ流な味付けにファンなら悶絶モノです。表面的な難をあえて言うならば、レオナルド・ディカプリオとマット・デイモンがなにしろ若すぎて、まるでちびっこギャングのようですが。マフィアのボスはデ・ニーロで、レイ・リオッタとジョー・ペシで、再度リメイクしたらどうかな? うーん、『グッドフェローズ』そのまんま!!

 マリー・アントワネット
(C) 2005 I Want Candy LLC.
  有名な悲劇の王妃マリー・アントワネットの物語を、1人の女性の成長期としてとらえた宮廷絵巻。幼くして故郷を離れ、異郷フランスの王室で必死に生きた女性の激動の人生を丁寧に物語る。監督は『ロスト・イン・トランスレーション』のソフィア・コッポラ。『スパイダーマン』シリーズのキルスティン・ダンストが孤独を抱えて生きる女性を愛くるしく演じている。実際のヴェルサイユ宮殿で撮影された豪華な調度品や衣装の数々は必見。

キルスティン・ダンスト
ジェイソン・シュワルツマン
アーシア・アルジェント

監督・脚本:ソフィア・コッポラ
     
高山亜紀   作品評価3 好き度4
80年代バブル期に青春を過ごした人って「何とかなるでしょ」「なきゃ買えばいいじゃん」みたいなノリが本人は気づかずとも、漂っているのだが、このマリーさんもそんな人。音楽センス抜群のソフィアがそこに目を付けたかどうかは知らないが(アメリカは当時、バブルじゃないか)、80年代の退廃的な音楽をセレクトしたのにはグッときた。特にマリーと海軍士官の愛人との逢瀬にアダム・アントの曲を使っているのにウケた。アダムは海賊扮装でデビューし、その後、王子様コスプレになり、そして消えた人。そのまんまではないか。ざっくりいえば、恋して、おしゃれして、生き急いで……結構、楽しい王族ライフ!みたいな映画。フランス人は当然、怒るでしょ。日本人の私は同じガールズムービーなら『さくらん』の方が好き。
中山治美   作品評価3 好き度3
  コッポラ・ブランドのパワーを改めて思い知らされた。ヴェルサイユ宮殿だよ。世界遺産だよ。そこを恐らく破格値で許可をもらい、マノロに劇中で使用する靴のデザインを依頼し、豪華絢爛なスウィーツはパリの老舗洋菓子店「ラデュレ」にコンサルタントを依頼。金の使い方は、『地獄の黙示録』で製作費をオーバーさせた父親譲りだ。そして作ったのが「私もアントワネットの気分を味わいたかったんだもんっ!」ってな感じのガーリー・ワールド。18世紀の仏王室の世界も、米国の片田舎が舞台だった『バージン・スーサイズ』も同レベルの世界観ってのが、ある意味スゴイ。人に何言われようが己の道を突き進む。それもまた、コッポラ家の血筋ってことで。
鴇田崇   作品評価1 好き度1
  僕は『ロスト・イン・トランスレーション』が大好きな人間で、伝記モノも好んで観ます。もっというとキルスティン・ダンストもタイプですよ。ブスカワとか言われてますけど。そんなひいき目の要素がてんこ盛なのに、この映画はまったく心に響かなかった。舞台がヴェルサイユ宮殿に移っただけで『ロスト・イン・トランスレーション』と同じ切り口でヒロインの孤独な内面を切り取っているのは分かるのだが、ドラマとしての厚みがなかったか、マリー・アントワネットの内面描写が足りなかったか……。アーシア嬢にあんなふうにベッドで誘われたい、ぐらいしかなんか感想が出ませんことよ。ただ、女性にはウケがいいらしい。女性は観にいったらいい。

 愛の流刑地
(C) 2007 「愛の流刑地」製作委員会
  中年の作家と、愛を知らない人妻が心と体を互いに深く求め合い、究極の愛情を構築する大人のラブストーリー。男と女の深遠な愛を描いた渡辺淳一の同名恋愛小説を、TV界で活躍してきた鶴橋康夫監督が官能的に映し出す。作家役に『フラガール』の豊川悦司、彼と愛し合う人妻役に『大停電の夜に』の寺島しのぶが挑み、共演の多い彼らならではの呼吸で愛の軌跡を熱演。全時間の半分が主演ふたりの愛の営みという官能描写の数々に注目。

豊川悦司
寺島しのぶ
長谷川京子

監督:鶴橋康夫
     
高山亜紀   作品評価2 好き度3
トヨエツの完璧ボディーと見飽きた寺島の裸体が絡んでも何のエロスも感じない。私がこの映画の中で一番、エロい!と思ったのは佐藤浩市の顔でした。別にトヨエツ&寺島に落ち度はない。話に入り込もうとすると、ハセキョーの素っ頓狂な台詞がカットインしてきて、いちいち現実に引き戻すからいけないのだ。胸開き&ミニスカ衣装だけが彼女の見せ場。確かにずぶ濡れ&蔵之介に後ろから襲い掛かられてのハミ乳はよかった(二番目にエロい)。でも、演技が。顎でリズムをとりながら棒読みの台詞を言う。手の位置に困って腕を組む。横に移動するときはカニ歩き。どんだけ緊張してるんだ。素人? ただし、この作品の場合、どうでもよかった作品をあそこまでのインパクトにした彼女の伝説的演技を功績とみなすべきなのかも。
中山治美   作品評価1 好き度1
  波にノリに乗る東宝は、怖いモノ知らずのようです。方や『それでもボクは~』のような真面目な裁判劇を配給しつつ、こんな茶番劇も扱ってしまうなんて。検事の長谷川京子は、検事にあるまじき肌を露出したファッションで発情しまくり、対する弁護士は“あの”陣内孝則だ。私が周防監督の立場だったら、この節操のなさにカチンと来るね。その「ありえねぇ」感がツッコミがいがあってネタとして楽しくもあるのだが、熱演している豊川悦司と寺島しのぶの芝居をことごとくぶち壊していくもんだから、最後は本当に気の毒に思ってしまった。関係者いわく「でもこの裁判室は窓があるでしょ。その時点でファンタジーだから」って。あははっ……(苦笑)。
鴇田崇   作品評価3 好き度5
  あのアイルケです。アイルケの映画化。原作者の渡辺淳一氏も絶賛のコメントを寄せているとかいないとかを耳にしますが、結論からいうとハマリましたね。なぜなら自分がだんだんと村尾菊治や入江冬香の年齢に近づいてきたからですな。映画の完成度なんてこの際どうでもよくて、これまで愛だの恋だのについてマトモに考えたことがなかったもの。たとえば、10代ならこれは完全にエロ映画、20代ならオトナの不倫モノ、って感じで提示された情報をアタマの中だけで処理してたはず。いや、そうしてきた。これだけ恋愛映画があふれてて、それを右から左へ紹介してきた過去を考えたとき、完全に上っ面でしたよ。この場をお借りして反省したいと思いマス。


偏愛映画宣言

だれが何と言おうとこの映画を愛します宣言! 
ライターが偏愛してやまない1本をご紹介!

 ブラザーズ・オブ・ザ・ヘッド
中山治美
 
 架空のバンドのドキュメンタリーといえば、映画ファンなら『スパイナル・タップ』を思い浮かべるだろう。『ブラザーズ・オブ・ヘッド』もその系譜に連なる作品だが、大きく異なるのは多くの擬似ドキュメント、と違い、お笑いの要素がほとんどないこと。つまり、マジでドキュメンタリーを装っているのだ。
そこで注目したいのが、1970年代なかばに現われた(ことになっている)結合性双子の兄弟、ザ・バンバンの音楽。これらはもちろん映画のために書かれたオリジナルだが、1975年作と言われても納得するロック・ナンバーばかり。グラムを引きずるギターのソリッドかつノイジーな音色に打たれ、パンクやポストパンクの予感にシビレる。お話もマジなら、音楽もマジと……というワケだ。そんなふうだからこのサントラ盤はサントラとして聴くより、ザ・バンバンのオリジナル・アルバムとして聴きたい逸品。1970年代にシーンの当事者だった敏腕プロデューサー、クライブ・ランガーのイイ仕事である。
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