シネマトゥデイ

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ソフィア・コッポラ
『マリー・アントワネット』
アントワネットが嫁いだときに、
まだ14歳だったという事実が心に引っかかった
『マリー・アントワネット』ソフィア・コッポラ単独インタビュー

取材・文:中山治美

米国人、しかも映画界のサラブレッド、ソフィア・コッポラ監督がフランス史ということで何かと物議を醸している映画『マリー・アントワネット』。06年カンヌ国際映画祭の上映ではブーイングも起こったが、その一方で、文化的・教育的な価値のある作品として「French National Education Prize」も受賞。さまざまな雑音を振り払うかのように、コッポラ監督は長編3作目にして大作となる本作にかけた思いを力強く語り始めた。

■個人的な目線で描きたかった

Q:この映画は英作家アントニア・フレイザーの小説が原作ですが、この本を読んで映画化を考えたのですか? それとも、元々マリー・アントワネットに興味があったのでしょうか?

最初は、友達からこの本のことを聞いたのがきっかけですね。そこで私は初めて、アントワネットがヴェルサイユ宮殿に嫁いだとき、まだ14歳だったという事実が心に引っかかり、もっと彼女の事を知りたいと思いました。同時に、これは映画としても面白い題材になると思ったんですね。それからフレイザーの本を読み、もっと個人的な目線で彼女の人生を描きたいと思いました。

Q:小説以外にもいろいろリサーチをしたと思いますが、新たな発見はありましたか?

もちろん。なぜなら私は、多くの人と同じように、アントワネットに関してはプロパガンダでしか知らなかったのだから。特に、彼女が母親のマリア・テレジアに書いた手紙は面白かった。その文面を読むと、まさに勉強嫌いで生意気なティーンエイジャー。皆と同じでしょ(笑)? それと、彼女と夫の奇妙な関係は興味深かったですね。7年間もセックスレスだったことは全然、知らなかった。だから彼女はパーティーに走り、宮殿にもなかなか馴染めなかったんだと考えました。それって、とても人間らしいと思うし、共感もできる。さらに冷酷な人ではなく、本当は優しい人だったんだという事も知りました。

Q:実際にヴェルサイユ宮殿を訪れると、そこは広大過ぎて、まるで世間から切り離された世界のように感じます。アントワネットも、同じような事を感じたと?

フランス革命の個所を本で読んだとき、私はとてもショックを受けました。というのも彼らは、外で何が起きているのか、全く知らなかったのです。自分たちに危険が近づいていることさえも。確かにあの宮殿の中にいると、世間から隔離され、そこだけが別世界だったのだと思います。

■マリー・アントワネットにはキルスティンしかいない

Q:アントワネットを演じたのは、米女優キルスティン・ダンスト。あなたのデビュー作「ヴァージン・スーザイズ」に続いての起用です。

脚本を書いている時から彼女の事を頭に思い描いてました。アントワネットはコケティッシュで楽しいキャラクターと、内面的には深い何かを持っている。その両方を演じられるのはキルスティンしかいないと思ったんですね。

Q:キルスティンには役作りのために、ミロス・ホワマン監督『アマデウス』とジョン・シュレシンジャー監督『ダーリング』を観るように勧めたそうですね。

それはクラシカルな感じにするよりも、ポップ・テイストを取り入れた作品にしたかったからです。『ダーリング』が好きなのは、長時間の話を描いているけど、途中で何が起こったのか全く説明しない。その多くを見せないアプローチがいいと思いました。

Q:それで音楽に80年代のニュー・ロマンティック・ポップ・バンド「バウ・ワウ・ワウ」やスウェーデン発のシューゲイザー・バンド「THE RADIO DEPT」などの曲を使用しているのですね。

ええ。18世紀が作品の舞台ではあるけれど、ストーリーの自分なりの解釈から受ける印象をそれらのモダンな音楽で表現しているというワケなんです。自分にとっては、一番ピッタリくる音楽を選んだ結果です。

Q:『ヴァージン・スーサイズ』でジョシュ・ハートネットをいち早く起用したように、本作品でも魅力的な俳優が。アントワネットが恋に落ちるフェルゼン伯爵役のジェイミー・ドーナンはイケメン。また“美の発見”をしましたね(笑)。

フフ。フェルゼンは小さな役だから、無名の人を起用したかったのです。ドーナンはモデル兼ミュージシャンで、俳優は初めて。彼のハンサムな容姿はロマンティックなヒーローにピッタリ。それに、とても性格が良いので、それがスクリーンにも現れていると思います。ジョシュの時もそうだけど、新しい人材を見つけ出すのは楽しいですね。

■製作費約40億円の行方

Q:製作費は4千万ドル(約40億円)。そのうちのどれくらいが衣装代で、どれくらいがヴェルサイユ宮殿の使用料なのでしょうか?

プロデューサーではないから、正確な経費までは……(苦笑)。確かに、映画を観てもらえば分かるようにお金がかかっています。フランスでの撮影だし、衣装もたくさん出てきますが、そのほか諸々たくさん。その代わり、撮影スケジュールをタイトにして、その分を衣装やセットに回しているんですよ。

Q:アントワネットが履いている靴も含め、劇中に登場する靴はすべてマノロ・ブラニクがデザインしたのですか?

ええ。この映画に出てくる靴は、超豪華にしたかったの。マノロは、とにかく素晴らしい靴を作ります。私はファッションも大好きだし、それをストーリーの中で表現することも好きです。アントワネット自身もファッショナブルな女性でしたからね。

Q:衣装デザイナーには、マカロンの色をイメージして衣装を作ってもらうようにお願いしたとのことですが、アントワネットのブルーのドレスが印象的でした。

実際のアントワネットは、ピンク色ばかり着ていたと思います。でも私は、マリーがヴェルサイユ宮殿に入るときは、ブルーのドレスを選びました。なぜなら、フランス王室の色だからです。王室の人たちは、アントワネットをフランス人形のように見せたかったのではと思ったのです。そして宮殿での生活ではピンクでガーリーなドレスを着るようになり、それが大人になるにつれ趣向が変化していくようにしました。

■三部作の最終章

Q:『ヴァージン・スーサイズ』『ロスト・イン・トランスレーション』に続き、本作品も一人の少女の“自分探し”がテーマになっているように思います。これはあなたの三部作と捕らえてもいいですか?

作品を作っているときは意識していなかったけど、確かに3作品の主人公は、自分のアイデンティティーを模索している作品と言えるかもしれません。そして今回、『マリー・アントワネット』で初めて主人公は、最後に自分自身を見つけることができ、自分を変えることができた。そういう意味ではこれが、三部作の最終章にあたると言えるでしょうね。

記者会見では「撮影で一番大変だったことは?」と尋ねられ、「こんなスケールの大きな撮影は始めてだったし、とにかく、目の前で演じているメインの役者さんの芝居に集中するのが一番大変だった」と漏らしたコッポラ監督。この大仕事が一段落したからこそ、その直後、恋人のミュージシャン、トーマス・マーズとの間にできた子供(ロミィちゃん)を出産と相成ったのでしょう。おめでとうございます!

写真:(C) 2006 CRIS MOOR, (C) 2005 I Want Candy LLC.

『マリー・アントワネット』は2007年1月20日より日劇3ほかにて全国公開。

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