シネマトゥデイ

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イディ・アミンは四苦八苦してたんです。徐々に命が狙われているという被害妄想から恐怖に怯え始め、それが怒りに変わり、権力だけで支配した腐敗の状態になり、無秩序な悲劇を招くことになったのだと思います。-フォレスト・ウィッテカー-実在した悪名高き大統領イディ・アミンを演じたフォレスト・ウィッテカーに話を聞く
昨年の12月30日、イラクのサダム・フセイン元大統領の絞首刑が執行された。独裁者の哀れな末路であった。独裁者という印象に対してわれわれは、恐慌政治、粛清(反体制派抹殺)、プロパガンダ……というイメージを思い浮かべるであろう。もちろん、独裁者の中には善政を行った人物もいるだろうが、あえて今回は、その独裁者の中でも際立って軍や警察を掌握し、国民に脅威をあおったアフリカのウガンダの独裁者イディ・アミンについて触れてみたい。彼はヒトラーを称賛し、およそ30万人もの国民を殺害したとされ、権威に就いている際には、ニューズウィークが記事に「彼は醜悪だ」と記載、それが理由でウガンダにいた200人ものアメリカ人が拘束された事件がある。そんな彼を描いた映画『ラストキング・オブ・スコットランド』を紹介しながら、この狂人を、われわれが持っている独裁者のイメージだけでなく、自由奔放さと無垢さの二面性を表現して、見ごとに独裁者アミンを演じきったフォレスト・ウィッテカーに話を聞いてみた。
映画『ハリウッドランド』に関して!
Q:『ラストキング・オブ・スコットランド』では、これまでの出演作の中で最もリサーチに時間を費やしたそうですが、どのようにこの役(イディ・アミン)に入っていきましたか?
 
(フォレスト・ウィッテカー)まず始めに、スワヒリと方言を勉強してから、イディ・アミンのドキュメンタリー映画(『General Idi Amin Dada:Autoportrait 』1974年作)を観て研究し、それから彼の意外な一面として見せる、重要なポイントとしてアコーディオンを弾けるように練習をしました。次に彼の家族や兄弟、そして姉妹、彼のガールフレンドの一人に会ったり、さらに大臣や軍司令官とも会見しながら、彼がどのようなアフリカ人であり、かつウガンダ人であるかを少しずつ吸収していったんです。今回初めてアフリカを訪れた私にとって、実際に住んでいる人々が、アミンの政治にどう影響されたのかを知る必要がありました。
 
Q:アミンの行った残虐な行為はどのように伝わっていましたか?
 
(フォレスト・ウィッテカー)本作で空軍の指揮官を演じた俳優のマイケル・ワウクの叔父さんは1979年、実際にイディ・アミンに殺されているんです。ウガンダで30歳以上の人々は、それぞれイディ・アミンに対して認識が違いました。それは必ずしもネガティブなものだけではありませんでした。実を言うとすごく複雑なんです。あるグループの間では一方的な見方でしたが、それとは逆にほとんどの人達は中立の立場を取っているんです。彼らは、イディ・アミンが数知れぬ人々を殺してきた人物と理解しながらも、それと同じくらい彼の行った政策などに称賛を抱いているのです。だから単なる残虐な話よりもっと複雑だったんです。
 
Q:イディ・アミンがなぜスコットランドに惹(ひ)かれたのかをあなたの観点から説明していただけませんか?
 
(フォレスト・ウィッテカー)ウガンダとスコットランドの二つの国には、かなり共通項があるんですよ。それらは、まずクラン(スコットランドの高地人の血族集団を指す)があります。それと王冠や記章、さらに礼装もあるんです。そのほかには、言い伝えから物ごとを話し始めたり、戦いに行く前に音楽を奏でたり、わりと解放されたれた環境化でパーティをし続けてきた歴史などもありました。そして彼には、スコットランドはイギリスの統治下で抑圧されてきたと感じていたんです。そこで彼は、ウガンダを同じ境地に見立て、抑圧から解放させる目的で、陳腐な文句ですが、自分が『スコットランドの最後の王だ』と言ったんでしょう。
Q:今ウガンダはどんな状況なのでしょうか?
 
(フォレスト・ウィッテカー)わたしの気に入っているカンパラ(ウガンダの首都)の人々は人情深く、ポジティブで、美しく、人に施す人々です。実際には貧困でほとんどの人が苦しんでいるのですが、中産労働階級もあり建設的な部分もあります。もちろん今は少し変わっているかもしれません。ウガンダの反政府勢力「神の抵抗軍(LRA)」の指導者ジョゼフ・コニーが、政府と和平交渉に入っているのです。(ちなみにこの交渉は後に、LRAの幹部が姿を潜めたり、ウガンダ政府軍が停戦合意を破ったりして協議は暗礁に乗上げている)
 
Q : 共演者のジェームズ・マカヴォイ(イディ・アミンの主治医のニコラス・ギャリガン役)との演技はいかがでしたか?
 
(フォレスト・ウィッテカー)彼はとても才能あふれた俳優です。率直で人を受け入れやすく見えるんですよ! そして自然体で落ち着ちついていて、なにか予想外のことが起きても、即興でやっていけるんじゃないかと……。わたしも彼と一緒に仕事をしていたときには、まるで活動力が増したように感じられました。このニコラスの役は彼に適しているし、彼以外の俳優が演じるのは想像できないと思いました。
 
Q:ケリー・ワシントン(妻役ケイ・アミン)は、セットであなたに近寄りがたかったと言っていました。
 
(フォレスト・ウィッテカー)わたしは、この役をずっと引きずっていて、自分のシーンでないときもこの役に成りきっていました。わたしのシーンは、あまりリラックスしたシーンがないため、準備段階でもほかの俳優やスタッフから距離を置いていました。特に被害妄想で「誰かに殺される」と叫んでいたときはね(笑)。だからいつもこのエネルギーでセットにいたんです。わたし自身この手段以外で演じることはできませんね。
Q:回りでオスカー候補と騒がれていることに関してはどう感じていますか?
 
(フォレスト・ウィッテカー)自分の仕事をこういう形で気に入ってもらったり、語ってもらえることは、とても光栄なことです。この演技が人々を映画館に足を運ばせるようになるといいですね。映画をサポートしてくれる人は重要ですからね。
 
Q:最後にイディ・アミンという人物をまとめあげてみて、彼は実際に善行を行おうとしていたのか、それとも単に権威を獲得しようとしてたのか、あなたにはどう感じられたのでしょうか?
 
(フォレスト・ウィッテカー)わたしが研究したものから察すると、彼は大統領に就きたくなかったみたいです。願望すらなかったと思います。彼は軍隊(軍参謀総長時代の事)からの人気があり、当時の大統領オボテは、彼を退かせようとしていました。逆に英国やイスラエルそして西の各国は、この機会がオボテを退陣させるきっかけになると考えたんです。なぜならこのとき、アフリカ東部ケニア・タンザニア・ウガンダのリーダーが社会主義者で、それぞれの国が社会主義を形成しようともくろんでいると考えたからです。
 
これが彼を権威に就かせ、オボテ大統領を退かさせ、後にこれが、ある意味自分を助けるための行動でもあったのです。実際彼自身、命を狙われていると思っていたんです。それから彼は、彼の力のできる限り国を救おうとしたんですが、彼は軍人であって政治家ではなかったのです。もっとも彼は農業改革を導入したり、現在でも施行されているウガンダの憲法の改正をしたり、ラジオ局を建てたり、演劇のプログラムを作ったり、全くなかったビジネスクラスを形成したりしたんです。彼は四苦八苦してたんです。ただ徐々に命が狙われているという被害妄想から恐怖に怯え始め、それが怒りに変わり、権力だけで支配した腐敗の状態になり、無秩序な悲劇を招くことになったのだと思います。


フォレスト・ウィッテカーは、このほかに、USC(カリフォルニア州立大学)の学生だったときに音楽の学科でクラシカルやオペラの勉強をしていて、演劇の先生から、オーディションを受けてみないかと言われ、芝居の世界にスウィッチしたことや、映画『ゴースト・ドッグ』でMeditation(瞑想)に目覚めたことなど話してくれた。わたしがこの映画を観て感じたことは、独裁者も一人の人間で、世の中に対する屈折した憎しみや不安が、やがて人を信じられない人物を作り上げていったのではないだろうかと感じた。
細木プロフィール
海外での映画製作を決意をする。渡米し、フィルム・スクールに通った後、テレビ東京ニューヨ−ク支社の番組モーニング・サテライトでアシスタントして働く。しかし夢を追い続ける今は、ニューヨークに住み続け、批評家をしながら映画製作をする。
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