シネマトゥデイ

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私的映画宣言 セカンド・シーズン2月

鴇田崇 高山亜紀 今祥枝 中山治美 前田かおり 相馬学

執筆者の近況など

鴇田崇 中山治美
とある事情で取材当日に編集者が不在に。軽い気持ちで仕切り役を買って出たもののトラブル続出!! 雨天で屋外撮影がおすわ、取材用の会議室が停電だわ、撮影用に借りた店舗の人には文句言われるわで、肝心のインタビュー時間にはヘトヘト。2007年も相変わらずのダメ人間っぷりでございます。 友人と京都へ。二条城は豪華な襖絵が見所だが、将軍の寝室だけは水墨画。「ベルサイユ宮殿なんて寝室も派手。あれじゃ落ち着かんわ」(by友人)。『マリー・アントワネット』では理解出来なかったマリーの心を、まさかの二条城で学びました。
前田かおり 相馬学
そろそろ花粉症の季節。薬を飲むと猛烈な眠気に襲われるので、昨年、耳鼻科に行かなかったら、通年、花粉症になった。今年は行くぞ、早めに……。って、もう花粉舞ってますね。 映画のロケ取材のため新潟の雪山へ。深夜におよぶ撮影は氷点下10度の下で行なわれることもあると聞き、寒さにブルッていた自分のヤワさを反省。スタッフの方々は皆みごとに雪焼けしていて、まさしく精悍。映画を1本作るのに、膨大なエネルギーが費やされていることを改めて実感した旅でありました。

 ラストキング・オブ・スコットランド
(C) 2006 TWENTIETH CENTURY FOX
  かつてのウガンダの独裁者、アミン大統領政権の内幕を大胆に脚色した社会派サスペンス。孤独な権力者の光と影を、側近の青年医師の視点で描く。権力の魅力 に負け、堕ちて行く若い医師を演じるのは、『ナルニア国物語/第1章:ライオンと魔女』のジェームズ・マカヴォイ。大統領を演じるのは、『パニック・ルー ム』のフォレスト・ウィッテカー。二面性を持つカリスマの狂気を見事に演じ切った彼の鬼気迫る演技は必見。

フォレスト・ウィッテカー
ジェームズ・マカヴォイ
ケリー・ワシントン

監督: ケヴィン・マクドナルド
   
相馬学   作品評価4 好き度4
独裁者アミンの話と聞いて『食人大統領アミン』のよりえげつないバージョンを期待したが、そこはアカデミー賞にも名を連ねる作品、そうなるはずもなく、しかしドラマ的な見応えに満足。アミンではなく彼の側近となるスコットランドの若造に視点を絞っており、ヌルい気持ちでアフリカを訪れた彼が痛い目に遭うという展開が、なんともヘビーな後味を残す。お気楽に生きることが悪いとは思わないが、それが通用しない世界が存在することは知っておくべきだろう…などと考えていたら、いきなり『テキサス・チェーンソー』ばりのアイタタタな拷問描写が飛び込んできて意表を付かれた。いずれにしても、ヌルい気持ちで対峙する映画ではありませんな。
中山治美   作品評価4 好き度4
  筆者の初めての海外旅行はケニヤ。首都ナイロビの路上で、金をねだる母親の隣で、大便を垂れ流ししながら乳飲み子が路上に転がっていた。その一方で、モイ大統領(当時)を乗せた高級車がサバンナを爆走しているのを見た。ちょうどその頃、海外からの支援金を官僚たちが私用で使っていた事実も問題に。本作品の主人公、ウガンダのアミン大統領しかり、多くの政治家が貧しき人たちのために立ち上がったはずだ。だが、権力は人間を狂わすことを本作品はリアルに描き出す。ちなみに製作は、アミン大統領成立に荷担した英国というのが感慨深い。この映画を作ることが英国&ウガンダ双方の贖罪なのか。それでも哀しいかな。歴史は繰り返す。
前田かおり   作品評価4 好き度4
  私の中でフォレスト・ウィテカーといえば、『クライング・ゲーム』で主人公をのっぴきならない世界に引っ張り込んだ罪な男。本作では世間知らずの青年医師をまんまと自分の世界に引き込む独裁者アミンをリアルに演じているが、屈託のない笑みが凄みに変わる瞬間は背筋がゾクっとするほど怖い。役者魂、賭けた彼の演技は脱帽ものだ。それにしてもアミンと青年医師の関係を見るにつけ、カリスマ指導者に賢い若者たちが惹きつけられ、気づいたら犯罪の片棒を担がされてたという構図が浮かぶ。結果、天国から地獄に突き落とされる主人公を演じたジェームズ・マカヴォイ。切迫した表情からはとても『ナルニア王国』のタムナスと同一人物には見えません。


 ボビー
(C) 2006 BOBBY, LLC ALL RIGHTS RESERVED.
  1968年のロバート・F・ケネディ暗殺事件当夜、アンバサダーホテルに集った22人に焦点を当てた人間ドラマ。“ボビー”の愛称で国民に愛されたアメリ カ大統領候補が凶弾に倒れるまでの一日を、彼に希望を託した人々の人生を通して描く。『世界最速のインディアン』のアンソニー・ホプキンスや『氷の微笑 2』のシャロン・ストーンら豪華キャストが集結。当時の映像やスピーチを織り交ぜて見せる映像のリアルさに圧倒される。

アンソニー・ホプキンス
シャロン・ストーン
デミ・ムーア

監督/脚本: エミリオ・エステヴェス
     

相馬学   作品評価3 好き度4
1960年代後半といえば古きよき理想のアメリカが終焉を迎えた時期として知られているが、リベラルもノンポリもヒッピーもユルく共存する、そんな時代の群像劇として、まず興味深く見た。そしてその時代の理想を今に活かしたいという作り手の意思にも唸る。アメリカが、ひいては世界が、ロバート・ケネディの理想とは遠いものになってしまった現実。それに目を開かせるという点で、意義深い映画だと思う。ラストのケネディの演説が長すぎるため、焦点がボヤケてしまうのは難ではあるが。俳優陣の贅沢なキャスティングも見ものだが、シャロン・ストーンとデミ・ムーアを並べて“女には賞味期限がある”などといわせるエミリオの意地悪演出にニヤリ。
中山治美   作品評価3 好き度3
  ギャルたちには分かるかな? この映画は別名“落ちぶれ俳優救済映画”って言うんだよ。まず、ホテル厨房のマネジャーを任される天然剃り込みの激しいおっちゃんはクリスチャン・スレーターと言って、演技派で“ヤング ジャック・ニコルソン”なんて呼ばれてたんだよ。美容院のマダムは、顔が崩壊しているけど、かつてのセクシー女優シャロン・ストーンでしょ。歌手役のデミ・ムーアは、監督エミリオ・エステヴェスの元婚約者。そしてこの監督も、トム・クルーズと一緒に“ヤングアダルト・スター”なんて呼ばれてチヤホヤされていたんだから。あっ、ヤングアダルトスター、これも死語ね。そんなかつてのスターたちの成れの果てを楽しんでネ。
前田かおり   作品評価3 好き度3
  父親のマーチン・シーンがケネディ家の熱烈な支持者だったことから、筋金入りのリベラル派のエミリオ。取材ではボビーへの思い入れを熱く語っていたが、そんな彼の情熱にほだされたアンソニー・ホプキンスや元カノのデミ・ムーアなど豪華キャストが一律2千ドルのギャラで出演……。父と暴れん坊な弟チャーリー・シーンの影に隠れてた感のあるエミリオだが、さすがブラッド・パックの代表格として鳴らしただけのことはあった。でも、出てもらった恩を感じすぎたのか、人物描写まで一律な感じ。表層的な面も否めないのは残念。とはいえ、古き良き時代のアメリカを描き、もっともアメリカらしい作でリベラルなハリウッド人受けしそうなのにオスカーに全く引っかからなかったのは摩訶不思議なんですが……。

 パフューム ある人殺しの物語
(C)2006 Constantin Film Produktion GmbH / VIP Medienfonds 4 GmbH & Co. KG / NEF Productions S.A. / Castelao Productions S.A.
  世界45か国で発売され、1500万部の売上げを記録したパトリック・ジュースキントのベストセラー小説を映画化。『ラン・ローラ・ラン』のトム・ティク ヴァが監督を務め、美しい女性の香りを手に入れるため、恐怖の連続殺人鬼と化していく男の物語を描く。驚異的な嗅覚を持ち、一切の体臭を持たない主人公を 演じるのは『ブライアン・ジョーンズ ストーンズから消えた男』のベン・ウィショー。目を疑ってしまうような、驚きの結末に注目したい。

ベン・ウィショー
ダスティン・ホフマン
アラン・リックマン

監督・脚本・音楽: トム・ティクヴァ

     
相馬学   作品評価3 好き度3
シリアルキラーものの割には上品な作りで、血のりの量も全然少ないから女の子にも安心して勧められるが、スプラッター好きの自分には描写的には退屈。“匂い”を映画で伝えるのは難しいなあ、と思わずにいられない。しかし、トンデモなクライマックスにすべてがブッ飛んだ。詳しく書けないのは歯がゆいが、酩酊の極地で脳ミソが溶け出しそうになったというか…。このシーンが象徴するものが“愛”ではなく、セリフで語られように“二日酔い”であるなら、これはとんでもなくアナーキーな話。“匂い”で世間を挑発した男の反社会的な闘いの記録として見ると面白いかもしれない。主演のベン・ウィショーの“顔力”にもインパクトがあって○。
中山治美   作品評価4 好き度4
  ドバイ→ナイロビまでのパキスタン航空に乗った時、機内に充満するスパイシーな体臭がすっかりクセになってしまったワ・タ・シ。同じ匂いフェチの主人公・グルヌイユに共感バリバリ。グルヌイユが、究極の香水集めのために殺害した女性陣が好みのタイプかどうかは分からないが、好きな人の香りを小瓶に封じ込めて、好きな時にクンクン嗅ぐってみてぇ~。しかもグルヌイユが完成した香水は、たった一滴であらゆる人々にすんごい効果をもたらしちゃうんだぜ。あぁ、一度でいいから嗅いでみたい。その他、普通の香水の作り方なんかも丁寧に描かれていて、女性なら誰でも興味津々のはず。人を好きになる時はルックスだけじゃないのだ。匂いもポイントね。
前田かおり   作品評価5 好き度5
  名前が「かおり」なもんで、ちと匂いフェチです。その昔、ちょいいいコロンをつけてる殿方と町ですれ違うと、後をついて行きたくなったりしてました。若干グルヌイユ体質がある私です(笑)。それにしても、映像に映らない匂いを映し出そうとあの手この手を凝らしてるティクヴァ監督。18世紀のパリのリアルな再現や匂いの対象物をなめるようにカメラで追うこだわりが、観客にグルヌイユの嗅覚を体感させる。タイトルからはおよそ想像もつかないグロなシーンもあれば、息を呑むようなエロティックなシーンもあり、あまりに純粋で愚直で滑稽なグルヌイユは哀しくも見えてくる。唖然、呆然となるクライマックスの狂宴とその後のオチまで私はかぶりつき。

 今宵、フィッツジェラルド劇場で
 
  『ショート・カッツ』などの巨匠、ロバート・アルトマン監督の遺作となった極上の音楽コメディ。30年あまり続いた音楽バラエティショーが放送を終了する最後の夜の様子を、流れるようなカメラワークでみせる。実際、長年ラジオ番組の司会を務めてきたギャリソン・キーラー本人が舞台を盛り上げ、『プラダを着た悪魔』のメリル・ストリープらが美声を披露。さまざまな人間模様がからみ合い、最高のハーモニーをつむぎ出すラストは圧巻。

メリル・ストリープ
リリー・トムリン
リンジー・ローハン

監督・製作: ロバート・アルトマン
     
相馬学   作品評価4 好き度4
撮影に『マグノリア』のポール・トーマス・アンダーソン監督が立ち会ったと聞くと、アルトマンも最後の映画であると自覚していたのでは?という疑問がよぎる。実際にこの遺作を見てみると、そんな考えがさらに深まった。芸人たちの朗らかな生がそこにある一方で、天使と説明される“デンジャラス・ウーマン”なるキャラクターは死を象徴しているととれなくもない。それは淡々とした生と、すぐそこにあるあっけない死の対比にも思えるし、生と死に大差ナシという鬼才の達観もみえてくる。そして何より、それを踏まえて見ると、ラストにはアルトマンらしい毒気がジワーとにじみ出ていることに気づくだろう。反骨映画に殉じた鬼才に合掌。
中山治美   作品評価3 好き度2
  『ボビー』と配給会社が同じ。この会社、三谷幸喜系の作品がお好みのようで。筆者が米国版『THE 有頂天ホテル』だと思っている『ボビー』に対し、こちらは米国版『ラヂオの時間』。まさか三谷監督とアルトマン監督が同じセンスだったとは! ただ、本作品が遺作となったアルトマン監督には申し訳ないが、どうも鼻に付く事が。アカデミー常連女優メリル・ストリープの存在だ。本作品で彼女が演じるのはカントリー音楽のベテラン女性歌手。彼女が登場する度に「ほ~ら私、歌も歌えて、おまけに片田舎に住む歌手のくたびれた感じも醸し出せて、この演技、文句ないでしょ!? おーほほッ」てな高笑いが声が聞こえてきそう。巧すぎるのも、嫌味ですから。
前田かおり   作品評価5 好き度5
  豪華キャストによる群像劇が流行だが、亡きアルトマンこそが元祖。そんな彼の遺作。巨匠自身は次回作の準備をしていたらしいから、これが人生最後の作と思ってなかったのだろうが、登場人物たちのシニカルな描き方に人生の幕引きを感じてたのかも。そんな作品に集まった俳優たちも芸達者揃いで、巨匠の傑作『ナッシュビル』で抜群だったリリー・トムリンがメリル・ストリープと組んで歌う。ジョン・C・ライリー&ウディ・ハレルソンのコンビで歌う下ネタ満載の歌も痛快。探偵役のケヴィン・クラインも粋な演技をする。ラジオショー自体も興味深いが、他の作品ではめったにお目にかかれない名だたる俳優たちの歌やコミカルな演技は必見。巨匠亡き後、誰が彼らの味を料理するのかな?


偏愛映画宣言

だれが何と言おうとこの映画を愛します宣言! 
ライターが偏愛してやまない1本をご紹介!

 松ヶ根乱射事件
前田かおり
(C) 2006 シグロ/ビターズ・エンド/バップ
 バブル期を都会から見つめ直したのが公開中の『バブルへGO!!……』なら、田舎から振り返ってみたのが本作。
といっても『松ヶ根乱射事件』の時代背景はバブル経済が崩壊した1990年代初頭。都会からはるか遠くの田舎町で起こる人間関係の崩壊図が、双子の兄弟を語り部にサスペンスフルに描かれる。田舎街のドロっとしたエロスを、あくまで“田舎ってこんなはず”というイメージとして捉え、バブル以降の淀んだ空気としてスクリーンに炙り出している。それは帝銀事件や阿部定事件に象徴される“昭和”のまがまがしいミステリアスな部分だ。見たくもないモノを見せられた気分になるが、そんな時代に多感な思春期を過ごした世代にはたまらないと思う。
近頃、昭和への回帰でノスタルジックな作品がウケる風潮があるけれど、30代の僕が“戻る”にはバブル期あたりがちょうどいい。山下監督同様、僕も直接バブルを知らないので浮かれてた時代への空想と憧れは強いなぁ。
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