シネマトゥデイ

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私的映画宣言 セカンド・シーズン4月

鴇田崇 高山亜紀 今祥枝 中山治美 前田かおり 相馬学

執筆者の近況など

中山治美 高山亜紀
映画会社の皆様から「だったら、試写に来いよ!」としかられそうだが、3月は7本の舞台観劇。楽しみにしていた某ミュージカルより、軽~い気持ちで観に行った(失礼!)若尾文子主演の翻訳劇「セレブの資格」に拍手。英国階級社会ならではの慇懃(いんぎん)だけど嫌味たっぷりなセリフの応酬は、映画『クィーン』にも通じる笑い。英国バンザイ! 確定申告前の忙殺時期はiPodで『ドリームガールズ』のサントラ、しかも「Patience」を中心に聞いていました。が、最近はもちろん『ラブソングができるまで』の「POP! GOES MY HEART」を聞いてます。バカになりそうなほど聞きやすいメロディーと歌詞。ロックは人格を破壊するけど、ポップスは着実に脳を破壊していくなぁ。
相馬学 前田かおり
取材でサンフランシスコのILM(インダストリアル・ライツ&マジック)へ。スター・ウォーズ関連の展示物に異様に盛り上がり、一瞬仕事を忘れる自分……。とにかく、『スパイダーマン3』も凄そうだが、『トランスフォーマー』も大変なことになっていそうで、この夏の大作群はいろいろ楽しみであります。 六本木に東京ミッドタウン完成。学生時代から20代、この近辺でバイトしてたり、元ここにあった建物に亡き叔父が勤めてたり……。世間じゃ、お祝いムードたっぷりだけど、見る度に、時の流れをしみじみ感じ、春から切なくなる今日このごろ。

 ブラッド・ダイヤモンド
(C) 2007 Warner Bros. Entertainment Inc.
  1990年代後半のアフリカ、シエラレオネでの激しい内戦を描いた社会派アクション映画。“ブラッド・ダイヤモンド”というダイヤモンドの不正な取引をめぐって起きる不毛な争いをサスペンスフルに描く。元傭兵の密売人にレオナルド・ディカプリオ、やり手の女記者にジェニファー・コネリー、家族を愛する漁師 役には実際にアフリカ出身のジャイモン・フンスーがふんし、緊迫感あふれる迫真の演技でみせる。地域紛争が激化する“ブラッド・ダイヤモンド”の現実問題 に言及した内容について、米国務省が批判したことでも話題となった問題作。

レオナルド・ディカプリオ
ジェニファー・コネリー
ジャイモン・フンスー

監督: エドワード・ズウィック
   
中山治美   作品評価4 好き度4
レオ造、ゴメン! 本年度アカデミー賞主演男優賞にノミネートされた際、わたしは視聴率アップのための“噛ませ犬”だと思っていたが、本作品を観て反省。「お笑いウルトラクイズ!!」も真っ青の、容赦ない爆破シーンの中を駆けずり回り、出来上がった作品はダイヤモンド業界を慌てふためかせた程の、核心を突いた内容だ。いいねぇ、こういう作品を選択する気骨溢れる精神。しかもレオ演じるダニーが、ヒーローじゃないってのも面白い。あくまで大金を呼ぶダイヤモンド欲しさに、内戦中だろうが構わずジャングルの奥地に向かう生命力溢れた男。「レオ、カッコイイじゃん」と思えたのは『ロミオ&ジュリエット』以来かも。長い道のりだったな(泣)。
相馬学   作品評価4 好き度4
  気楽に楽しめる冒険活劇と思いきや、これが意外に硬派な社会派ドラマ。アフリカ内戦国の反政府軍の資金捻出や軍備増強の実態が血塗られたダイヤを通して描かれており、怒りを覚えたり考えさせられたり。とりわけ、拉致した少年を兵士として養成するシークエンスは子を持つ身にはゾッとさせられた。オスカー候補となったディカプリオもフンスーも、それぞれに頑張っているが、一家の長としての生への真剣さが伝わってくる後者の熱演はとりわけ印象深い。「白人がダイヤを欲しがるのはわかる。でも、なぜそのために黒人同士が争う?」という、ごもっともなその叫びは心をわしづかみにして離さない。こういう映画を力作と呼ぶのだろう。
前田かおり   作品評価3 好き度3
  いつの間にか、ディカプリオも三十路に突入。なのに、今だに身を固めてないからか、どこかお子様なイメージ。でも、今回演じた目的を遂げるためには“こすっからい”ことも平気でやる傭兵上がりの密売人という役で、ついに大人な俳優に脱皮。なかなかワイルドっす。ジェニファー・コネリーとのロマンスも決して浮いて見えず、しかも、クライマックスのヒロイックな行動で、女性ファンのみならず、ロマンチストな世の男性たちの心をわしづかみしそう。ホント、カッコ良すぎで、久々にハリウッドのスター映画を観たような印象。オスカーの助演男優賞にノミネートのシャイモン・フンスーの気迫に満ちた演技も見応え十分。ただし、冗漫すぎる。これってズウィック監督(『ラスト サムライ』の監督)の悪癖か。


 クィーン
(C) 2006 GRANADA SCREEN (2005) LTD/PATHE RENN PRODUCTION SAS/BIM DISTRIBUZIONE.
  1997年8月31日に交通事故で他界したダイアナ元妃をめぐって、揺れ動く英国王室の内実を描いた衝撃のドラマ。英国と王室に造詣が深い『危険な関係』 のスティーヴン・フリアーズが監督を務め、事故からダイアナ元妃の国葬が執り行なわれる数日間の英国王室、エリザベス女王の一挙手一投足にスポットを当て る。女王役は『カレンダー・ガールズ』の名女優ヘレン・ミレン。これまで語られなかった“あの日”を鋭い視点で描き出す。

ヘレン・ミレン
マイケル・シーン

監督: スティーヴン・フリアーズ
     

中山治美   作品評価5 好き度5
主演女優のヘレン・ミレンの演技に注目が集まっているが、筆者がズキュンと胸を射抜かれたのは秀逸な脚本。ダイアナ元妃の事故死を舞台に、英国社会のさまざまな要素をギュッと凝縮。なかなか見ることのできない、女王の役割と王室のしきたり、そして生活。その女王を中心に成り立つ政治。伝統を思んじつつも、“大衆の声”に敏感に反応する愛らしさ。加えて、女王を取り巻く人々のキャラクターもファッションや言動できっちりと個々を際立たせ、群像劇としても秀逸だ。で、見終わってみれば女王の偉大さと、ダイアナ元妃がいかに多くの人々に影響を与えたのかを考察させられた。アカデミー賞のご褒美で女王はミレンたちをお茶に招くとか。これも“大衆の声”のおかげ!?
相馬学   作品評価4 好き度3
  「今の世の中は大げさなパフォーマンス」と言う女王の最後のセリフに、集約された作品のテーマがグッと迫る、アカデミー賞作品賞ノミネートも納得の佳作。気品とか慎みとか、そういうイギリス社会の古き良き価値観が、ブレアの演説パフォーマンスに代表される“言ったもん勝ち”の時代の波に押し流される事実が重く、切ない。そのブレアが数少ない王室擁護派であるという皮肉な設定も、ドラマの構図として面白い。王室と政府いうデリケートな題材を、存命のご本人たちに臆せず描ききったスティーヴン・フリアーズの意気込みは、ヘレン・ミレンのソックリさん演技ともども買い。この映画に対するエリザベス女王ご本人の感想をぜひ聞いてみたいものだ。
前田かおり   作品評価4 好き度3
  今やオスカーを狙うなら、ソックリさんを演じろ! なんて感じだが、そんな中でも、存命中の英国女王を描くというのは高度なチャレンジ。しかし、女王もさることながら、ブレア首相の妻はお下品な人として描かれたまんまでフォローなし。大丈夫なのか……。ともあれエリザベス女王を演じたヘレン・ミレンの激似ぶりは素晴らしい。(テレビドラマ「第一容疑者 姿なき犯人」の彼女の演技も必見だが……) そんな彼女が王室内での女王の日常を演じて、一般ピープルの好奇心を満たす。言ってしまえば「家政婦は見た!」のような覗き見趣味に応えた作品ってところで、サブタイトルはさしずめ『王室内に咲いたあだ花。死しても続く元嫁と高貴な姑の激しいバトル』ってとこでどうでしょう!?

 ロッキー・ザ・ファイナル
(C) 2006 Metro-Goldwyn-Mayer Pictures Inc., Columbia Pictures Industries Inc., and Revolution Studios Distribution Company, LLC.
  シルヴェスター・スタローンを無名の俳優から一躍スターダムに押し上げた『ロッキー』のシリーズの第6弾。第1作目から30年の時を経て、シリーズ完結編 となる本作では、夢を追い続け再びプロボクサーのライセンスを取得するために奮起し、無謀ともいえる試合に身を投じるロッキーの姿を感動的に描く。ロッ キー最後の対戦相手役、現役世界王者アントニオ・ターヴァーとの白熱のリングファイトに胸が熱くなる。

シルヴェスター・スタローン
バート・ヤング

監督・脚本・製作総指揮: シルヴェスター・スタローン

     
中山治美   作品評価3 好き度5
「今更、ロッキーかよ」と呆れ、「そんな短期間で現役復帰出来のかよ」とか「やっぱり老けたよな」とスクリーンにツッコミ、ついでに後日、「やっぱりその筋肉はステロイド使ってたのかよ」と分かっても、クライマックスのロッキーVS.米国版亀田? ディクソンのド突き合いに涙ダーッ、鼻水じゅるじゅるだ。若い人たちには理解出来ないかもしれないが、“ロッキー”世代の我々の中には強烈にそのDNAが刻まれており、体力増強に生卵飲み、両手を挙げれば「エイドリア~ン!」と雄叫びを挙げそうな勢いなのだ。ロッキーがリングに上がっただけで涙腺が緩み、点数も大甘になるのもお許し頂きたい。でも、もうこれでお腹いっぱい。『ランボー4』(原題)はtoo much。
相馬学   作品評価4 好き度5
  いい歳こいて、よくやるなあスタローン……という冷やかし気分で観たら、これが思ったよりイイ映画で驚いた。勝因は“負け犬ではないことを証明するためにリングに上がる”という、シリーズ第一作のスピリットに原点回帰したこと。人種や国を背負わない、ただ自分のためだけに闘うロッキーに拍手である。現役のヘビー級王者との戦いにいたる流れも、これなら在りうるという説得力で丁寧に見せる作りも○。最初は「笑い者になるだけ」といっていた息子が試合中に「もう誰も父さんを笑ってない!」と声をかけるシーンには泣けた。ロッキーが言ってこその説得力がある人生訓を含みの名セリフも、高齢化社会を生きる人間なら一度は耳を傾けるべき(?)である。
前田かおり   作品評価2 好き度3
  前作の『ロッキー5/最後のドラマ』から17年ぶりにボクシングに挑戦。しかも、スタローンは還暦過ぎてるってあたりで、懲りずによくやるよ……なんて思っていたし、作品としてはかなり甘~い出来。トレーニングシーンなんて昔に比べれば、少なめだし…。でも、恋女房には死なれ、息子には疎まれて、一人わびしく生きるロッキーが再び闘志を燃やしリングを目指す姿には目頭が熱くなってしまう、やられた! とくに本作は亡き妻エイドリアンとの思い出をたどるシーンがあり、『ロッキー』好きのツボを押しまくる。ロッキーの大親友ポーリー役のバート・ヤングが出てるのも懐かしさをさらにプッシュ。それにしても、ビル・コンティの名テーマ曲が流れると、運動会の定番ソング「天国と地獄」並みに血湧き肉躍ってしまうのは何故なんだ?

 ハンニバル・ライジング
 
  ベストセラー作家トマス・ハリスの生み出した“世界で最もインテリジェントなシリアルキラー”ハンニバル・レクターの過去に迫るシリーズ最新作。監督は 『真珠の耳飾りの少女』のピーター・ウェーバー。原作者のトマス・ハリス自身が脚本を手がけ、レクター博士が“人喰いハンニバル”となるまでを描く。主人 公ハンニバルを演じるのは『ロング・エンゲージメント』のギャスパー・ウリエル。シリーズの原点ともいうべき衝撃の展開に息をのむ。

ギャスパー・ウリエル
コン・リー

監督: ピーター・ウェーバー
     
中山治美   作品評価3 好き度4
『羊たちの沈黙』最大の見どころだったレクターとクラリスの心理戦なんてものはどこかへ吹っ飛び、シリーズ化されてからというもの、いかに猟奇的殺人の異常さをビジュアルで見せるかと犯人の鬼畜さに重点が置かれしまっているのが、いささか食傷気味。そこを 打破すべく盛り込んだのが、若いレクターを養育した“レディ・ムラサキ”の存在。賢明な人ならコン・リーがムラサキを演じている時点で感づいていると思うが、その解釈間違ってねぇか!? というツッコミどころが満載。もしかしたらタイトルの『~ライジング』は、伝説の女体盛りシーンが拝めるニッポン文化大勘違い映画『ライジング・サン』へのオマージュなのか!? ある意味、奥が深いな(笑)。
相馬学   作品評価2 好き度2
  主人公の名前が一度も劇中で聞かれなかったら、この人物が後にアンソニー・ホプキンス演じるハンニバル・レクターになるとは誰も気づかないのでは……そう思えるぐらい、今回のハンニバルはピンとこない。復しゅうに走るのは若気の至りでアリとしても、ちょっと暴言を吐いただけで首を斬られる精肉店主はお気の毒。『羊たちの沈黙』であれだけの観察眼を発揮した、そのバックボーンを少しは見せてほしかったが、それも不完全燃焼。自分に自白剤を射って仇(かたき)の名前を思い出そうとするアイデアは漫画的で面白いが、どうせここまでやるなら『ハンニバル』の内臓ドバーッ&脳ミソパックリのようなグロに走り、ジャンル映画に徹してくれた方がうれしかった。
前田かおり   作品評価2 好き度2
  二匹目のドジョウを狙え! というわけで、続編やスピンオフを作るのが当たり前になってますが、世間的に期待大なハンニバルの誕生秘話は正直トホホなことに。レクターの幼少期はよしとしても、その後、日本文化の影響を受けることになるというエピソードは日本人ならば脱力しそうなものばかり。原作者トマス・ハリスは日本文化をしっかりリサーチしたんだろーか、マジ疑問だ。それに日本人女性をコン・リーにやらせたところで、色気はあっても『SAYURI』の二の舞い。笑うしかない。個人的には『かげろう』の繊細な美少年だったギャスパーが影ある青年になり、殺人鬼と化すあたりはゾクゾクしますが……。『ハンニバル』シリーズはもうこれで封印して欲しい。


偏愛映画宣言

だれが何と言おうとこの映画を愛します宣言! 
ライターが偏愛してやまない1本をご紹介!

 ラブソングができるまで
高山亜紀
(C) 2006 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. - - U.S., CANADA, BAHAMAS & BERMUDA (C) 2006 VILLAGE ROADSHOW FILMS (BVI) LIMITED - - ALL OTHER TERRITORIES
 80年代カルチャーはどうしてこうも恥ずかしいのか。『バブルへGO!! タイムマシンはドラム式』では何度もいたたまれない気持ちになった。『マリー・アントワネット』だって、80年代音楽を使わなければ、もっとおしゃれだったはず。そんな俗悪80年代にダメ押ししてくれたのがこの映画だ。落ち目の元ポップ・スターと作家志望の女性が作詞・作曲コンビを組み、恋に発展していくラブストーリー。問題はこの元ポップ・スターが活躍した時代が80年代なことである。あの時代を知る人なら懐かしい、知らない人にはとんでもなく素っ頓狂なPVとともに、ヒュー・グラントが80年代スター扮装に挑戦。フリル衣装はDURAN DURAN、音楽的にはWHAM!、PVの下手演技はa-haっぽい? 観ていて、とにかく恥ずかしい。あの甘ったれ目なら、ポップ・スターもいけたかも。でも、そしたら買春より恥ずかしい人生が待っていたはずだ。彼は役者になって賢明だった。振り返る青春時代が自虐的ギャグのネタでしかないなんて、いくらバブル世代とはいえ、つけが大きすぎる。
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