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金城武
『傷だらけの男たち』
僕はどちらかというと自分をいじめるタイプです
『傷だらけの男たち』金城武 単独インタビュー

取材・文: 平野敦子 写真:亀岡周一

『インファナル・アフェア』シリーズのチームが再集結し、作り上げた男たちのドラマ『傷だらけの男たち』。今や世界を股にかけて活躍する金城武は、演技派のトニー・レオンとともに堂々とダブル主演を果たし、その実力を見せつけた。自分が演じた“ポン”と似ていると言う彼に、撮影での苦労話、共演者やスタッフについて、そして環境問題まで幅広い話題について語ってもらった。

■スコッチを飲みながらの撮影

Q:アル中の私立探偵を演じられた苦労話などを教えてください。

酔っぱらいの芝居というのは難しいと思うんですよ。やり過ぎるとなんとなく舞台っぽくなってしまうし、大げさになりがちだと思うし、ひょっとしたらコメディーっぽくなってしまう可能性もある。だから、こういうシリアスな作品の中で“酔っている”芝居をするときに、自分がどこまでできるのかというプレッシャーはありましたね。監督に「飲んで演じてもいいから、飲んでくれる?」と言われたので、「ぜひ飲ませてください!」と言ってスコッチを飲みながら撮影をしていました。飲みながら演じる上での最大の利点は、自分に自信がつくところですね。あとは監督が「もうちょっと飲んでこい」とか、「もう飲み過ぎだからちょっと控えて」とか、横で見ながら判断してくれました。

Q:トニー・レオンさんとの共演はいかがでしたか?

トニーさんとは一度『恋する惑星』で共演しているのですが、そのときは一緒のシーンがなかったんです。今回は一緒のシーンを撮影して、本当に素晴らしい方だと感じました。彼の芝居の安定感は、ケタ外れに「すごい!」の一言に尽きます。その100分の1でも自分にあればいいなぁ……と思いました。あと彼は自分が演じている役の理解の幅がとても広いと思いました。多分、僕が持っている自分の役に対しての理解力は、彼とは雲泥の差だと思います。彼は映画に関係ないことまで、すべて含んで自分の役を演じているんです。彼の役に対しての執着はすごいなと感じました。彼の芝居を見て、吸収できるものは吸収したいと思いましたし、見習いたいなと思うこともたくさんありました。

Q:ハリウッドでリメークされた『ディパーテッド』が大成功した、『インファナル・アフェア』シリーズのチームと組むことへのプレッシャーはありましたか?

特にないです(笑)。このオファーをいただいたときは、ただ単純にとてもうれしかったです。アンドリュー・ラウ監督は『恋する惑星』を撮影されていたころからよく知っているし、トニー・レオンさんとはすれ違いでしたが同じ『恋する惑星』という作品に出演していたし、アラン・マック監督は『世界の涯てに』という作品で助監督のチーフをされていたときに知り合っていたし……。「あぁ、良かった、彼らとまた一緒に仕事ができる」という思いと、あのころより格段にキャリアアップした彼らと、また一緒に仕事ができることがうれしかったので、プレッシャーを感じることはありませんでした。

■環境問題に心を痛める金城武

Q:この映画では人生のはかなさや無常さを描いていると思いますが、金城さんが人生の無常さを感じるのはどのようなときですか?

それはたくさんありますよ。例えば環境問題とか(笑)。日本だとゴミに集まるカラスを追い払うじゃないですか。あれには「なんでだろうな」と思うことがあります。結局あれは人間が出したゴミの問題なのに、「カラスが犠牲になるのはどうかな」と思うと切ないですね。台湾だとノラ犬が多いことが問題になっているなど、どの国でも色々な問題を抱えていると思います。町に住む以上、それはある程度仕方がないことなのかもしれないけれど、切ないことではありますよね……。

Q:撮影中何か心に残ったエピソードがあったら教えてください。

とにかく暑かった! 真夏に秋冬の服を着て走り回って、しかも僕は朝から酒を飲んでいるわけですから。撮影の後はアル中にはなりませんでしたが、ちょっとヘンな体になっちゃいました(笑)。

Q:お気に入りのシーンはありますか?

スー・チーさんと一緒のシーンですね。そんなにたくさんあったわけではないんですが、後で観て、二人の間の甘い雰囲気が感じられて良かったなと思いました。僕が演じた“ポン”は、彼女と出会うことによって徐々に立ち直ることができたんです。監督は数少ない恋人たちのロマンチックなシーンを上手にとらえていたんだと思いました。

■お母さんにはかなわない!?

Q:作品の鍵を握るのは二人の女性でもあるわけですが、ご自身が女性にはかなわないと感じるのはどんなときですか?

女性によっても違うと思うんですが……(真剣に悩んだ様子)。あぁ~、お母さんにはかなわないね(笑)! お母さんは好きだからいいんだけど、何だろうねぇ~。分かんない、分かんないです(笑)。

Q:主人公の2人は全然違うタイプですよね? “ヘイ”は傷ついた分その痛みを他者に向け、“ポン”は痛みを内に抱え込むのですが、ご自分はどちらのタイプだと思いますか?

僕はどちらかというと自分をいじめるタイプですね。自虐的とまではいかないですが、「何でこんなに悲しいんだろう?」とか「なんでこんなに怒るんだろう?」とか自分を問いつめる方だと思います。

Q:最後に今回の映画を楽しみにされているファンの方に一言お願いします。

とりあえず『インファナル・アフェア』シリーズだと思って観ないでください。これは結構重要なポイントです。僕がこれだけ口を酸っぱくして宣伝していても、映画を観た後、友だちが電話をしてきて「これ全然違うじゃん!」と言われるんですよ。僕は「ずっと違うって言ってるじゃん!」と答えるんですけどね(笑)。スタッフも一緒だし、トニー・レオンも出ているし、『インファナル・アフェア』シリーズのような感じかな……と期待して観ると、つまらなく感じてしまうと思うんですよ。まったくジャンルが違う作品なので、違う作品として観ていただきたいです!

金城武は誰が見ても格好よく、まさに“スター”のオーラを放っている。だからといって偉ぶるわけでもなく、丁寧に取材に応じ、ときには子どものような笑顔を見せてくれた。彼が突然、日本のカラス問題について語り始めたときはびっくりしたが、そのような視点で物事を見ている彼に好感が持てた。きっとそのナチュラルな姿勢が、彼の成功の秘けつでもあるのだろう。共演のトニー・レオンに心酔しながらも、彼から何かを学び取ろうとするしたたかさをも持ち合わせている金城。そのバランス感覚の良さで、今後もさまざまなシーンで活躍するだろう。

(C) 2006 Media Asia Films (BVI) Ltd. All Rights Reserved.

『傷だらけの男たち』は7月7日よりみゆき座ほかにて公開

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