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インターネットが無ければ、この映画をどうやって製作していけばよかったのか全く分かりません。現在ほとんどのTV局が、医療薬品会社から資金を供給してもらっている状態で、TVの夜のニュースでこのような宣伝はできなかったと思います。インターネットの発明は、本当に素晴らしいことで、一般の人々の意見が優先される民主主義社会の本来あるべき形態に導いています。-マイケル・ムーア− ~この人の話を聞きたい~その17:アメリカの医療システムにかみついたマイケル・ムーアの『シッコ』
これまでにアポなしの突撃取材で、果敢に大会社や政府を相手にしてきたマイケル・ムーア。今回は、医療薬品会社を相手に奮闘を繰り広げています。アメリカでは、公開前から世間をにぎわせ、メディアにたたかれ、さらには政府から追い回される始末。これだけいろいろなことが起こっても、伝えたいことがあるから撮影を続け、今作『シッコ』を作り上げました。ニューヨークで行われた記者会見からそんなムーアの思いを伝えます。
マイケル・ムーア
Q: まず初めに、カンヌ映画祭直前に搭乗した飛行機にフィルムを隠し持っていたそうですが、その経緯を教えて頂けますか?
 
(マイケル・ムーア)ブッシュ政府が、カンヌ映画祭が始まる10日前に、配達証明を送りつけてきました。
 
その内容は、9月11日のグラウンド・ゼロで活動した際に、医療保険を持たぬ負傷した救助隊員を、キューバまで連れって行ったことが、刑事・民事上の刑罰に触れるとして、現在その調査をしていると警告してきたものでした。確かに、ジャーナリスト以外のアメリカ人が、キューバを旅行することは違法ですが、ドキュメンタリー映画こそ、ジャーナリズムの1つの形態で、私は違法なことをしていません。
 
これは、単にブッシュ政権が、国の機関を利用して、私にハラスメントしただけです。この時点で、私の弁護士は、もしこの状態が続くのであれば、フィルムを守るためにを複製をして、そのマスター(オリジナル)をカナダに保管するよう指摘してきたんです。ただこの自由の国アメリカで、フィルムが没収されるかもしれないと心配すること自体が、馬鹿げていると思っています! もっとも、考えてみれば、ブッシュが政権に就いてから7年間、ずっとこの状態が続いているわけですけれどね……。
 
Q:あなたは、なぜアンチ・マイケル・ムーア掲げるWeb Siteの創始者を援助(彼の妻が抱えていた医療費を払ったこと)をしたのでしょうか?(一部のメディアでは、これが宣伝文句として面白いから映画内で使われたとしている見解があるため)。
 
(マイケル・ムーア)カンヌ映画祭で『シッコ』の最初の試写会が行われる1週間前に、私は彼に電話したんです。なぜなら、私のこの行為がメディアを通じて、先に彼に伝わり、彼に不意打ちを食らわしたと思われたくなかったからです。
 
実際は、彼の困惑を避けるためのものでした。電話した際に、ボイス・メールを残したんですが、その15分後に、その内容はオーディオ・ファイルとして彼のサイトに載り、その記載された文には、私が援助したことへの感謝と映画の成功を祈っていると書かれていた素晴らしいものでした。
 
この返答は、私の映画の撮影に協力したほとんどの人の予想に反したものでした。私だけが唯一、この親切な行為に対しての彼の返答は、たとえ政治的見解の違いこそあれ、この行為が自分の胸中から出てきたものであると理解していました。彼自身も医療費の心配をせずに、医者に治療してもらえるべきであることを望んでいると信じていたんです。
Q:一体どうして『シッコ』の映像(予告編ではない)がYoutubeなどを通じてインターネットに流れてしまったのでしょうか? あなたはこのことに関わっているのでしょうか?
 
(マイケル・ムーア)それでは、その話をちょっとしてみましょうか(笑)。今回インターネットを通じて流れていた映像は、ホーム・ビデオ・カメラなどを利用して映画館で撮られたような映像ではありません。これは、インサイダー(内部)の仕業でしょう。この問題について、もし仮にあなたが警察だとしたら、始めに問う質問は、その動機になるでしょう。
 
誰が、週末の興行収入を台無しにすることに関心があるか考えてみるわけです。私が、もし仮に警察やF.B.Iだったら、そういった点から調査を始めるでしょうね。もちろん、そうは言ってみたけれど、この手段で観てくれた人がいたことに関しては、結構喜んでいるんです。それは、現在の著作権の制限が厳しすぎると思っていて、例えば、私が読んだ本をあなたに薦められたら、著作権を違反している事にはならないでしょう!
 
それは、単に芸術作品を共有しているだけです。それに、もしあなた方がこの本を気に入ったら、Amazon.comでこの本を書いた著者のほかの作品を探したりすることもあるでしょう。そのため、共有自体はよい事だと思っています。ただ映画作家としては、映画館でほかの観客と喜怒哀楽をともにしながら、見ていただきたいのですね。実際、私がこれまでビデオ屋でDVDを借りた回数が10回程度くらいなのも、そういった理由です。
 
Q:近年のテクノロジーの変化が、あなたの映画にもたらした影響はありますか?
 
(マイケル・ムーア)私は、初めに一般の人々に自分が体験したヘルスケアに関する怖い話を、インターネットを通じて送るように頼んだんです。インターネットが無ければ、この映画をどうやって製作していけばよかったのか全く分かりません。
 
現在ほとんどのTV局が、医療薬品会社から資金を供給してもらっている状態で、TVの夜のニュースでこのような宣伝はできなかったと思います。インターネットの発明は、本当に素晴らしいことで、一般の人々の意見が優先される民主主義社会の本来あるべき形態に導いています。
Q: 正直、この国に変化がもたらされる事が、ありえるのでしょうか?
 
(マイケル・ムーア)私がドキュメンタリー映画を製作し続ける理由の1つとして、必ず物事は変化していくと信じていることにあります。特にアメリカ人は、今までウンザリするようなことに出くわした時に、人前で感情をあらわにしてきました。
 
たとえば、今年初めに、O.Jシンプソンの著書が、一般の人々の意見や反応によって出版されず、結果としてこの本を担当していた出版会社ハーパー・コリンズの編集者であるジュディス・リーガンを解雇に導きました。それは、一般の人達が、この本でO.Jシンプソンが利益を得るべきではないと思った正当な理由からでした。
 
このように、人々が欲する意思を持ち続ければ、起こりえることなのです。今、まさにアメリカの医療制度に対しての人々の怒りもそうであって、彼らは変化を要求しています。そして、私はこの映画が、彼らを奮い立たせる起爆剤になることを望んでいます。
 
Q:どうして前回の作品『華氏911』で日本に来日しなかったのでしょうか? そして、今回もまた題材に適した日本での撮影をしなかったのでしょうか? 最後に、この長い撮影過程で何に一番苦労をされたのでしょうか?
 
(マイケル・ムーア)いつか、日本に行けることを楽しみにしています。私は、今まで日本に一度も行ったことはなく、日本には素晴らしいヘルスケアのシステムがあるのを知ってます。映画『華氏911』の日本での興行収入は、アメリカを除いた世界の興行収入の中でナンバーワンでした。正直、あの映画が、これほど日本で受けるとは思いもしませんでした。だってイギリス、フランス、ドイツより多かったわけですから……。
 
それから、なぜ日本で撮影しなかったかと言うと、行くまでの時間が長すぎるからです(笑)。ようするに、アメリカ人の典型的ななまけぐせで、日本人みたいなワ−ク・エシック(労働観)を持ち合わせていないです(笑)。最後に一番撮影中に辛かったことは、インタビューをしていた人たちが、撮影中にお亡くなりになったことです。


アメリカでの公開後も、映画内容が一方的観念だと批判されているが、彼が過去に制作してきた映画が現在を証明してくれる。映画『ロジャー&ミー』で扱われたGM(ゼネラルモーターズ)の経営は、現在は風前の灯火で、『ボウリング・フォー・コロンバイン』では、つい数か月前にヴァージニアで全米最悪の乱射事件が起きたばかり、『華氏911』から、さらに現在アメリカ政府が苦境の状態に陥っている。自分の意志を貫き主張してきた彼は今、多くの疑惑と不安を抱くアメリカ人等と共に、メイン・ストリームを歩き始めた。
細木プロフィール
海外での映画製作を決意をする。渡米し、フィルム・スクールに通った後、テレビ東京ニューヨ−ク支社の番組モーニング・サテライトでアシスタントして働く。しかし夢を追い続ける今は、ニューヨークに住み続け、批評家をしながら映画製作をする。
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