シネマトゥデイ

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ジョディ・フォスター
『ブレイブ ワン』
“正義”や“モラル”に対する答えではなく問いかける映画
『ブレイブ ワン』ジョディ・フォスター 単独インタビュー

取材・文:南樹里 写真:秋山泰彦

『告発の行方』『羊たちの沈黙』で2度のアカデミー賞主演女優賞に輝いたジョディ・フォスターが、物語にほれ込み製作総指揮を務めたサスペンススリラー『ブレイブ ワン』。ジョディは、オリジナル脚本でしかメガホンを握らないことで有名な『クライング・ゲーム』の監督ニール・ジョーダンを口説き落とした。彼女が演じるのは、ニューヨークの今を伝えるラジオパーソナリティーのエリカ。幸せの絶頂時に愛する者を殺された結果、驚くべき選択をする女性を熱演したジョディに話を聞いた。

■“一線を越えてしまう”ヒロイン

Q:このプロジェクトのどういった部分に惹(ひ)かれたのでしょうか?

プロジェクトの始まりは、かなり前のことなの。最初の脚本では、主人公は新聞記者だったわ。事件の真相を探るミステリー風で、自警行為に走るダーク・アクションだったの。それを少し知的に磨き上げるために脚本を何回も練り直して、これぞ人間っていうリアルさや内面を描くことに成功したのよ。ごく普通の人間が“一線を越えて”モンスターになるキャラクターにしたかったの。そもそも一般的に、女性は見知らぬ人を殺す傾向になりえないらしいの。だから、“一線を越えて”しまうエリカの動揺や混乱ぶりは、とても興味深かったわ。最愛の人を失った悲劇をきっかけに、別の人格が芽生えるという、普通では理解し難いことが起こるの。そして、最終的には彼女の行動に対して、共感できる物語になったと思うわ。

Q:エリカの役作りについて教えてください。

新聞記者の役を、ラジオのパーソナリティーにしたのはわたしのアイデアなのよ。いろいろなリサーチをしたんだけど、まず、ラジオの仕事を知るために、ロサンゼルスのラジオ局を見学したわ。パーソナリティーが座るブースの中は、窓もなく隔絶された独特の世界だったわ。顔の表情や体をまったく使うことなく、すべてを声のみで表現するのがエリカなの。そこでヘッドホンをつけて自分の声だけを聴いてみると、その声はまるで音楽のように旋律豊かに聞こえてくるのよ。それから昼夜を問わず、エリカが仕事のときに、レコーダーで街の音を拾うときのように、ニューヨークの街をたくさん歩いたわ。あとはPTSD(=心的外傷後ストレス障害)についても調べたわ。

Q:そういったリサーチをされた中で、何か新しい発見がありましたか?

エリカの番組の放送は夜だから、話し声に特徴があって、その語り口を映画全体のトーンにできる! って気付いたことね。それか「ニューヨークの街を歩き回った」って話したけど、それが長時間になると、周囲の音や目的とかは頭の中からすっかり消えてしまって、瞑想(めいそう)状態になれる! ってことを発見したわ。それを知って、エリカの役作りに生かしたの。つまり、ある意味エリカは独特の世界を持ち、頭の中で暮らしているようなタイプの人ということね。

■“正義”そして“モラル”とは

Q:本作における“正義”とは、何だと思いますか?

この映画の正義をはとても複雑だと思うわ。エリカは自分の行動とそれが招く結果も含めて、すべてを理解していたはずよ。正義や裁くことの意味、暴力がすべてを破壊してしまうことも。被害者として、法で裁くのではなく自分の心情に沿った罰し方を求めた結果、犯罪者を裁く正義の処刑人として究極の裁きを下す。それは法に触れるし、間違った選択だと分かっていても自分では抑えることができなかったのね。それと同時に誰かに止めて欲しいとも願っていたと思うわ。

Q:では『ブレイブ ワン』での“モラル”について、どのように考えますか。

『ブレイブ ワン』は、モラルを描くタイプの作品とは少し違う気がするの。確かに物語の中で、多くの問いを投げかけてはいるけれど、答えは提示していないわ。こういった“一線を越える”という境界線って、とてもあいまいだと思うの。そんなふうには決してなれない! って頭ではモラルや正義を理解していても、特にそれを問われる状況下では自分がどんな人間になるのか分からないもの。だからこそエリカは、テレンス・ハワードが演じたマーサー刑事のことを自分のモラルと対を成す相手として見ているの。彼は決して、“一線を越える”タイプではないし、彼なら自分を救える! と思えたから。

■ヒロインの選択に注目してほしい

Q:『フライトプラン』の撮影現場で、監督を驚かすために“お菓子の箱にネズミを入れる”というイタズラをなさったそうですが、今回はいかがでしたか?

そうそう、わたしったらそんなことをしたのよね(笑)。『ブレイブ ワン』の撮影はシリアスだったから、イタズラは一切していないわ! それと、あのネズミは家に連れて帰ったんだけど、白くて小さくてとってもかわいいのよ! 最初は男の子だと思ってたけれど、女の子だったから“リリー”って名前をつけたの(笑)。3年ぐらい家で元気にしていたけれど、ある朝急に死んじゃって……とても悲しかったわ。それで調べてみたら、白ネズミの平均寿命からすると、リリーの3年間はとても長生きだったみたい。自宅の裏庭に穴を掘ってリリーを埋めたわ。アイスキャンディーの棒を十字の形にして、墓標にしてあるのよ。

Q:最後に映画を観賞した観客に、投げかけたいメッセージはありますか?

基本的に観客に委ねたいと思っているの。自分ならエリカと違う反応をする! と思うかもしれないけれど、実際に彼女の立場になってみなければ分からないことだと思うわ。わたしが脚本を読んだときに一番驚いたのは、彼女の選択ね。きっと観客も驚くと思うの。観た人それぞれが感じたまま、それぞれのモラルで映画を楽しんでくれればいいと思うわ。

本作で、恋人とラブラブの姿を見せていたかと思えば、銃を手に夜の町をさまよう……など、多くの顔を見せてくれたジョディ。しかし、インタビュー部屋に現れたジョディは、劇中で見せた悲痛な叫びや、気迫あふれるパワーの源は一体どこから? と思うほど、華奢(きゃしゃ)な女性だった。そして、作品に対する思いを熱心に語るその瞳は、吸い込まれそうなほど青く透き通っていた。そんな彼女が渾身の演技を披露し、観客に対して投げかけた多くの問いを、ぜひ劇場で受け取って欲しい。

『ブレイブ ワン』は10月27日よりサロンパスルーブル丸の内ほかにて全国公開

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