シネマトゥデイ

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宮沢りえ&加瀬亮
『オリヲン座からの招待状』
不幸を知らなかったら、幸せはないと思う
『オリヲン座からの招待状』宮沢りえ&加瀬亮インタビュー

取材・文:シネマトゥデイ 写真:亀岡周一

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『たそがれ清兵衛』や『花よりもなほ』で、今や日本を代表する女優の宮沢りえ。そして『それでもボクはやっていない』『硫黄島からの手紙』で注目され、演技派として頭角を現している加瀬亮。2人が“オリヲン座”という映画館を舞台に、純粋な愛を貫き通した男女の姿を美しく演じた『オリヲン座からの招待状』。東京国際映画祭でも話題になった本作の主演2人に話を聞いた。

■試行錯誤しながら撮影した共演秘話

Q:お互いの印象を聞かせてください。

宮沢:この作品は、とても想像力をかきたてられる台本だったので、監督やスタッフや加瀬さんや、わたしの想像力をいつも現場でぶつけ合って、試行錯誤していた現場だったんです。わたしは、役者さんは普段は何をやってもいいと思うんですけど(笑)、ものを作るときだけは誠実だってことが基本であってほしいという気持ちがあるんです。加瀬さんからも、そういう思いを強く感じて、刺激になりました。

加瀬:宮沢さんは、面白い人ですね。いつも愉快に生きてるんだなあという感じがしました(笑)。でも多分、1回「登ってみたい!」と思うようながけがあると、頂上に向かって、どんどん挑戦するし、失敗もする。手探りでやっている感じが本当に楽しかったですね。

宮沢:でも、がけの方向を教えてくれるのは加瀬さんなんですよ。「こっちはがけですけど行けますよ」といばらの道ばっかり教えようとするんです(笑)。で、わたしは単純なんで「そっかあ」ってそっちに行っちゃうみたいな……。

Q:お互いの演技の中で印象的だったシーンはありますか?

宮沢:毎シーン毎シーン、みんなで話しあったり、葛藤(かっとう)があったり、喜び合ったりしながらやっていたので、全部好きですね。

加瀬:例えば宮沢さんが演じているのを見ていると、気持ちがしんどくなったときに明るさが生まれてくるんです。そこがとても好きでしたし、多分自分自身も影響を受けていたと思います。

Q:現場で知ったお互いの新たな一面はありますか?

加瀬:僕は勝手にもっと穏やかな人かと……。まだ出してないところがほとんどだと思っています(笑)。

宮沢:本当に映画が好きなんだなあって。自分たちの作っている作品もそうだけど、観た映画の話とか、こんな映画があったらいいなとかいう話とか、よく話していたんです。だから、映画のことを本当にいつも考えてるんだなあって感じましたね。

■恋愛観や人生観が変わる映画

Q:おふたりは、それぞれどのように役を作り上げていったのですか?

宮沢:わたしは、言葉にできない葛藤(かっとう)や喜びが、台本以外のところにあるような気がして、そのことを大事にしたいと思っていました。でも実際に現場でも、せりふがないシーンのほうが、心で会話している気持ちになれたんです。そういう空気感がとても大事に思える現場でしたね。

加瀬:考えていることはたくさんあったんですけど、やっぱり実際一緒にやってみて発見することの方が多かったです。さっきのがけを登る話じゃないですけど、大体シーンの中で見ているところは一緒なのかなと思っていました。あとは、宮沢さんと実際に向き合ってみると分かるっていうか……、そこの木の枝に足かければイケる! みたいなのはありましたね(笑)。

Q:おふたりの愛は、どのように変化していったと思いますか?

宮沢:個条書きにできないところが、映画のすてきなところなんだと思うんです。観終わった後に、観た人の恋愛観や人生観が、とても変化する映画だと思うんですね。わたしは、そこがとても好きなので、言葉にしたくなくて……。インタビューを受けているのに言葉にしたくないって言っちゃ、ダメなんですけど(笑)。まあでも、そういう微妙で、繊細(せんさい)な心の動きみたいなものが描けていたらいいと思いますね。

Q:留吉とトヨの愛のどのようなところがすてきだと思いましたか?

加瀬:あれだけ一緒にいたから、いろんなことがあったんだと思うんです。でも、基本的にいつもどちらかが側にいることが、とてもすてきだなと思いますね。

宮沢:普通に見たら、貧乏っていうか、時代の変化に思いっきり乗っていけない2人かもしれません。普通だったら愚痴を言い合う方が簡単なところを、そういうときこそ相手を思いやれたり、優しく接したりし続けた2人が、わたしたちが演じた瞬間にも現れていたと思うんです。原田(芳雄)さんと中原(ひとみ)さんが演じられた留吉とトヨも、最後のシーンの中で、本当に相手に対する思いやりを持ち続けていた2人だという感じはするんですよね。時代とか、いろんなものの変化の中でも、持ち続ける気持ちを貫いたことって何かやっぱりすごいなあって。あこがれるというか、すてきだなあと思いました。

■幸せとは愛する人と一緒にいること

Q:最後に、この映画を通して幸せとは、どういうことだと感じられましたか?

宮沢:つらさや、暗さを知ったからこそ、感じられる喜びみたいなものって絶対あると思うんですよね。それを2人で乗り越えたり転がったりしながら、ある方向へ2人で歩いて行く……。不幸せを知らなかったら、幸せってないと思うんですよ。人から見たら不幸せでも、あのオリヲン座という映画館の中で、留吉とトヨが小さな幸せを見つけて、何か喜んでいったことが幸せなんじゃないかと思います。

加瀬:最初のポスターを撮影した荒木経惟さんが、昔一緒に仕事したときに、「加瀬、幸せっていうのは、好きな人がそばにいることだ」っておっしゃっていたんです。何かそれがとても自分の中に残っています。毎日いろんな出来事があるけど、それはそれとして、たとえケンカしたとしても、やっぱりそうやってそばにいて、一緒にいることが幸せなんだと思いました。

“あ・うん”の呼吸で、インタビューに答える姿がとても印象深かった。丁寧に言葉を選びながら話す加瀬を、隣で優しそうに見守っている宮沢。静かに笑い合う彼らは、もともと波長が合っているのかもしれないと感じさせるほど、2人がいるとその場が穏やかな雰囲気に包まれるような不思議な空気感を持っていた。映画が人々にもっともっと愛されていたころに、愛を貫いた男女を描いた本作は、これからの日本の映画界を背負って立つ2人の共演作にぴったりな作品だ。

『オリヲン座からの招待状』は11月3日より東映系ほかにて全国公開

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