シネマトゥデイ

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小池栄子
『接吻』
無償の愛や破滅的な愛にあこがれます
『接吻』小池栄子 単独インタビュー

取材・文:内田涼 写真:鈴木徹

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昨年の第8回東京フィルメックスのコンペティション部門に出品され国内外の映画ファンをうならせた映画『接吻』。本作の主人公で、狂気とも受け取れる愛を貫くヒロイン京子を熱演するのは、バラエティー番組はもとより映画、テレビドラマ、舞台と幅広く活躍している小池栄子。普段の明るいイメージを封印し、体当たりで女優魂を見せ付けた彼女に、役作りや撮影現場の様子、そして作品が問いかける愛の形について話を聞いた。

■出演を断ろうと思ったほどの難役

Q:殺人犯を愛してしまうヒロイン。演じる上で、抵抗はありましたか?

確かに最初は、京子という女性に対して抵抗がありました。脚本を読ませていただいて、面白いと思ったんですが、やっぱり、役柄を愛せなければ自分で演じることはできませんから、出演はお断りさせていただいたんです。

Q:改めて、小池さんに京子を演じることを決断させたものは何ですか?

プロデューサーの方や万田監督から「自分たちもこの作品がどうなるかわからない。ゴールは決めずに、一緒に戦う気持ちで頑張りましょう」って言っていただいたんです。それでちょっと違う視点で、改めて京子という女性を見つめてみたんです。すると何だかすごく、京子がかわいらしい女性に見えてきたんです。そう思えるようになったので、自分でも彼女を演じることができると思うようになりました。

Q:何か共感できる部分があったということですか?

何度か脚本を読むうち、京子と自分自身に近い部分があると気付いたんです。京子は坂口に対して「救ってあげたい」という気持ちがあって、決して見返りは求めていないんです。無償の愛というか……そういう破滅的な愛にあこがれる面があるからかもしれません。それと普段はわたし、結構ネクラなんで(笑)、そういう部分も京子に似ていますね。

Q:役作りはどのように?

すでに気持ちの上では京子に近づけていたので、役作りというよりは、声のトーンや演技のテンションみたいなものを監督と話し合いながら、自然に固めていきました。ただ、OLという役柄なので、OLをしている友だちに、日常生活のどんなことに楽しさやむなしさを感じるのか話を聞きました。あえて役作りといえば、そういう部分でしょうか。

■初対面の豊川悦司に緊張!

Q:非常にヘビーな役柄でしたが、ほかのお仕事との折り合いなど、バランスを取るのが大変だったのでは?

そうですね。でもこの作品を撮影している間は、周りの協力をいただいて、ほかの仕事は結構セーブしてもらいました。そのおかげで集中力が途切れることなく、ヘビーな役柄を演じることができたと思います。バラエティー番組のノリとはまた違う雰囲気の中で、お芝居に集中できる貴重な時間でした。

Q:殺人犯、坂口役の豊川悦司さんとの共演はいかがでしたか?

豊川さんとは一緒のシーンがなかなかなかったのですがパワーがすごくて、緊張しましたね。豊川さんはほとんどセリフがないので、自然と現場でもあまりお話する機会がなくて……。でも完成した作品を観ると「あれ、このシーンでこんな表情していたんだ」とビックリすることも多かったし、リハーサルとはまた一味違う演技をされていて、引き付けられました。

Q:坂口の弁護士、長谷川を演じる仲村トオルさんとは以前、舞台で共演されていますね。

トオルさんはわたしがイメージする“熱血な弁護士さん”そのままでしたね。うっとうしいくらい熱血で(笑)。ただ、京子は長谷川に対し「自分よりもつまらない人間」と見下している部分があって、一緒にいても「早くどっか行ってくれないかな」って思っているんです。演者同士もそういう気持ちにシンクロしているんで、お互い「何か一緒にいるのイヤだね」って話していました(笑)。

Q:この作品は独特な緊張感をキープしながら、誰も予想できないエンディングを迎えます。一見、言葉では説明できない京子の行動について、小池さんご自身はどう思いましたか?

あの最後のシーンは撮影する数時間前まで、わたし自身どうしても理解できなくて「一体なぜ?」って思っていたんです。監督からは「観客にもその理由がわからないよう演じてほしい」というお話だったんで、演じるのが特に難しいシーンでしたね。でもトオルさんから「あれは、京子が生きたいという気持ちを表したシーンだと思う」と聞いて、理解するヒントというか、かなり助けられました。本来人間って、先のことはわからずに生きているわけで、京子のあの行動にも、意味や強い気持ちというものがあるんだと思えます。

■体当たり演技で改めて実感したこと

Q:作品が完成したことで、京子という女性をより客観的に見られるようになったのでは?

京子は殺人犯である坂口に対して、素直に「この人のことをもっと知りたい」っていう気持ちを抱いているんです。それってまさに恋愛感情ですよね。京子のセリフに「生まれて初めて一生懸命になれるものが見つかった」という言葉があるんです。確かに坂口の存在を知ってから、彼女はどんどん輝いていく。何かに打ち込んでいる人はとてもすてきだし、わたし自身、日に日に京子のことが好きになりました。もちろん、行き着くゴールはとても暗くて切ないです。殺人者を愛する、というのは間違った愛の形かもしれないけど、京子の一生懸命さには共感できました。

Q:この作品をあえてジャンル分けすると?

ラブストーリーです。いろいろな要素が混じり合った作品ですけどね。わたし自身、京子という女性を演じ、坂口という愛する人と同じ時間を過ごす瞬間はとても幸せでした。実際、ここまで自分とシンクロできる役柄はなかったんで、とても貴重な体験ができて、うれしかったです。わたし、この映画を通して「やっぱり、お芝居がしたい」って実感しているんです。

Q:今回の熱演、そして作品について、周囲の反応はいかがでしたか?

母親は「いや、ちょっとわかんない」って言っていました(笑)。でも、この作品は「これが答えです」っていうハッキリしたものがないんで、たくさんの人に観ていただいて、いろいろな意見が出てくるのを楽しみにしたいです。うちの夫ですか? まだ観ていないですね。いつもだいぶ時間がたってから「観たよ」って言ってくるタイプなんで、いつ観てくるのか……(笑)。

Q:最後にメッセージをお願いします。

殺人犯を愛してしまう、という究極の愛の形が描かれていますが、こういった愛の形もあるんだと思って観ていただきたいです。そして、何よりも京子という女性を愛していただければうれしいと思っています。

テレビでのはつらつとしたイメージが強い一方、ここ数年は、映画や舞台と女優業にも積極的に挑んできた小池にとって、『接吻』は演技者として1つの頂点を極めた記念すべき作品となった。インタビュー中に飛び出した「やっぱり、お芝居がしたい」という言葉にも、彼女の女優業に対する熱く真摯(しんし)な思いを感じ取ることができた。女優としての評価を一気に高めるであろう『接吻』は、その衝撃的な結末以上に、小池の圧倒的な存在感を堪能できる必見作だ。

映画『接吻』は3月8日よりユーロスペースほかにて全国公開

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