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阪本順治監督&宮崎あおい
『闇の子供たち』
心が重くなるかもしれませんが、逃げないで知ってほしい
『闇の子供たち』阪本順治監督&宮崎あおい 単独インタビュー

取材・文:平野敦子 写真:秋山泰彦

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幼児売買春、人身売買などの犠牲にされる罪のない子どもたちの現状にするどく切り込む『闇の子供たち』。ショッキングな内容だが、今世界中で起きている理不尽な社会の現実を知るためにも観るべき作品だ。映画の役割は闇に光を当てることだと語る阪本順治監督と、本作で子どもたちを救おうと奔走するNGOスタッフを演じた宮崎あおいが真実を知ることの大切さを語った。

■走ったり、殴ったりのアクションシーンに大興奮!

Q:宮崎さんはトラックを全力疾走で追いかけるシーンなどもあって、タイでの撮影はかなり大変そうでしたがいかがでしたか?

宮崎:あの撮影はとても楽しかったです(笑)! あまりアクションとはいえないシーンなのですが、そういったことをあまりしたことがなかったので、走ったり、車に飛び乗ったり、キックしたり、殴ったり……。何だか感情と体がすごく爆発しているというか……。それがすごく気持ち良くて、楽しいと言ってはいけないかもしれないのですが、実際に演じていて楽しかったです(笑)。

Q:タイでの撮影中に怖い思いをしたことはなかったのでしょうか?

監督:歩いている分にはいいんですけどね。カメラを持って歩くには、風俗店街とかいろいろと危ないところもありましたね。そこを江口(洋介)君と妻夫木(聡)君が歩いているシーンでは、一応私服刑事の方にそっと後をついて行ってもらったこともありました。

宮崎:わたしは虫が怖かったぐらいかな……。とにかく虫にやられました(笑)。もともとタイの街自体は好きでしたし、楽しかったんですが、とても暑い国なので虫とかネズミとかがたくさんいるんですよ。撮影中もわたしはタイ語のせりふをずっとしゃべっているんですが、その横をネズミとかがぱーっと走り抜けて行くのはちょっと……(苦笑)。ホテルに帰るとゴキブリが「お帰りなさい!」ってしていました(笑)。

■言葉は通じなくても心が通じ合う瞬間

Q:タイの子どもたちと撮影で接していかがでしたか?

監督:見てきたものが根本的に違うんで、もう何かまなざしが違うという感じでした。ちょっと路地裏に入ると子どもが物ごいをしていたり、手足を切られた子どもが物ごいをしているとか、そういうものを見てきていますし、そういう子どもたちが何かしら売春婦という言葉を知っていたりもするんですね。宮崎さんの撮影初日にはエキストラも含めて子どもが30人ぐらいいたかな。彼女はタイ語ができるといってもせりふしか覚えていないはずだから会話は成立しないはずなのに、僕が横目で見ているとすーっと子どもたちの中に入って行っているんですよね。あぁ、やはり彼女が子どもの人権問題に興味があると言っていたのはこういうことなんだ……と思いました。その辺はすごくほっとした覚えがありますね。

宮崎:それを聞いてほっとしました(笑)。言葉は通じないんですが、子どもたちと絵を描いたりとかして一緒に遊んでいましたね。わたしはどこかに行くときには必ず折り紙を持って行きます。あとは日本語を紙に書いていましたね。何を言っているのかはわからないんですが、通じ合えるんですよ。

Q:幼児売春のシーンや、子どもがゴミ袋に入れられて捨てられるシーンなど目に焼き付いて離れないのですが、どのシーンが一番心に残っていらっしゃいますか?

監督:意味もなく情景として撮ったところは一つもないので、全部といえば全部ですね。限られた時間の中で全スタッフ一丸となって、暑さを感じているヒマもなかったですよね。それぞれの俳優さんの狙いどころというのはあるんですが、まぁ監督としてはもうすべてです!

宮崎:わたしは子どもが嫌がるのではなく、大人に対して作った笑顔でほほ笑んでいる顔がすごく印象に残りましたね。もうすでに嫌がることすらしなくなって、流れに身を任せるしかないというか。それってまだ嫌だと言えるうちは自分の意思があるわけじゃないですか。それをこうどんどん削られていってしまって、最終的には何もない空っぽの状態にさせられてしまう。その姿を描いているシーンは忘れられないですね。

■主題歌「現代東京寄譚」に監督号泣

Q:桑田佳祐さんによる主題歌「現代東京寄譚」の感想を聞かせてください。

監督:桑田さんが完成した曲をCDではなく直接渡したいとおっしゃってくださって、音楽スタジオに呼んでいただいて、そこの大きなスピーカーで聴かせてもらったんですね。そのときはいろいろなことが思い浮かんできて、泣きましたね。自分は曲に気持ちを持って行かれるタイプじゃないんですが、2回聴いて2回とも泣いたんですよ。それは本当に初めての経験でした。

宮崎:わたしは映画を観たときに画面に歌詞が出て来るというものをあまり見たことがなかったので、最初は戸惑ったというか……。どう観ればいいんだろうというのが一番にあったんですが、ただ今はあの言葉を付けるということにすごく意味があるんだという風に思っていますね。あの曲が新たに違うパワーを作品に与えてくれているとも思います。

Q:最後にこの映画を通して伝えたいメッセージを聞かせてください。

監督:伝えたいことを言葉で言ってしまうと映画の存在理由がなくなるんですが、僕自身がこの仕事を受けてからいろいろ資料を調べて、自分が知らなかった事実にたじろいだんですね。まずは皆さんにこの映画を通じて今まで知らなかったこと、あるいは知ったかぶりをしていたことを知ってもらいたいですね。この映画を観て、皆さんにたじろいでほしいと思います。多分映画館を出た後、何げなく見ていた日本の風景とか、少年少女たちとか、子どもたちがまた違って見えると思うんで、まずそこから始めてもらいたいなぁ……という思いですね。

宮崎:わたしもこの作品にかかわる前からなんとなくこういうことに関心があって、本を読んではいたのですが、いろいろなことを知っていくと、だんだん知るだけではダメなんだという風に思ってきて……。いろいろな国に行かせてもらったり、いろいろな人たちとの出会ったりする中で、「あぁここではこういうことが起きているんだ。あっちでもこういうことが起きているんだ」ということを少しずつですが知識として知っていて……。知ってしまうと何もしないという選択肢がまずなくなってしまうと思うんですね。そのきっかけがこの映画になってくれればいいと思います。観終わった後はやはり重いテーマだし、心がとても重くなると思うんですが、逃げないで知ってほしいと思いますね。

意外とシャイな阪本監督の隣で、絶えず聖母のような笑顔を浮かべて取材に臨んでくれた宮崎。その問題意識の高さと、20代前半とは思えないほどしっかりと地に足のついた物の考え方に感慨を覚える。坂本監督が指摘するように、彼女にはきっと言葉の次元を超えたところで人と難なく通じ合える才能が生まれつき備わっているに違いない。あまりに過酷な撮影のためか、一時声が出なくなる災難に見舞われながらも、「あの時間があればもっといい画がとれた!」と悔やむ坂本監督が撮り上げた闇の世界。本作を通してそれが現実の一部だということをしっかりと胸に刻み、その上で自分には一体何ができるのかとそれぞれに自問してもらいたい。

『闇の子供たち』は8月2日より全国公開

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