シネマトゥデイ

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広末涼子
『ベティの小さな秘密』
スカートが苦手で運動ばっかりしている男の子みたいな女の子でした
『ベティの小さな秘密』広末涼子 単独インタビュー

取材・文:阿部奈津子 写真:田中紀子

感受性豊かでナイーブな10歳の女の子ベティが、本当に守りたいものに出会い、傷つきながらも強く成長していく姿を描いた映画『ベティの小さな秘密』。監督は『デルフィーヌの場合』のヒットで注目を集めるジャン=ピエール・アメリス、脚本は『アメリ』のギョーム・ローランが手掛けた心温まる感動作だ。ベティの愛らしさに魅せられ、本作の宣伝ナビゲーターを務めることになった広末涼子に、この映画の魅力をたっぷり聞いた。

■不安な子どもの世界を美しい色彩で表現

Q:作品を初めて観たときの感想は?

主人公のベティの繊細(せんさい)さと、子どもから女の子へ、あるいは女の子から女性へと変わっていく、その境目に立っている危うさみたいなものを強く感じましたね。心を打たれる言葉もたくさん出てきて、特に最後のセリフには圧倒させられました。そういう終わり方だったのかと……。子どもの弱さやはかなさだけではなく、子どもの強い意思を見せてくれる作品だったのだと思いました。

Q:子どもが主人公の映画は好きですか?

大好きです! 子どもには、取りつくろったり迷ったりする感じがない絶対的な存在感があります。そしてストレートに感情が表に出てくるので、子どもが主役の作品を観ていると思わず引き込まれちゃうんです。わたしの大好きな映画の一つに、4歳の女の子を主人公にした『ポネット』というフランス映画があるんですが、ポネットとベティは年齢こそ違いますが瞳の強さと深いまなざしに共通点を感じましたね。

Q:本作で印象に残っているシーンは?

すでに冒頭の、ベティとお姉ちゃんが自転車をこいでこっそりと古いお屋敷に忍び込む場面で、スクリーンに引き込まれてしまったんです。子どものときってお化けや暗闇は怖いけれど、見たいっていう好奇心がありますよね。現在の日本の子どもは大人がセッティングしたお化け屋敷や肝試しは体験したことがあるけれど、自分たちの創造力にかき立てられて怖い場所に行くなんてことがほとんどなくなったような気がします。でも、1960年代のフランスの田舎では日常的にあったんだって思うとほほ笑ましくて……。また、イヴォンと旅に出る夜のシーンも印象的でした。最初、ベティは自分の存在に疑問を持っていました。お姉ちゃんは自分を残して寄宿学校に行ってしまうし、両親はけんかが絶えないし、学校ではいじめに遭うし……。でも、イヴォンという男性に出会い、次第に恋心が芽生えていって、誰かに甘えるのではなく、彼を守ってあげる立場になることで、自分を確立していったのだと思いました。

Q:映像がとてもきれいですね。

ええ。自然も建物も美しかったし、小物や部屋の壁紙、キッチンなどの細部にもとても凝っていてかわいらしかったです。そして光もきれいでした。風景の中の光はもちろんのこと、ベティに当たる陽の光が肌の色を生き生きと見せていましたし、闇の中の光も神秘的な感じでとてもすてきでした。また、本作のテーマカラーは赤と緑で、赤はベティの持つ情熱を、緑は不安を表わしているそうです。この赤と緑のコントラストがとても美しかったです。

■精神的にはベティよりも奥手かも

Q:ベティを演じたアルバ・ガイア・クラゲード・ベルージの演技はいかがでしたか?

監督が「芝居というより、彼女自体がベティだと思った。まなざしの強さも、無口なところも……」とおっしゃっていましたが、まさにそのとおり。きっとアルバにはベティの感覚や考え方に似ている部分がすごくあるんでしょうね。彼女の存在感がベティを作っているのだという印象を受けました。

Q:ベティと広末さんの共通点はありますか?

わたしは高知県の田舎で伸び伸びと育ち過ぎたせいか、10歳のときはベティのような繊細(せんさい)な感覚を持った女の子ではなかったですね(笑)。外見も男の子に間違われるようなショートカットで、運動ばかりしているような女の子でした。ベティみたいな赤い洋服なんて着たことがなかったし、フリルはもちろんスカート自体が苦手でした。女の子だけでなく、男の子ともよく遊んでいました。精神的に、ベティが感じたような疑問や不安を持つようになったのは、15、16歳くらいでしょうか。その点はちょっと遅かったのかもしれません。彼女とわたしに共通する部分があるとしたら、一つのことを信じてまっすぐ立ち向かう姿勢かな……。大人になると一つのところに立ち止まってばかりいられなくなるから、そういう感覚を忘れてしまいがちですが、いつまでも大切にしたいと思っています。

Q:子どものころ、ベティのように思い切った冒険をしたというエピソードはありますか?

まったくないんですよ。この映画を観て、中学や高校のころ、家出とかしておけば良かったと思いました(笑)。大人になっていろんな視点から物事をとらえられるようになると、そういう思い切った行動ってできなくなりますよね。ちょっと後悔しています。

■共感できる親子の愛情

Q:ベティ以外の登場人物で、気になる人はいましたか?

ベティのお父さんでしょうか。奥さんとけんかばかり、そして精神病院の院長という仕事柄、背負っているものが大きいんだけれど、それを家庭に持ち込みたくないと思っている。でも彼のオーラが持ち込んでしまっているんです。そこに大人が持つ繊細(せんさい)さを感じました。自宅の階段ホールで夜ベティと出会い、「眠れないの」とつぶやく彼女に、「わたしも眠れないんだ」と言ったお父さんの表情がとても切なかったですね。ベティがお父さんに子守歌を歌ってもらって眠るシーンはすごく好きです。親子の絶対的な愛情を感じましたね。

Q:親子といえば、広末さんの尊敬する人はお母様だそうですね。

母は一番の理解者であると同時に、わたしの目標の女性なんです。ベティの不安の原因は、両親の仲が悪くて、離婚しちゃうのではないかしらということだけではなくて、まだ10歳なのにお母さんにすべてを打ち明けられない葛藤(かっとう)から来ているのだと思います。わたしはそんなことがまったくなくて、小さいころから全部オープンに母に話してきたし、それをすべて受け止めてもらってきました。そんなわたしに比べて、ベティは家庭環境が複雑な分だけ、精神面での成長が早かったのかもしれませんね。

Q:最後に、この『ベティの小さな秘密』はどんな方に観てもらいたいと思いますか?

女性全般ですね。開放感と安心感の両方を兼ね備えている美しい色の使い方は女の人ならきっと好きだと思いますし、日常の中で忘れかけている感覚や、大人になっても持ち続けたい感覚を思い出させてくれる作品です。ぜひ多くの方にご覧になってほしいです!

ベティをイメージしたという赤いワンピース姿で登場した広末。自分の思いに極力近い言葉を探すように、一語一語ゆっくりと丁寧に答え、「フランス映画は小説のよう」と表現したが、彼女自身の言葉もまた小説のようだった。そして、ピュアでまっすぐな瞳を持っている広末に、「まるでベティと姉妹のようですね」と言うと、照れくさそうにはにかんで笑う少女のような笑顔が印象的だった。

『ベティの小さな秘密』は9月20日よりシネセゾン渋谷ほかにて全国公開

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