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小池徹平
『ホームレス中学生』
アホになれ、アホになれってめっちゃ言われました
『ホームレス中学生』小池徹平単独インタビュー

取材・文:渡辺史 写真:秋山泰彦

220万部超の大ベストセラーの映画化ということで期待の高まっていた『ホームレス中学生』がついに完成。原作者であるお笑いコンビ麒麟の田村裕の実体験にならい、「ダンボールも雑草も実際に食べました」と笑顔で語るのは、実年齢より10歳近く下の中学2年生たむちんを熱演した主演の小池徹平。「いくら童顔でもさすがに中学生は……」という不安の声を真っ向から受け止め、主人公を演じ切った彼が、さわやかな笑顔からはうかがい知れない、ストイックな役作りの裏側を語ってくれた。

■笑えるだけじゃない“ホームレス中学生”の過酷さ

Q:麒麟の田村さんが書いた原作『ホームレス中学生』のエピソードを最初に知ったときの率直な感想は?

「おもっしろい話やな、ええネタ持ってはるな」と思いましたね(笑)。最初に聞いたのはバラエティー番組だったので、田村さんもすごく面白く話していて、僕もめちゃくちゃ笑いました。

Q:映画では、特に前半はひもじいシーンの連発ですが、演じていかがでしたか?

田村さん自身は、この話をとても明るく話してらっしゃいましたけど、改めて原作や台本を読んだときに、これを笑いとして話せるのはすごいと実感しました。実際に細かい描写を読むと、かなり過酷で悲惨な状況ですし、しかも田村さんはそれを中学生のときに体験しているわけですよね。だから、軽く見られるような感じには演じたくなかったんですけど、僕自身まったくしたことのない体験ばかりなので、どう表現したらいいのか、かなり考えながら演じていきました。

Q:雨のシャワーや青空トイレなど、普通に生きていたら日常生活ではまずする機会がないことに劇中では挑戦していましたが、意外に良かったことや、楽しかったことはありましたか?

全部楽しかったですよ。ただ演じていて、特に中学生っぽいと思ったのは、雨で喜ぶシーンです。雨をシャワー代わりにするアイデアが子どもらしくていいと思いました。雨って、割と悲しいときに降るイメージがありますけど、そのシーンでは雨が喜びなんです(笑)。そういう無邪気さは「中学生をやってる!」っていう感じがして、すごく楽しかったですね。

■監督からの「アホになれ、アホになれ」コール

Q:完成披露試写の記者会見では、兄役の西野亮廣さん(キングコング)、姉役の池脇千鶴さんとのコントのようなやり取りが印象的でした。そんな3人の空気感はどんな風に作っていったんですか?

意外と早い段階からできていました。西野さんはバラエティー番組で何度か面識がある程度で、池脇さんは以前にあいさつをしたことがあるくらい。お二人とも一緒に芝居するのは初めてだったんですけど、関西のノリと兄弟という役柄の雰囲気が自然と醸し出されてきて、あっという間に仲良くなりました。

Q:そのきっかけは覚えていますか?

もうきっかけどころか、何をしゃべっていたのかも覚えてないくらいです。とにかく撮影中は、朝から夜中まで、ずっ~としゃべってたんで(笑)。普通だったら、「僕、楽屋に帰りますわ」となるんですけど、それも一切なくて。休憩時間のご飯もずっと一緒に食べていました。そういう積み重ねがあって、突っ込み、突っ込まれ、みたいな空気ができていたから、演技でも家族らしさが出せたんだと思います。いい意味ですごくふざけていたというか、本当にいい感じでしたね(笑)。

Q:古厩智之監督と話したことで、一番印象に残っていることはなんですか?

「アホになれ、アホになれ」というのは、めっちゃ言われました(笑)。僕自身、ホームレス生活といっても、正直わからないことだらけだったので、最初はいろいろと考えながら演じてたんです。そしたら、監督に「ちょっと、違うな」と言われて……。「裕はアホだから、もっとアホになってくれ」と。だから僕もその後は「アホやったら、どうするかな?」と考えて、直感的に思ったまま動いたり、あえてブツブツとセリフを言ってみたりしました。今まで、自分がやったことのない芝居のやり方をしてみたんです。僕にとっては、本当にチャレンジでしたね。

■お風呂シーンでの意外に大胆な脱ぎっぷり

Q:お風呂のシーンが意外に大胆でびっくりしたのですが、小池さん自身はどんなことを意識して演じましたか?

お風呂のシーンは、原作でもすごく印象的でした。ただのお湯への感動がつづられているんですけど、僕自身、お湯がすごいと思ったことなんて一度もなかったし、そんなごく当たり前のことをありがたく思える状況まで、追い込まれたこともなかったんです。だから、お湯のすごさ、その感動をどう表現するかは、監督とかなり相談しました。お湯を飲むシーンがあるんですけど、その飲み方にしても、普通に飲むんじゃつまらない。あえて鼻の下まで浸かって、湯船の中で口を開けたまま上がってきて、そこで入ってきたお湯を飲み込む……とか、すごく考えて作っていきました。

Q:ワンシーンだけの出演の方も含めて、とても魅力的な俳優さんが多数登場しますが、特に印象に残っている共演者、またその方との共演エピソードは?

皆さん初めての方が多かったんですが、特にイッセー尾形さんは面白かったです。台本はもちろんあるんですけど、セリフをそのままは言わない、みたいなところがあって(笑)。本当に毎回違うんですよ。あるシーンでも5回テストをして、毎回言うことが違うから、監督が「あのイッセーさん、本番はどれでいきますか?」って逆に聞くくらい(笑)。僕もおかげでいい緊張感が持てて、もうハラハラ、ドキドキ、わくわくみたいな気持ちになったので本当楽しかったです。実際、出来上がった映画でも、その新鮮な良さがきちんと映っていると思いました。

■原作者・田村から言われた最高の褒め言葉

Q:麒麟の田村さんに完成した映画の感想は聞きましたか?

僕の中でも「僕で良かったですか」っていうところが、本当に一番引っかかっていて……。

Q:最初に田村さんが小池さんを指名したそうですね?

そうですね。ただそれはボケ的なところも、ちょっとあったみたいです(笑)。でも、映画を観て「小池君で良かった」と言ってくださったので、本当に安心しました。実は、これまで僕の芝居をあまり見たことがなかったらしくて、「正直、ちょっとなめていた部分があった。ここまで芝居できるとは思ってなかった」と話してくれたんですけど、逆にそれがすごくうれしかったです。改めて僕のことを知ってもらえたということですから。それに僕を指名してくれたことが、僕にとっても運命的な作品との出会いにつながったので、本当に心から感謝しています。

Q:最後に、たむちんを演じた小池さんだから明かせる、ちょっとマニアックな見どころを教えてください。

公園でのホームレス生活では、徐々に日焼けをしていくようにしました。ストーリーと撮影の順序は基本バラバラだったので、最終的にくっきり日焼けのあとが付くよう、事前に色の段階を決めておいて、毎回メークをしてもらったんです。最初の学校のシーンと比べてもらうと、よくわかると思います。かなり細かいんですけど、演技におけるそういう過程が意外と好きなんです(笑)。そんなところもちょっと気にして観てもらえたらうれしいです。

『ロボコン』『奈緒子』など、丁寧な若者の心理描写に定評のある古厩監督は、本作における役作りで「ただ素直に、そこにいること」を大事にしようと小池に語ったという。ちょっぴり強気な女子中学生の誘いに顔をほころばせ、青空の下で子どもたちを追いまわし、家族の温もりを求めて街をさまよう少年たむちん。目の前で一つ一つの質問に、真摯(しんし)かつ熱く答えていく小池。その二人はまったくの別人ながら、映画鑑賞後は小池以外のたむちんをイメージできないのもまた事実。原作者である田村のボケが生んだ会心のキャスティングに、心から拍手を送りたい。

スタイリスト:岡部文彦(ルースター)
ヘアメーク:いしざきくみこ

『ホームレス中学生』は10月25日より全国公開

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