シネマトゥデイ

ヴィゴ・モーテンセン
『アラトリステ』
自分の作品の中でも、特に誇りに思える作品になったよ
『アラトリステ』ヴィゴ・モーテンセン 単独インタビュー

取材・文:島田佳奈 写真:高野広美

世界中でベストセラーとなったアルトゥーロ・ペレス=レベルテによる冒険小説をスペイン映画史上、壮大なスケールで映画化された『アラトリステ』。17世紀スペインを舞台にした本作で、大英帝国軍に撃破された母国のために戦い、最高剣士と言われたディエゴ・アラトリステを演じたヴィゴ・モーテンセン。この作品に込められたスペインの歴史や撮影秘話について語ってもらった。

■スペイン映画の歴史上最大規模の超大作!

Q:スペイン映画史上初の大規模な作品に参加されたご感想はいかがですか?

どうだろう。ほかのスペイン映画の監督たちは『アラトリステ』が、最高のスペイン映画だと賛成してくれるかはわからないけれど、今のところはスペイン映画の歴史上最大規模だね。僕は一緒に働いたスペイン人たちと同じ気持ちで、この作品に参加ができて、みんなに届けることができたことをとても誇りに思っているよ。17世紀のスペインは経済的にも、軍の権力的にも、そしてある意味文化的にも世界一だったんだ。スペインの人たちが、自分たちの歴史について自らの力で映画にし、世界中に伝えることができて本当に良かったと思う。

Q:すべてスペイン語で演じるのはいかがでしたか?

すごく気に入ったよ。僕は幼少時代、11歳までアルゼンチンで育ったからスペイン語はしゃべれたし、歴史についても少し知っていたから、間接的にスペイン人としてのプライドのようなものを感じたよ。でも、同時にプレッシャーも感じたんだ。やはり僕はスペイン人ではないし、正確によりスペイン人のように演じたかったからね。たくさん指導を受けたり、助けられたりしたのですごくうまく演じられたと思う。この作品は自分の作品の中でも特に誇りに思えるものになったよ。そして、今回のプロモーションで日本に来られてうれしく思うよ。日本にもこの原作のファンがたくさんいることを知っているからね。スペインのプレミアにも、たくさんの日本人が会場に駆けつけてくれたんだ。しかもアメリカより先に日本で公開になるから、日本で成功をして、アメリカでも無事に上映されることを願っているよ。

■美しい愛と悲しい愛は紙一重

Q:ディエゴとマリアの恋愛関係は悲しくも、美しいものでした。あなたは、二人の関係をどのように感じましたか?

ディエゴとマリアの関係にしても、ディエゴと彼の養子の息子、そのほか大勢の登場人物にも共通するのが、人のプライドというところだね。プライドを持つのはいいことだよね。個人的、またはグループとして、不可能だと思っていたことを達成できたり、努力することにつながったりする。でも、時にはプライドにより行き過ぎてしまうこともあるよね。何がディエゴとマリアの関係で美しいのかというのは、なぜ二人の関係が悲しいのかということと紙一重だよね。彼らを見ていると、二人は一緒になるべきなのに何で結ばれないの? プライドは忘れて向き合って、大事にし合えばいいのにって思うけども、でもこれって人の人生においてはよくあることだよね。

Q:例えばそれはどんなことですか?

過去を振り返ってみて、よく、あのとき息子にああ言えば良かったとか、父や祖父、祖母が亡くなる前にこう伝えていれば良かったとか、謝れば良かったとか、プライドは置いておいて、僕はあなたのためにここにいるよって伝えれば良かったとかね。だからディエゴとマリアを見ていると素直になってほしいと思うよ。最後にやっとお互い素直になるけど、二人を見ているのはとてもつらいんだ。でもそれが二人の関係をよりドラマチックにして、魅力的にしているんだと思う。

■クレイジーな撮影現場で大はしゃぎ

Q:この映画の撮影の中で、最も大変だったことは何ですか?

何だろうね。撮影中は本当に楽しかったから、そんなに大変だと思ったことがなかったよ。でも野外で戦争シーンを撮影していたときに、気温が40度から42度くらいあったときは日陰もなかったし、長い撮影だったからちょっと大変だったかな。でも、みんなこのストーリーにほれ込んでいたから、誰一人大変だと思わなかったんじゃないかな。

Q:逆に何か面白い出来事はありましたか?

アハハ。何だろうね。これが面白いかはわからないけれど、誤って自分で自分の足を剣で刺してしまったことがあったな。でもそんなにひどいケガではなかったよ。

Q:撮影現場での面白いエピソードはありますか?

具体的に何っていうのは思いつかないんだけれど……いつも楽しく、いい雰囲気の現場で、皆でいつもジョークを言い合っていたよ。この作品にかかわっていた人はみんないつもすごくはしゃいでいたから、いつも夜も遅くまでみんなで騒いでいたんだ。みんなやっとこの作品を世に送りだせるということがうれしくて仕方なかったんだね。すごく疲れているときだって、早く寝ればいいのにいつも遅くまで出掛けては、クレイジーなことをして遊んでいたよ。幸運なことに特に問題も起きずに、次の朝ちゃんと起きて仕事へも行けた。自分でもどうしてちゃんと起きられたのか、不思議だと思うこともあったよ(笑)。

■アクションシーンは残酷なほどリアルに!

Q:迫力満点のアクションシーンでしたが、どのくらいの期間トレーニングを受けたのですか?

剣の指導をしてくれたのはボブ・アンダーソンという、『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズも手掛けた剣士だったんだ。彼はアグスティン・ディアス・ヤネス監督がリアルな戦いのシーンを求めていることを知っていたから、この作品に参加できたことをすごく喜んでくれていたよ。例えば、サムライ映画もそうだと思うけれど、戦いのシーンってすごく素早くて、気が付いたら今何が起こったの? という感じで相手が倒れていたり、すごいケガを負っていたりするでしょ? たいがいの映画って、例えば『三銃士』の映画。戦うシーンが延々と続きながらもエレガントで、あまり迫力があるっていう感じではないよね。監督はそうではなくて、リアルでテンポが速く、残酷な感じを求めていたんだ。みんなで一緒に約1か月間トレーニングをして、その後はさらに個別にトレーニングに励んだよ。本番では、皆彼に「何も考えずにすべてを出してみて」と言われた。「考えながら動くんじゃなくてワイルドでいいんだ」って言われた通りに行動に移してみたら、本当にうまく演じることができたよ。

Q:最後に、日本のファンの皆さんへメッセージをお願いします。

今回の日本滞在期間はわずか1日で、あまり長くいられなくて本当に残念だけど、この作品のために来日することができてすごくうれしい。やっと日本の僕のファン、そして原作のファンのみんなにこの映画を観てもらえることになって本当にうれしく、光栄に思っているよ。

インタビューに応じてくれたヴィゴは、映画の中で見るシリアスな印象とは違い、ダンディーながらも笑顔が優しく、時に無邪気な笑顔で語ってくれる姿がとても印象的だった。着ていたアラトリステT シャツについて突っ込むと、背中にはアラトリステの絵が描いてあると背中を向け、振り返ってポーズまでしてくれた。そんなサービス精神旺盛な人柄が、彼の魅力であり、人気の秘けつなのだろう。

『アラトリステ』は12月13日よりシャンテ シネほかにて全国公開

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