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柳楽優弥
小説「止まない雨」
おれの中ではワガママ、イコールこだわりだったりするんです
「止まない雨」柳楽優弥 単独インタビュー

取材・文:シネマトゥデイ 写真:高野広美

『誰も知らない』で第57回カンヌ国際映画祭最優秀男優賞を日本人初、しかも最年少で受賞した俳優・柳楽優弥。このとき彼は14歳。以降、順調にキャリアを伸ばしていたが、今年の夏いきなり安定剤の過剰摂取で病院に運ばれ、誰もが若くして栄光を手にした彼の挫折を想像した。しかし、そんな世間のうわさをよそに彼の原案で出版された小説「止まない雨」は、主人公が薬物におぼれて人の道を踏み外していく内容。いったい今彼は何を考え、何を目指しているのだろうか。胸の内を語ってくれた。

■仕事辞めたいとか……ギリギリまで考えた

Q:小説「止まない雨」の構想は、いつ考えられたのですか?

1年くらい前に原案を書きました。家でいろいろな映画を観ていて思い付いたんです。麻薬をテーマにした作品とか……アクション映画とか、『きみに読む物語』系の映画とかを観ていたときに、あ、ちょっとおれ書くって原案を書きだしたんです。それを映画にしたかったんですよね。おれ、監督やりたかったんですよ。で、(事務所の)社長に原案を渡したら、まず小説からって言われて。一瞬へこんだんですけど、まあ今思えば小説からスタートした方が良かったと思います。文章は作家の井上凛さんにお任せしました。出来上がって読んだら、これいいじゃん……って結構はまっちゃって。嫌なところは嫌って言ったんですけどね。それにおれが考えた詩を入れてもらったりしました。登場人物は、最初に井上さんと相談し合った結果、いろいろ生まれてきましたね。

Q:桂二の人間としての弱さが、物語の核になっていますね。自分を投影させた部分はありますか?

もちろん似ているところはいろいろありますね。基本的に、やっていることは別でも、キャラクターの考えていることと、おれが実際の生活で考えていることが、かぶっていることは結構多いです。例えば、ドラッグに手を出しちゃうとか……あ、念のため、おれがそういうことをしているわけではないですよ、もちろん。自分との闘いに負けちゃうっていうところの心情についてです。おれも自殺未遂みたいに騒がれたりしましたからね。ある人に、客観的に自分を見ろって言われたんですけど、今までの自分を客観的に見たときに、自分の中で自分との闘いみたいなものがありました。この1年は、結構闘っていた方なんですけど……。仕事に対しての考え方が、人と同じではいたくないと思っているんです。いろいろ限られた枠みたいなものがあるけど、それをぶち壊しておれはおれらしくやっていきたいと思っていたんですが、それにはいろいろなリスクがあったりする……なんてことを考えたりしているうちに、この仕事を辞めたいって……そこまで考えたりしました。だけど辞めるんだったら、世間から徹底的に辞めろって言われるまでやってから辞めようかと思って……。辞めるのは恐くないんですよ。辞めたらトラックの運転手になろうかって思いますし。知り合いのところで雇ってもらおうかとか……。そういうギリギリなところで、もしやるなら自分のやりたいようにやっていこうと思って。人とは違う世界に行きたいと思うのが望みだったりします。

■「わがまま」なことはこだわりでもあると思う

Q:役者を辞めようと思った具体的なきっかけは何かあったのですか?

そうですね……自分と向き合ったときに、自分自身を一番褒めてくれるのも、しかってくれるのも自分自身だと思っているんですけど、現状のおれと、理想のおれとの間にギャップがあったんですよね。このまま2、3年間普通に落ち着いて生活していれば仕事もできたと思うんですけど、そうありたくはないと思っていて。人と違うことをしたいんですよね。

Q:そういう気持ちは昔からあったのですか?

大人になるにつれていろいろなものを見たり情報を得たりして、英雄的な人ができたりするじゃないですか。例えば、何でアメリカはここまでできるのに日本はこれしかできないんだ!……とか、アメリカの価値観と日本の価値観が全然違うことにカルチャーショックを受けたり……。おれ、革命家が好きで、チェ・ゲバラが特に好きなんですよ。革命家にあこがれている部分っていうのもあるかもしれないし、レールに乗っているんじゃなくて、おれはおれで広い世界を見たいというのはあります。限られた枠の中で、人生をうまく歩んでいきたくないと思っているんです。

Q:そうした中で、なぜ役者に戻ってきたのですか?

家族と話し合った結果、世間にめちゃめちゃ辞めろって言われたら辞めようってことになって、それまでは頑張ろうと思ったんですよね。だけど頑張るにしても我慢はしたくないと思って。わがままなのはわかっているんですけど……おれの中ではワガママ、イコールこだわりだったりするんです。そんな日は来ないかもしれないですけど、自分自身で認められるように自分らしくやっていきたいと思って。だから、今までいろいろな俳優さんたちが通ってきた道をおれは通らず、新しい道を作りたいと思っているんです。例えば、人を驚かせたいという気持ちもあります。この小説もドラッグの話を出したら明らかにイメージが悪いじゃないですか。おれはあえてそれをしたかったんです。

■「止まない雨」を映画化するなら監督と主演をやりたい

Q:自殺騒動のときネットに薬物中毒なのではないかなど、いろいろ書かれましたよね。その直後に、薬物におぼれていく主人公を原案にして小説を出すというのはすごく勇気がいったのでは?

タイミングもタイミングなので、もちろん皆はそれを想像するだろうと思ったんですけど、おれの中ではその方がリアリティーのある感じがして良かったんです。実際やってないですよ。ここ重要なんで。人とは別のことをやるには私生活での自分がしっかりしていなきゃいけないと思うので。

Q:家族とよく言い合いはするのですか?

すごく信頼し合っているので、家族とはよく言い合いをしますね。めちゃめちゃ仲が良いんで、普段からよくしゃべりますね。わが家はすごくポジティブなので、騒動についてもいい宣伝になったじゃん、ぐらいですよ(笑)。

Q:将来的には演技で賞を取れる役者になりたいですか? 監督でやっていきたいですか?

両方やりたいですね。もしやるんだったら監督と主演、両方やりたいです。

Q:今、はやっている携帯小説は読んだりしますか?

小説は読まないんですよ。伝記物とか、哲学系とか……。考え方が書いてある本をよく読みます。人の考え方に興味があるんです。

Q:「止まない雨」が映画化されるといいですね。監督は誰がいいですか?

自分がすごく撮ってみたいという気持ちが強くて、今は自分しか思い浮かばないですね。

Q:「止まない雨」への作品評価は気になりますか?

「止まない雨」はいい評価だけじゃなくて、悪い評価もいただいているんですけど、その中に、読み終わった後にすごく重かったというのがあるんです。重いと言われると逆にうれしかったりするんです。軽いよりいいです。

■音楽はあくまでも趣味で続けたい

Q:今後、具体的に決まっている活動予定はありますか?

まだ具体的には決まってないですね。来年からはいろいろ動き出したいと思っています。

Q:音楽活動に興味はありますか?

バンドはやっていますよ。あくまでも遊びなのでプロは目指していません。ジャンルはロックですね。おれ本当はギターをやりたいんですけど、ボーカルなんですよ。ギターは一応弾けるんですけど、満足できるくらいは弾けなくて。だから中途半端なんですけどね。

Q:ファンの方にメッセージをお願いします。

これからすごくワガママな行動ばかり取っていくと思うんですけど、見守っていてくれたらうれしいです。

14歳で世界的な注目を浴びた柳楽だけにいつまでも少年のイメージが強かった。しかし、姿を見せた彼はひげを生やし体も一回り大きく見え、その印象は一言でいうと精悍(せいかん)。少年のころから変わらないのは、その目力。何かを見透かしているようなその鋭い眼光はティーンエイジャーが秘めている怒りや枯渇のようなものを感じさせた。現在は18歳の柳楽が20歳になる前にどうしても描きたかったという「止まない雨」はリアルな青年の叫びと将来への不安が表現されている。映画化され、彼が主演する日が待ち遠しい。

ヘア・メイク:オティエ 高橋幸一

小説「止まない雨」(SDP出版)は1200円(税別)で発売中

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