シネマトゥデイ

シネマトゥデイ
西田敏行
『ラーメンガール』
「あなたのことを世界に知ってもらいたい」と口説かれました
『ラーメンガール』西田敏行 単独インタビュー

取材・文:シネマトゥデイ 写真:高野広美

恋人を追って日本にやって来た、ブリタニー・マーフィ演じるアメリカ人のヒロインが、一杯のラーメンに魅せられ、ラーメンの修行を通して愛や人生の極意を学んでいく姿を描くヒューマン・コメディー。ヒロインが修行するラーメン屋の頑固オヤジを演じたのは、本作がハリウッド初進出作品となった日本の名優・西田敏行。ハリウッド映画に初出演するに至った経緯や感想について話を聞いた。

■いつもとは一味違ったキャラクター

Q:普段コミカルでおだやかな役柄が多いですが、厳しい頑固オヤジを演じられていかがでしたか?

そうなんですよね。みなさんがイメージする、典型的なラーメン屋のオヤジを演じさせていただきました。日本人特有の、喜んでいるのか悲しんでいるのかわからないという無表情さを出したかったんです。その方がアメリカの女の子が、日本人のメンタリティーを知っていく上でいいんじゃないかということで役作りをしていきました。

Q:ラーメン修行の師匠ということで、ブリタニー演じる弟子にかなり厳しく接するシーンがありました。実際そんなシーンの撮影現場はどのような雰囲気だったんですか?

僕の性格上、かなりつらかったですね(笑)。芝居とはいえ、だんだんかわいそうになってきちゃったんですけど、心を鬼にして演じました。撮影じゃないときにお互い「こいつはいいやつだ」というのがわかっていて、信頼関係ができていたので大丈夫でしたね。

Q:役柄上は言葉が通じず意志の疎通がうまくいかない二人でしたが、実際は違ったのですね?

そうですね。意思の疎通は問題なかったです。奈良橋陽子さんという方が通訳になってくれたんですが、彼女とはテレビドラマ「西遊記」で僕が猪八戒を演じたころからの付き合いなんです。ブリタニーと話し始めると、陽子さんが来てくれて、何となしに通訳になってくれたんですよ。

■ハリウッド進出に至る口説き文句は……?

Q:奈良橋さんは映画『ラスト サムライ』のキャスティングマネージャーもされていた方ですが、今回、西田さんをキャスティングされたときは、どのようなお話をされたのでしょうか?

「あなたは日本を代表する素晴らしい俳優なんだから、もっともっとあなたのことを世界に知ってもらいたいの」と言われました。それを聞いたとき、うれしくて「OK!」なんて返事をしたんです(笑)。その口説き文句に即答でしたね。あとロバート・アラン・アッカーマン監督とお話をしたときに、「あなた以外考えられない」と言われました。そのとき「これはオーディションではないんですね?」って確認したんです(笑)。そしたらこの役だけは決まったんだって言われました。

Q:本作はハリウッド映画ですが、スタッフはほぼ日本人だったそうですね?

98パーセントですね。ブリタニーがいない撮影のときは、まるで日本の映画を撮っているみたいでした。ただ、「アクション!」の掛け声を聞いたときは「あ! ハリウッドやぁ~」と思いましたね(笑)。

■得意のアドリブを封印?

Q:ほかに、ハリウッド映画に出演されていることを実感したエピソードはありますか?

アッカーマン監督独特の撮影方法っていうのがあって、とにかくカット割りをしないで引きの映像と寄りの映像を撮るんです。あとは編集で作っていくので、どの映像が使われるかわからないんですよ。そうなるとアドリブどころではないんです。最初のころは「何言ってんだ、このやろう」みたいな捨てゼリフをアドリブで言っていたんですが、そのつど、監督が今何ていったんですか? って質問されてしまって、そのセリフをどこにどう入れ込むか、1時間半くらい話し合いが始まっちゃうんですよ。だから途中から余計なことは言わない方がいいと思い始めました(笑)。

Q:では、お得意のアドリブは封印されていたんですね。

でも皆、僕がアドリブを入れるタイプの俳優だということがだんだんわかってきたらしくて、ブリタニーとかも僕のアドリブに対する切り返しができるようになってきていましたよ。ちゃんと日本の撮影スタイルにも慣れろよ、みたいなね(笑)。

Q:自信のあるアドリブはありますか?

怒鳴っているところはほとんどアドリブですね。日本人しかわからないだろうというせりふは、なるべく多用させてもらいました。なので、英語の字幕は大変だろうと思いますね。

Q:出来上がった作品を観ていかがでしたか?

言葉が通じなくて、お互いなかなか理解し合えないけど、だからこそわかり合えたときの感動はひとしおだと思うんです。そこがうまく表現できていたと感じました。

■ブリタニーと心が通じ合った瞬間

Q:ラストでアビー(ブリタニー)と心が通じ合ったシーンと、目と目で会話をしているシーンでは、思わず涙がこみ上げてきました。ご自身が一番気に入っているシーンはどこですか?

僕もラストシーンでアビーと心が通じ合ったところですね。お互い言葉は通じなくても、目を見れば何を言っているかわかるんです。あのシーンは映画の中だけじゃなく、まさにブリタニーと僕自身にもリンクしていたシーンだったんです。撮影がすべて終了したときに、ブリタニーから熱い抱擁と「わたしはあなたに会っていろいろな意味で刺激をもらって勉強になった。あなたに会えて良かった」という温かいメッセージをもらいました。ブリタニーが涙を流しながら言ってくれたので、僕もぽろっと泣いてしまいましたね。

Q:では最後に、ラーメンと人生の極意を描いた本作にちなんで、西田さんが考える人生の極意を教えてください。

いろんな人間に接して生きていくと思うんですが、その瞬間に「あ、この人はどういう人で何を考えているんだろう?」ということが一目でわかるような人間でありたいと思いますね。変な雰囲気ではなく、もっとシンプルに自分の気持ちを表現できる人間であれば、きっとほかの人も自分を理解してくれて、楽しい人生を送れるんではないかと思います。僕が演じたマエズミもそういう人間だと思います。多分アビーはそれを感じることができたんじゃないかな。人との信頼関係って、そういうことだと思いますね。

日本が世界に誇る名優が、ついに世界デビューを果たした。ラーメン屋を志すヒロインの師匠という大役を務めた西田は、海外のスタッフやキャストと人種や言葉の壁を越えて心で理解し合えたという。すべてを包み込むような満面の笑顔を見せながら語る姿に、本作に対する高い満足度を感じることができた。そんな西田の名演を通して、海外の観客は日本人の心意気を知り、日本の観客は今一度日本人としてのアイデンティティーを再確認することができるだろう。

スタイリスト:小林万利子

『ラーメンガール』は1月17日よりテアトル新宿にて公開

[PR]

この記事を共有する

映画アクセスランキング
  • Loading...
»もっとランキングを見る«
スポンサード リンク
スポンサード リンク