シネマトゥデイ

黒木メイサ
『昴-スバル-』
自分に正直なところは主人公と同じかもしれない
『昴-スバル-』黒木メイサ  単独インタビュー

取材・文:古川祐子 写真:田中紀子

天才バレエダンサーの栄光と孤独に満ちた半生を描き、ビッグコミックスピリッツの連載で女性読者までも巻き込むヒット作となった漫画を実写映画化した『昴-スバル-』。アジア各国でも人気がある原作に惹(ひ)かれて映像化を決めたプロデューサーのウィリアム・コン(ビル・コン)が、主人公のすばる役に抜てきしたのが舞台、テレビ、映画と幅広く活躍する黒木メイサだ。劇中でクラシックバレエやモダンバレエ、コンテンポラリーダンスなどを披露しつつ、天才ゆえの苦悩を抱えながらも成長していく主人公を好演した黒木に話を聞いた。

■プレッシャーの中でひたすらバレエを練習!

Q:ヒロインのキャスティングが難航する中、プロデューサーのビル・コンさんは黒木さんを見て「彼女しかいない」と思ったそうですね。

最初に、ビル・コンさんとリー・チーガイ監督の前で、バレエを踊ってみてほしいと言われたんです。バレエは未経験だったので、1週間レッスンを受けてからお二人の前で踊りました。そうしたら「じゃあ、撮影の準備をしてください」と言われて(笑)。それからはあっという間に話が進んでいきましたね。

Q:主演に決まったときはどんな気持ちでしたか?

喜びよりもプレッシャーを感じました。ダンスは昔からやっていたけど、バレエはたった1週間習ったものを披露しただけだったし。撮影までに3か月の準備期間があると言われたけど、それではとても足りない。この短期間でどうやってバレエを身に付ければいいのかと……不安だらけでしたね。だからその準備期間はもちろん、撮影に入ってからもひたすら練習を続けていました。

Q:原作は読みましたか?

はい。漫画だと主人公のすばるがどれほどの天才なのか、どんなにすごい技術を持っているのかというのは、読者それぞれの想像力に委ねられる部分が大きいですよね? だけど今度は生身の自分が演じて、観る人に天才だと思ってもらわなくてはいけないので、難しかったです。あと、すばるは別に人との付き合いが嫌なわけでもないけど、常に一人でいる雰囲気を持っていると感じたので、演技中はそのことを意識していましたね。

Q:一匹オオカミなすばると、黒木さんご自身に共通点はありますか?

うーん、自分に正直なところは同じかもしれないですね。生き方や境遇はまったく違いますが。

Q:すばるは、舞台に立つ前は恐怖を感じますが、いざ幕が上がると素晴らしいパフォーマンスを見せて、生まれ変わったような感覚を味わいます。黒木さんご自身も舞台で活躍されていますが、すばると同じような感覚を味わったことはありますか?

すばるのように、死に直面するような恐怖は経験したことないですね。舞台は、どんなに毎日長くやっていても緊張するし、お腹が痛くなる(笑)。だけど、本番を迎えるまでに自分たちが積み重ねてきたことへの自信もあるし、ステージに上がっちゃったらこっちのもので(笑)、演出家も止めることはできないんです。本番中はセリフ通りに進められるわけでもないし、ハプニングにも対応しなきゃいけない。わたしの場合、舞台にいるときはすばるのように生まれ変わるというよりは、別世界にいるような感覚がありますね。

■言葉や食事で苦労した上海ロケ

Q:撮影中に苦労したところは?

リー・チーガイ監督と直接言葉でやり取りできないのが残念でしたね。あと、2か月続いた上海ロケの間、やっぱり日本食が恋しくなっちゃって。しかもダンサーの役なので、あんまり脂っこいものは食べることができなくて、日本から食料を送ってもらったりして頑張りました(笑)。

Q:では、楽しかった思い出は?

上海に滞在していたとき、泊っていたホテルの近くに日本語のできるおじさんがいるレストランがありました。撮影が終わるとみんなでそこへ移動してくつろいでいたんです。おじさんに「野菜いため作って!」とか、わがまま言っていました。上海から戻るときは、そのおじさんと別れるのが寂しかったですね(笑)。

■桃井かおりとの共演から学んだこと

Q:桃井かおりさんとの共演はいかがでしたか?

今回、桃井かおりさんと共演できてすごく幸せでした。今までは監督が要求するものをやり切ることがわたしの仕事だと思っていて、実際そうしていたんです。でも今回は外国人スタッフとの仕事だったからなおさらだったけど、役に対する思い、自分の考えを監督にぶつけることも大事だという姿勢を桃井さんから学ばせていただきました。

Q:桃井さんからバレエのアドバイスも受けたそうですね。

桃井さんはずっとバレエをやられていたので、立ち姿とかについてアドバイスを受けました。ありがたかったです。

Q:『HERO』『ラスト、コーション』など多くの名作を製作してきたプロデューサーのビル・コンさんはどんな印象の方ですか?

リー・チーガイ監督もそうなんですが、すごく柔らかい、穏やかな方ですね。だから現場も、ふわふわした雰囲気でした(笑)。

■新しいすばるを観に来てほしい

Q:この映画に参加して感じたことや学んだところは?

何か一つのことをやり続けることは、シンプルで簡単なはずなのに、なかなかできない。人生で、一度決めたことをやり抜くことの難しさを改めて実感させられた作品でした。

Q:では、原作ファンも含めてこれから映画を観る人にメッセージをお願いします。

そうですね、原作とまったく同じではなくて、変えている部分もあります。漫画とはまた違う世界と新しいすばるを観るつもりで、足を運んでいただければと思います。

立ち姿が凛として美しく、意志の強さを感じさせる顔立ち。そして演技力とダンサーの素質を兼ね備えた彼女はまさに本作のヒロイン、すばるにマッチしていた。会う前はクールビューティーのイメージが強かったが、実際は笑顔を絶やさない謙虚な女性といった印象。本人が大変な努力をしてマスターしたというダンスシーンからは、並々ならぬ気迫が伝わってくる。ぜひスクリーンで彼女の体からほとばしる情熱を体感してみてほしい。

ヘアメイク:面下 伸一(dynamic) スタイリスト:大沼 こずえ(kind)

『昴 -スバル-』は全国公開中

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