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ゴリ監督
『南の島のフリムン』
主人公たちは家が貧乏でも、心が金持ちなんです
『南の島のフリムン』ゴリ監督 単独インタビュー

取材・文/古川祐子 写真/吉岡希鼓斗

お笑いコンビ、ガレッジセールのゴリが自身の故郷である沖縄を舞台に撮った初長編監督デビュー作『南の島のフリムン』が公開される。「フリムン」とは沖縄の方言で「愛すべきおバカさん」という意味。豊かな自然と多様な人種が存在する沖縄独特の風景の中、老若男女のフリムンたちが繰り広げる恋愛や友情、スポ根などのさまざまな人間模様を、抜群のお笑いセンスで描くハートフルコメディーだ。主演も務めた本人に、監督をすることになったいきさつから撮影秘話、そして作品に込めた思いなどを語ってもらった。

■今後、監督の前では地面におでこを付ける!?

Q:まずは、監督をすることになったいきさつから教えてください。

僕はもともと俳優志望で、監督になりたいとは思っていなかったんですよ。でも、芸人になってからドラマや映画に出演させてもらううちに、自分が本当に望む役やストーリーをやりたいと感じるようになっていました。そんなある日、15分のショートムービーを撮らないかというお話を頂いて、監督・脚本・主演・編集も全部自分でやってみたら……たまらない苦労と快感があったわけですよ。で、その作品を評価して頂いて、次に30分のショートフィルムを作るチャンスをもらった。それから今度は、この長編作のオファーですよ。断る理由がないですよね。

Q:実際にチャレンジしてみていかがでしたか。

本当につらかった。オレに撮れるのかと不安でしたし。脚本を作る期間は1か月、撮影日数は2週間くらいしかもらえず、しかも撮影期間の半分以上は曇っていたんです(笑)。二重苦、三重苦、四重苦だったんですよ。

Q:大変苦労したようですが、逆に今回の経験で新たに発見したことはありますか?

そうですね、次からどなたかの作品に出させてもらうとき、監督に対しては深々と頭を下げようと思いました。それまでは役者でしたから、クランクインから映画に携わっていましたけど、監督はクランクインまでが長い。脚本作り、キャスティング、事務所とのやり取り、ロケハン、予算、日数、脚本の修正……とか、いっぱい苦労があるわけですよ。クランクインなんて、今考えるとほとんど後半戦です。役者として参加したときは「おはようございまーす!」みたいな感じで僕も気軽に現場に入っていましたけど、これからは、監督の前では地面におでこを付けますから(笑)!

Q:ストーリーのアイデアは、どういうところからきているのでしょう?

もともと沖縄を舞台にした作品を、というオファーだったんです。僕は地元が大好きですからうれしかった。まずはアメリカ軍基地、アメリカ兵、さとうきび畑、養豚場……など、沖縄を象徴するキーワードを挙げて、そこからストーリーを考えました。アメリカ軍がいっぱいいる町にしよう、舞台はコザ(沖縄)市、主人公が屈強なアメリカ兵と乱闘騒ぎになったら面白いよね、戦わせよう! でも戦う術はどうする? 琉球空手の達人に空手を教えてもらう設定にしようか……すると普通の練習の仕方じゃつまらないな、沖縄のきれいな海に潜る? サメと戦う? そういう風に、いろんな連想をして物語を作っていった感じですね。

■沖縄人は一回知り合えば兄弟みたいになる

Q:撮影中の裏話や、印象に残っているエピソードなどがありましたら教えてください。

とにかくアメリカ兵役のボビー・オロゴンが、問題児でしたね。寝坊の常習犯だし、セリフが頭に入らない。その上、セクシーなアメリカ人ダンサーを、カメラセッティング中に口説いているし(笑)! 後は、照屋政雄さんが面白かったですね。

Q:照屋さんは、もう存在しているだけでユーモアがありますね。

そう! この人は別に遅刻はしないんですけど、撮影が始まるといなくなるんですよ(笑)。「政雄さんを探せー!」ってスタッフがあせって総動員で動いたら、セットの後ろで大の字で寝てたとか(笑)。お酒を飲むシーンでも、テークを重ねる毎にどんどんろれつが回らなくなってきて、おかしいと思ったら、水じゃなくて本当に泡盛を飲んでるんですよ! 普通は、水を入れて酔っぱらっているふりをするじゃないですか。でもマネージャーに酒を買わせて、こそっと泡盛を入れているんですよ。それを注意したら「酔っぱらわないと、演技にならないだろう。酔っぱらうシーンなんだから!」って言うんです。「それを酔っぱらっているように演じるのが役者だろう!」って(笑)。まあ、ムードメーカーで本当に助かりましたけどね。

Q:ときどきひょっこり顔を出す、トム・クルーズのそっくりさんもいい味を出してましたね。

彼は、もともとほかの役のオーディションに来ていた人だったんですよ。外国人に見えますけど、彫りが深過ぎる純粋な沖縄人なんです。「トム・クルーズに似ているよね?」って言ったら「はい、よくモノマネでやっています」って。笑い方が似ていたので、スタッフみんな大爆笑でした。最初はトムの登場シーンなんてなかったんですけど、脚本に入れたんです。

Q:役者さんたちの個性とキャラクターがぴったりマッチしている感じがします。

そうですね。もともと、ヒトシ役の諸見里大介(ハム)くんも、あの顔とキャラクターを見て、滑舌が悪いという設定に脚本を書き直しましたから。いや彼は本当に、動物学者が食いつく生き物ですよ(笑)。研究対象です。

Q:確かに、共演者の方々の存在感は強烈でした。ほかにも、夏川りみさん、平良とみさん、DA PUMPのISSAさんやKENさんなど、沖縄出身の有名人が総出演という感じで豪華でしたね。

みんな「ゴリさんが撮るんだったら出るよ」と言って、快く友情出演してくれました。本当にキャスティングに恵まれたと思います。

Q:皆さんとはもともと知り合いで?

まあ、あっちこっちで会いますからね。沖縄の人なんて、「いちゃりばちょーでー(沖縄の言葉で、一度知り合えば皆兄弟という意味)」じゃないですけど、すぐ仲良くなるんです。夏川さんも、これが女優初デビューでね。最初は嫌がって「歌うのはいいけど、出るのはイヤだ」って言うのを口説いたんです。「頼むから、ワンシーン出てくれ。変な役じゃないから」って言ったんですけど、結局サーターアンダギーを使って占いをする、沖縄にも存在しない占い師を演じてもらいました(笑)。

■映画のお色気要素には、ゴリの実体験もあり!?

Q:今後も監督業は挑戦したいですか?

ぜひ、やりたいですね。

Q:今、ゴリさんのほかにも品川ヒロシさんやお笑い芸人の方々が、映画に進出するのがトレンドになっていると思いますが、この状況をどう思いますか?

こういう状況だから、僕にもチャンスが来たのかな。昔はそんな簡単に映画なんて撮らせてもらえなかったじゃないですか。だから、恵まれた状況になったと思いますね。

Q:この映画は、ほんわかした笑いの中に、沖縄の魅力、友情、努力することの大切さ、恋愛など、いろんなテーマが込められていると思うんですが、改めてゴリさん自身がこの作品に込めた思いを教えてください。

まずはやっぱり……この映画の主人公たちの生活を羨ましいと感じてもらいたい。あの食卓で彼らと一緒にご飯食べたい、あの家族の一員だったらいいと思ってくれたら最高です! 彼らは家が貧乏でも、生き方が金持ちなんです。心が金持ち。そういうところを描きたかった。後は、若い男性なら絶対に好きなお色気要素もあるんですが、その中には僕の実体験が含まれています(笑)。

Q:最後になりますが、これから映画を観る方たちにメッセージをお願いします。

この映画は、愛すべきおバカたちが繰り広げる、はちゃめちゃな沖縄コメディーです。特に男子に共感してもらえる部分がいっぱいあると思う。ぜひ観に来て楽しんでください。

インタビュー中は、ユーモアたっぷりのトークで周囲を笑わせ続け、写真撮影では自ら積極的にさまざまなポーズを取るなど、芸人らしく旺盛なサービス精神を発揮してくれたゴリ。この作品は、本人の言葉を借りればまさに彼が産んだ子どもであり、ゴリ同様に明るくポジティブなオーラにあふれている作品だ。地元の人間ならではの視点で描く、ゆったりした空気感が流れる沖縄の景色、ディープな文化、そして気取りがなく懐の温かいウチナーンチュたちを見ていれば、肩の力が抜けて自然と笑顔になってしまうだろう。

『南の島のフリムン』は8月29日より角川シネマ新宿ほかにて全国公開

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