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西田敏行、大竹しのぶ
『火天の城』
もし二人が夫婦だったら、男女の立場が逆転するかもしれない
『火天の城』西田敏行、大竹しのぶ 単独インタビュー

取材・文:福住佐知子 写真:高野広美

第11回松本清張賞を受賞した山本兼一の同名小説をもとに、織田信長の安土城築城の総棟梁を務めた天才宮大工・岡部又右衛門の生きざまを描いた映画『火天の城』。現在の金額に換算して総工費約1,000億円とも言われる巨大事業を成し遂げた宮大工・岡部又右衛門を貫禄たっぷりに演じた西田敏行と、その夫を支え続けた妻を、持ち前の感性で完ぺきに演じ切った大竹しのぶに、撮影現場でのエピソードや二人が結婚していたらどんな夫婦になっていたかなど、話を聞いた。

■戦国時代の映画なのに戦う場面がない

Q:本作は戦国時代の映画なのに戦う場面がなく、逆に新鮮でしたが、脚本を読んでどんな印象を持たれましたか?

西田:最初は、話は面白いけど、もしかしたら地味になってしまうのかな? という思いがありました。でも出来上がった作品を観ると、戦争を描くよりももっとスペクタクルな映像が描き出されていたので、一人の観客として観ても面白い作品だと思いました。

大竹:木の持つ不思議なエネルギーに人間が魅了されるのもわかるし、信長の築城への野望や築城された城が3年で消失してしまうという事実もすごいですし、いろいろなところからいろいろな観方ができる映画だと思います。

Q:西田さんは宮大工の役で、壮大な築城のシーンや図面のことで信長に異論を唱える場面もありましたが、そんな又右衛門をどんな思いで演じられたのでしょうか?

西田:信長は吹き抜けのある城を希望しますが、戦国時代のことですから、城は必ず火を放たれてしまうという概念があって、吹き抜けを作るというのは火の道を作るということで、それは絶対に受け入れられないんですね。又右衛門は自分の命と引き換えにしてもそれだけは頑として受け入れられないという思いを信長に伝えるんです。その思いを信長が受け入れ、最終的に信長は又右衛門を総棟梁として選ぶんですが、そのときに信長が粋なことを言うんですよ。「これで、城に火がついても、ひとさし舞うだけの時間はあるんだな……」って。あれで泣いちゃうんですよね……。あれは、いいセリフだと思いました。

大竹:カッコイイですよね。

■いつもニコニコ笑っていられる強さっていい

Q:大竹さんは仕事に没頭する夫を陰で支えるという典型的な日本の妻・田鶴を演じられましたが、田鶴に共感した点はありますか?

大竹:田鶴がいつも笑っているように父から教わったという場面がありますが、わたしも小さいころから父に「女の子は歳をとってもかわいくなくちゃいけない。結婚してもだんなさんと恋愛できるような、だんなさんにかわいがってもらえるような女の子になりなさい」っていつも言われていたんです。だから、いつもニコニコしている外づらがいい娘になりました(笑)。いつも笑っているには、どんなことも乗り越えられるようにならないと……。うその笑顔では、誰も笑顔だとは思ってくれません。そんな田鶴の強さって、すてきだと思いました。

Q:30年ぶりの共演で、何か新しい発見がありましたか?

西田:僕が大竹さんと出会ったのは大竹さんがまだ少女のころですね。大竹しのぶという人は天才で、その天才が努力し、キャリアを積み上げてきたわけです。しかも、理屈で役をとらえない。独特の感性で、ぴたっと役を密着させるすごさがあるんです。そのすごさは、ほかの人にはないと思います。そんな大女優と共演するんだと、緊張して現場に臨みましたが、柔らかい口調で「お久しぶりです!」ってあいさつしてくれて、あっという間に緊張を解きほぐしてくれたんです(笑)。本当に大きな人になったと思います。今は尊敬の気持ちをもって、大竹しのぶという俳優を見ています。

大竹:褒め過ぎですよ(笑)。まだ十代のころに、ドラマでご一緒したのですが、今でもその作品は大好きです。今回は、30年ぶりの共演でしたが、ほんとに楽しかったです(笑)。

西田:待ち時間に雑談して、愚にもつかないことばかりしゃべっていましたが、大事な時間でしたね。

大竹:そういえば、台本のことなんか、何もしゃべりませんでしたね(笑)。

■もしも二人が夫婦だったら……男女逆転!?

Q:田鶴が亡くなったときに、又右衛門がそばで寄り添い、一晩中妻の髪をなで、歌っているシーンが印象的でした。

西田:あの歌はアカペラで大竹さんがCDに録ってくれて、それを聴かせてもらって覚えたんです。でも、子守唄なので、聴くと、よぉ~く眠れちゃうんですよ(笑)。

大竹:西田さんは、待ち時間にCDを聴きながら「泣けるねぇ~」って言いながら、すぐに「ゴォ~」って爆睡されていましたね(笑)。その姿をわたしがムービーで撮って遊んでいました(笑)。

Q:今回夫婦役を演じられましたが、お二人がもし結婚していたら、どんな夫婦になったと思われますか?

西田:いや~、それはもう1年半で離婚でしょう~(笑)。二人とも俳優なのでお互いのペースを大事にしたいでしょうし、家庭内別居ですかね(笑)。でも、いろんなことを言われそうな気がする。「セリフぐらい覚えなさいよ」とか、「早く仕事現場に行け~」とか……(笑)。

大竹:アハハハ……。そんなぁ~(笑)。でも、俳優同士なので、お互いの気持ちもわかるから、そっとしてあげたいし、自分もそうしてほしい。でも、ご飯も作ってあげたいし、作ってもほしい……。あと、女優って、男みたいなところもあるんですよね。

西田:そうそう、男優は女性度が強い。そういった意味ではお互いの立場が逆転するかもしれないなあ。僕が料理を作って「しのぶちゃん、ご飯できたよ」って呼んだり、お風呂を沸かしてあげたり(笑)。

大竹:それでわたしが「ありがと」って答えるんですよね(笑)。

■日本だけでなく海外にも自信を持って紹介したい

Q:田中光敏監督は本格的な時代劇映画は初挑戦と伺いましたが、現場では監督のどんなこだわりを感じられましたか?

西田:実に淡々と、きちんとしたノウハウを持って、京都のスタッフの方たちと話し合いながら自分の撮りたい、作りたい映像を、筋を通して撮っていらっしゃいましたね。

Q:最後に、本作は海外の映画祭への参加も視野に入れていると伺いましたが、意気込みを聞かせていただけますか?

大竹: 海外の方たちにとって、城造りは神秘そのものに見えると思います。

西田:海外の方が観ても、納得していただける仕上がりになっていると思います。自信を持って、いろんな国の方に観ていただいて、評価を聞いてみたいですね。

30年ぶりの共演だというが、さすが日本を代表する名優二人は息もピッタリ。西田の明るく楽しい話に魅了され、大竹のおっとりほんわかしたキャラクターに癒されたインタビューだった。スタッフ、キャストが一丸となって壮大なスケールの城を完成させた本作は、日本だけではなく、海外の観客にも日本の伝統文化や心意気を伝えられる感動的な作品となった。城造りのダイナミズムを壮大なスケールでとらえた映像にも注目してほしい。

『火天の城』は全国公開中

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