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小栗旬
『TAJOMARU』
満足した芝居ができてしまったら、役者はやめてしまえばいい
『TAJOMARU』小栗旬 単独インタビュー

取材・文:シネマトゥデイ 写真:吉岡希鼓斗

鬼才・中野裕之監督が、芥川龍之介の「藪の中」に登場する盗賊・多襄丸を主人公に、過酷な人生をたくましく生きる姿を描いた時代劇『TAJOMARU』。名家の次男坊として生まれ、華やかな暮らしを送りながらも、信じていた兄弟、恋人、家臣に裏切られ、盗賊多襄丸として生きる道を選んだ男・直光を演じるのは、今日本の映画界をリードしている俳優・小栗旬。撮影中、記憶をなくしてしまうほど演技に集中したという彼が、本作の撮影について語った。

■新しいタイプの時代劇に挑戦!

Q:時代劇とはいえ、現代にも通じるストーリーになっていましたね。

言葉遣いなどに関しては、どちらかというと現代に近いと思いました。確かにまったく新しいタイプの時代劇だとは思いましたが、どういうことをやろうとしているのかっていうのは把握していたので、あまり違和感はありませんでした。

Q:キャラクターに入り込む瞬間をどのように作るんでしょう? 今回は、衣装がとても印象的でしたが、衣装でスイッチを入れ替えることはあるのでしょうか?

この作品うんぬんのことではなく、そのキャラクターの衣装を着るとテンションが上がりますね。

Q:映画全体の撮影を通して、満足感はありましたか?

自分の考えとしては、満足した芝居ができてしまったら役者はやめてしまえばいいと思っているんです。できないから面白いんじゃないかと思っています。

■記憶を失うほど大変だったシーンが……!?

Q:演じながら記憶をなくしてしまった瞬間があったと伺ったんですが、それはどんなシーンの撮影のときだったのでしょうか?

そのシーンは、全部カットされちゃったんですけど、沼に阿古を助けに行って、ぼろぼろになっている阿古を見つけ、「一緒に生きよう」って言うシーンです。その後、阿古にはじき飛ばされて、それでも彼女のことを追っかけて、沼の中に入って行ったんです。底なし沼の中に体が沈んでいく阿古を助けに行って、蘇生させるというシーンでした。

Q:そのときに記憶をなくしてしまったんですか?

自分でもそんなこと初めてだったんで、そこまで没頭できる瞬間があったんだっていう、すごい喜びを感じました。「よーい、スタート」って言われて、走って阿古を追いかけて行ったのは覚えてるんですけど、次に気が付いたらもうお風呂に入っていたんです。氷点下の中で撮影していたので、すぐそばにお風呂を用意してあったんです。芝居をした後に衣装のままで入ったら、涙が止まらなくなっちゃって。「あれ? もう終わっている」みたいな感じでしたね。

Q:そのシーンがカットされてしまったことがわかったときは、ショックじゃなかったですか?

編集でそういうことが起こるのはしょうがないことですからね。まあ最初にカットされてしまったことがわかったときは「うっそー」と思いました。あんな大変だったのに……って(笑)。

■松方弘樹からの貴重なアドバイス

Q:特に印象に残っているシーンはありますか?

印象に残っているシーンはいっぱいありますね。毎日毎日大変だったし。でも、そういうエピソードでいえば、やっぱり松方弘樹さんと立ち回りができたのが、すごく勉強になりました。松方さんが僕らくらいのころは、まさに時代劇全盛期。毎日刀を振り続けていたそうで、そんな人にかなうわけがないですよね。でもうまい人が相手だと、コッチもうまく見せてもらえるんです。

Q:松方さんからもらったアドバイスで、一番ためになったことは何でしたか?

とても多くのことをアドバイスしてもらいました。細かなしぐさについても教えてもらいました。ここは力を抜いてもいいとか、ここだけ決めればかっこ良く見えるとか、そういう発見があったのはすごく良かったですね。

Q:松方さんといえば、当時の俳優さんでもプレイボーイといわれていた方ですが、役者の遊びに関するアドバイスはありましたか?

いろいろ話は聞きましたよ。でも時代が違いますからね。僕がそんなことしたら、すぐ写真週刊誌に撮られちゃうでしょうね(笑)。

■立場と目線を変えれば物事は変わる

Q:多襄丸は、本当に信頼していたたくさんの人に裏切られてしまいましたが、最も悲惨だったのが、自分の信頼していた家臣である桜丸の裏切りでした。

桜丸もかわいそうなやつなんです。今回はその直光って人の目線で物語が描かれましたけど、桜丸には桜丸なりの理由がいろいろあると思うんです。それに結果的に、もしかしたらその直光が中途半端にいろいろな人へ優しさを向けていたせいで、ああなってしまったと考えることもできる。立場と目線を変えれば、物事は全然違うものになるというのが、この物語の根本に流れていると思いますね。

Q:桜丸を演じる田中圭さんとのアクションシーンは、すごい気迫でしたね。

あのシーンを撮影していた2日間は、圭を本気で殺してやろうと思って演じていたんです。桜丸は、映画『ダークナイト』のジョーカーのポジション。殺気を引き出したくて、現場では「お前にむかついている」って態度を取り続けていましたね(笑)。

Q:小栗さんご自身も、信頼していた大切な人に裏切られた経験はありますか? またそのときの失望感はどのように解消されるんですか?

たぶんあったと思います。でも、僕自身も同じことをしているかもしれないって思うんですよね。あと、寝ると忘れちゃうんです(笑)。

Q:最後になりますが、この作品は、現代の若者にも共感できる部分があると思いますか?

共感できるところはいっぱいありますよね。共感できるというか、考えてみるってことだと思います。僕らは劇中の登場人物のような状況で生きているわけでもないし、そんな生活もしたことないから、本当の意味で共感はできないとは思います。でも、こんな時代に生まれたら、きっとこうだったんだろうとか、きっとこういう思いがあったんだろうとか、そういうことを考えてほしいですね。

言葉を丁寧に選びながらインタビューに答える小栗。役柄は引きずらないようにしていると話す小栗だが、小栗の中にはいまだに多襄丸、そして直光の分身が残っているように見えた。そんな彼が役者としてのカタルシスを感じたという本作での熱演をぜひ、劇場で観てもらいたい。

『TAJOMARU』は丸の内ルーブルほかにて全国公開中

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