シネマトゥデイ

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藤原竜也
『カイジ 人生逆転ゲーム』
強い自分自身を持っていれば、負け組ではない
『カイジ 人生逆転ゲーム』藤原竜也 単独インタビュー

取材・文:金子裕子 写真:吉岡希鼓斗

「ヤングマガジン」で連載スタート以来、累計1,300万部を売り上げた「カイジ」。その福本伸行原作のベストセラー・コミックを、『ごくせん THE MOVIE』の佐藤東弥監督がスリリングなエンターテインメントに映像化した映画『カイジ 人生逆転ゲーム』。借金地獄からはい上がろうと、命を懸けたゲームに挑む主人公カイジを演じるのは、舞台でも高い評価を受ける若手演技派の藤原竜也。し烈なゲームに挑む男の恐怖を体現するために、過激なダイエットにも挑戦した彼が、役づくりや撮影エピソードについて語った。

■監督の細かい演出が効果的だった

Q:カイジは自堕落なフリーターですが、最後の最後では人を見捨てず裏切らない。そのグータラと男気の二面性を演じるさじ加減は?

監督と時間をかけて話し合いました。ワンカット、ワンカット、細かく指示を出していただきながら演じたんです。このシーンはハイテンションで、ここは間を入れて声のトーンを落として、ここで声を裏返してセリフを言ってとか……。細かいダメ出しもたくさん出されながら撮っていきました。もちろん、それがやりづらいと思うときもあったのですが、大半はやりやすかったというか、効果的でしたね。例えば、ギャンブルに負けて地下帝国に入れられたカイジが、自分よりも自堕落で究極の底辺で生きている仲間たちに「このままじゃダメだ!」と奮い立たせるシーンの演技は、監督のアドバイスが特に生きていると感じました。

Q:手や目のアップをはじめ、素材をたくさん撮る監督の手法にとまどいは?

最初は、このカットはどこにつながるんだろう? と悩んだり、わからなくなったりした瞬間もありました。でも、監督が「どこを何のために撮っているのかわからないだろうけど、必ず面白いものになる確信があるから、信じてついてきてほしい」と言ってくださったので、現場ではとにかく信じてついていきました。

Q:カイジの心を表すナレーションが多用されていますが、演じたときと同じテンションで録音するのは難しいのでは?

ほとんどのナレーションが、撮影シーンのすぐ後に別室で録音してたんです。だから、気持ちがつながったままで、ことさらテンションを作り直すこともなかったです。とてもやりやすい方法で、助かりました。

■共演者と一緒に減量競争実施!?

Q:役づくりのために減量をしたそうですが?

カイジは豊かな生活をしているわけでもないし、友だちの借金の保証人になったために、地下帝国で過酷な労働を強いられる役なので、日常から摂生していこうと思いました。撮影の前から始めて、撮影中も食事制限をして、結局2か月で10キロぐらい減量しました。最後は、マネージャーとサウナに行って体重計に乗ったら54キロちょっとになっていて、ヤバイと思ってやめました(笑)。

Q:具体的にはどんなメニューだったのですか?

共演者の香川(照之)さんも松山ケンイチ君もダイエットに参加して、競争みたいになって。みんな、まず朝ご飯は食べない、お昼は食べる人でも納豆だけとか、夜はもちろん食べないとか。現場でカレーライスが出ても、ルーだけしか食べないし。休みの日はスーパーで赤身の刺し身を買ってきて、5切れぐらい食べてという感じですね。「カイジ」という作品がみんなをそうさせたんだと思います。そう、空腹のまま極限状態で演技をすると、それがスクリーンにいい具合に反映していました。

Q:大好きなお酒も飲まなかったそうですが?

カイジが地下帝国に入れられて、ものすごく久しぶりにビールを飲むシーンがあるんです。そのリアリティーを出すために撮影の始まる1か月前くらいから禁酒をして、撮影中もずっと我慢していました。そのシーンを撮影するときに、飲んだビールのうまいこと! 一気に3缶くらい飲んじゃいました。ノンアルコール(ビール)だったんですけどね。

■過酷な撮影で気絶寸前に!

Q:巨大な悪徳金融会社帝愛グループのナンバー2である利根川を演じる香川さんとは、カードゲームで迫真の対決をしますが?

あのシーンだけで10日間ぐらい撮影しているんですよ。朝から深夜まで、一日中にらみ合いながら。香川さんなんて、「もう、カイジに負けていいよ」って音を上げちゃって(笑)。本当に疲れました。

Q:映画『デスノート』シリーズに続いて共演の松山さんとも、鉄骨渡りのシーンで苦労を分かち合ったとか?

いちばんキツかったですよ。地上200メートルの位置に渡された平均台くらいの幅の鉄骨を渡る設定で。実際には3メートルくらいの橋の下にマットが敷いてあって、大雨になぶられてそこを渡るんですが、結構難しくて。それに何より、地上200メートルを渡るという恐怖を想像して演技をしてたんですけど、想像し過ぎて怖さのあまり気絶しそうになってしまいました。絶叫し過ぎて声も枯れてしまったし……。あのシーンも松ケンと一緒だったから乗り越えられたと思います。松ケンみたいに、同世代の俳優でここまで腹を割って話せる人って、なかなかいませんから、撮影中はいろんなことを話しましたよ。お互いの演技について、自分の演技について、男としての生き方についてとか。

Q:帝愛グループの傘下である悪徳金融会社の女社長・遠藤役の天海祐希さんとの共演は?

遠藤は原作では男なんですが、映画では女性の設定になっているんです。スクリーンで天海祐希という女優の存在感が、すごく光っていました。大半が男臭い、地下でどろどろしているようなシーンで閉塞感があったんですが、天海さんがいることでいい意味で世界が広がりました。それに何より、かっこ良かったですねぇ。個人的にも、すっごく好きな女性です。サバサバしていて、それでいて女性的なこまやかさもある。すてきな存在です。

■メッセージは「もうちょっとガンバレ!」

Q:さまざまな苦労を経て完成した作品を観たときの、最初の感想は?

まずは、面白いものになっていて、感動しました。それから、これは決してギャンブル映画ではなく、自分自身がもっとしっかりしなくちゃいけないと、背中を押してくれるような作品だと感じました。観てくれた方に、次のステップに行くきっかけを与えられると思いましたね。

Q:カイジは負け組のエースということですが、負け組・勝ち組とは何でしょう?

正直言って、わかりません。僕らの仕事だって、仕事を失うのも、つかむのも一瞬。ときに負け組だし、ときに勝ち組。でも、自分の気持ちとしては、本当の負け組はダメでしょという思いも確かにあるんです。「愛と幻想のファシズム」(村上龍著)の鈴原冬二のような、弱肉強食の世界では強者が勝つ。それに食われてしまう人たちは、現代社会では生きられないという思いも、あることはあるんです。でも、そういうことで決められないものがあるということも、わかってるんですよね。

Q:あなた自身は勝ち組、負け組?

この映画を撮影しているときに、その疑問も浮かびましたね。でも、やっぱりわからない。いろいろなことを考えさせられましたが。何をもって勝ちになるのか、負けになるのか、基準がつかめない。ただ言えるのは、芯(しん)のところでは強い自分自身を持っているつもりなので、一概に負け組とも言えないなぁと。

Q:それは本作のメッセージでもあるのでは?

利根川のセリフにある「世間は、お前たちの母親でも何でもない。そんなに甘やかしてくれないよ」というのは真実。だからこそ、この作品自体が僕みたいに悩んでいる人へ、「もうちょっとガンバレ!」ってメッセージを送っている気がしますね。

さすが、蜷川幸雄の舞台でしごかれまくった27歳。演技に対しても自分自身に対しても、常にいろいろなことを深く考えて歩んできたのだろう。どんな質問の答えも明快に返ってくるのが気持ち良い。が、その藤原をして「いろいろな考えに悩まされ、結論は出ていない」という本作は、し烈な人生ゲームのスリルだけではなく、生きる上での究極の価値観を鋭く問いかけてくる一作。芸達者たちが、文字通り火花を散らす熱い競演も、大きな見どころだ。

映画『カイジ 人生逆転ゲーム』は10月10日より全国東宝系にて公開

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